新型コロナウイルス、オンライン説明会、オンライン面接、就活ルール廃止、
通年採用、インターンシップ、早期選考会、AI採用、
逆求人、リファラル採用、お祈りメール、内定取り消しなど、
さまざまなキーワードが飛び交った2021年春入社に向けた就職・採用戦線。
厳選なる審査を通過したユニークな入選作品を発表します。
※川柳・短歌、雅号は、原則、応募者の表記のまま掲載していますが、固有名詞表記など一部につきましては事務局にて加筆をしております。
※作品の著作権は、すべてHR総研(ProFuture株式会社)に帰属しています。無断での転載、使用はご遠慮ください。
転載のご連絡は、HR総研(souken@hrpro.co.jp)まで。
今年、新型コロナの影響を受けて一気に利用が広がったのが「WEB説明会」と「WEB面接」。学生からすれば、「WEB説明会」は基本的には受け身であり、多くの説明会では学生側のカメラはOFFにされ、企業側から見られることはない。ある意味、気楽なものだ。しかし、「WEB面接」はそういうわけにはいかない。応募先企業に赴いての従来の対面式の面接と比べれば、緊張感はやや欠けるかもしれない。ただし、「WEB面接」には別の緊張感が存在する。それが、通信回線トラブルとPCなどの機器トラブルによって引き起こされる面接の中断に対する不安だ。「人生がかかる就活面接で回線が止まってしまうと本当にあせってシャツがびしょびしょになるくらい冷や汗が止まりませんでした。」と作者。WEB面接中に、実際に回線が止まった時の焦りがこちらにもしっかりと伝わってくる優れた作品である。作者と同じ経験をし、共感する学生は少なくないだろう。「止まる」と「止まらぬ」の対比も素晴らしく、作者の焦りをよりリアルに生々しく表現できている。
WEB面接を大別すると、決められた時間に画面の向こうにいる人事担当者とリアルタイムに面接を行うタイプと、いつでも好きな時間に用意された質問に答える様子を録画して登録するタイプの2つがある。さらに後者の中には、AIが学生の回答内容を基に、学生のタイプやその企業とのマッチ度を判定するタイプまである。AIは判定に必要な情報が得られるまで、追加の質問を繰り返す。回答内容によっては、15分で面接が終わることもあれば、60分を費やすこともある。生身の人事担当者が相手の面接であれば、表情やジェスチャー、声のトーンなどの非言語情報もあるし、面接官が前のめりになって質問してくるのであれば、自分に興味を持ってくれているという手ごたえもある。だが、AIは違う。何度話しても無機質な声で繰り返される「もう少し詳しくお話しください」との質問にうんざりするとともに、「お前に何がわかるんだ」といらだってしまう学生の気持ちを率直に表現した上手い作品である。「AI」と「愛」をかけている点も見事である。
採用川柳でも、就活川柳でも自宅でのWEB面接を謡った句では、親(多くは母親)は悪者として登場するケースがほとんどである。面接中に部屋へ入ってくる、横に同席して回答内容を指示する、面接中に大きな音で掃除機をかけ始めるなどなど。今回の選考では惜しくも入賞にはならなかったが、WEB面接中の画面に風呂上がりの父親の姿が映りこんだという作品もあった。 そんな中、この作品の親は全く違う。「WEB面接を受ける私に気を遣い、『あまり聞かれたくないでしょ?』と、そっと散歩に行ってくれる母に感謝です。」と作者。子どもの面接が何時からあるのかをちゃんと把握し、そして面接が始まる前に席を外してくれる母親の背中に思わず感謝する息子の心情を見事に表現した作品である。今回の応募作品の中で、最もジーンときた作品だ。本当にうらやましい親子関係である。「オンライン」や「WEB面接」ではなく、「自宅面接」の言葉の選択も秀逸である。
自宅で受けるウェブ面接の最中に、ペットの犬が飼い主の一大事であることにも関わらず、ワンワン元気に鳴く様子と、ペットに罪は無いと分かりつついら立ちを覚える作者の思いが良く伝わるとともに、上手く韻を踏んでリズミカルな作品となっている。面接中の本人は焦るだろうが、ペットの犬は一生懸命に作者を応援していたのかもしれない。
今年の就活生はオンライン面接で面接選考を受ける機会が多く、回数を経るごとにオンライン面接のコツを掴めてきたのだろう。慣れてくると、難しい質問をされた際に、画面が固まってしまったフリをして答えを考える時間を稼ぐ、というずる賢さと就活生の必死さを感じられる何とも面白い作品である。 本当にネット回線が固まり焦ったことがあるからこそ、その経験を上手く応用したということだろう。経験をバネに今後も頑張ってほしい。
続いてもオンライン面接ネタである。 家族と一緒に住んでいる就活生の場合、自分だけの部屋がなかなか無く、家中でオンライン面接を受けられる空間を探し回ることになるだろう。その結果、背景がシンプルで誰にも邪魔される心配のないトイレに行き着いたというユーモラスながら切実な思いが伝わってくる力作となっている。自宅でオンライン面接を受けるためには家族の協力が不可欠と言えそうだ。
「オンライン面接あるある」で、上半身だけスーツで下は部屋着という人は多いのではないだろうか。この作者も下はパジャマでオンライン面接を受けていたら、運悪く下半身の服装チェックを受けてしまい選考を落とされた、という状況と残念な気持ちを上手く端的に表現できている作品である。 大事な面接だからこそリラックスして臨みたいという作者の気持ちも十分に分かるが、スーツを上下でピシッと決めて面接に臨むのも気持ちが引き締まるものだ。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた就職活動で、就活生たちは企業ごとの底力や対応力の違いを見ることができたようだ。迅速な対応によりオンライン面接などへと変更し、滞りなく採用活動を続けられた企業は学生からも厚い信頼を得られ、上手く対応できなかった企業は厳しい評価を受けただろうということが良く伝わる作品である。 採用活動では、企業も学生から評価されているということを再認識させられる。
こちらもオンライン面接で見えている部分と見えていない部分のギャップを詠んだ作品。上半身はスーツを着こなし、面接官に好感を持たれる態度で面接に臨んでいながら、下は部屋着でリラックスしている様子を象徴的にリズミカルに表したユーモラスな作品である。このような状況は就活生だけでなく面接官も同じなのではないだろうか。これもオンライン面接のメリットの一つと寛容に受け止めてもいいのかもしれない。
こちらはオンライン面接のデメリットとも言える部分を上手く詠んだ作品。 コロナ禍におけるソーシャルディスタンスを保つためにもオンライン面接は必要な面接方法なのだが、どうしても対面面接より相手の心の内を読み取りにくさが感じられる。面接は「初めまして」の相手と行うものであり、短い時間で心の距離を縮めるのは至難の業だろう。そんなオンライン面接へのもどかしさを、コロナ禍のキーワードを絡めて上手く詠んだ作品である。
3月から新型コロナの影響が大きくなり、4月には緊急事態宣言が出される中での厳しい就職活動。企業側も初めて経験する緊急事態で、上手く対応できなかった企業では採用活動自体を延期せざるを得ない状況となった。その皺寄せは就活中の学生に来て、志望していた企業から軒並み延期の知らせが届き、予定していた面接日程などが全て白紙になってしまった作者が、途方に暮れる心情を分かりやすく端的に表した上手い作品である。
「自信を持って面接に臨むために!」と、決して安価ではないスーツやパンプスを新調した学生は多いのではないだろうか。ところが、新型コロナウイルスの影響によりオンライン化が主流となり、せっかく新調したスーツやパンプスで決めて臨む場が無くなってしまった。そんな作者のやるせない気持ちを限られた言葉で明確に上手く表している作品である。晴れて就職した暁には、そのスーツやパンプスでビシッと決めて出社できることを心から祈る。
ここ数年の人手不足や東京五輪による好景気の影響で、就活を始めた昨年までは「売り手市場」が続いた就職戦線。しかし、年が明け、突然現れた新型コロナウイルスの影響により、東京五輪は延期され、日本経済は冷え込むばかりで採用活動を中止する企業も続出している。「売り手市場から買い手市場へ」と叫ばれる現状を皮肉たっぷりに詠った作品である。大きく揺れ動く社会動向に翻弄され不安を抱く就活生の姿を想像させられる作品となっている。
政府から全国民に配られたものの必要とされなかった「布マスク(アベノマスク)」と、作者は喉から手が出るほど欲しい「内々定」を比較した作品。就職活動中の学生にとっては、今最も欲しいものと言えば「内々定」なのだろう。政府には、企業が採用活動を縮小、延期、中止などしなくて済み、学生が就職活動で必要以上に苦戦することが無いような効果的な施策を打ち出してほしいと、強く願いたくなる作品である。
主 催 | HR総研(ProFuture株式会社)、「就活会議」(就活会議株式会社) |
募集期間 | 2020年7月1日〜12日 |
応募資格 | 2021年卒の「就活会議」会員 |
応 募 数 | 706作品 |
入 選 数 | 14作品 |
HR総研の2021年卒の就活生を対象とした調査で、WEB面接を経験した学生にそのメリットを聞いてみたところ、わざわざ交通機関を使って会場に行く手間・時間・交通費を節約できること、上半身は面接ルックながら下半身はパジャマやジャージなどの部屋着でリラックスして面接に臨めること、そして、志望動機やその会社の情報のカンペをPCに貼り付けて確認しながら面接を受けられることの3つを挙げる学生が多い。しかし、中にはもっとすごいカンペも存在するようだ。「採用面接時にささやき女将のように近くで指示している親御さんがチラッと映ってしまっていました。」と作者。人事担当者の驚いた顔が目に浮かぶ秀作である。もっとも、学生が親にサポートを依頼したとは考えづらく、心配のあまり親が勝手にやっているのであろう。小声で指示すれば、画面の向こうの面接官には聞こえないだろうと思ってのことだろうが、WEB面接では意外と周りの音も聞こえるものである。
かつてはSNSといえばFacebookの独り勝ち状態という時代があり、Facebookで採用ページを作成することがブームだったこともあった。ただ、今や若者世代におけるFacebookにかつての勢いは無く、Twitter、Instagram、TikTokなどさまざまなSNSが並行して利用されている。就職ナビだけでなく、SNSを活用した採用活動が主流になりつつある今、世の中の動きに取り残されまいと、これらのSNSに不慣れな採用担当者が何とか応募者を集めようと、社内の若手社員を巻き込みながら、必死に悪戦苦闘している様子を上手く表現した作品である。それぞれのSNSの特徴を「つぶやいて」「撮って」「踊って」「いいねして」と規定の文字数の中で、簡潔に表現することに成功している。この作者が作成・活用しているSNSをぜひ見てみたいものである。特にTikTokを。
WEB面接で実際にあったエピソードを簡潔に笑える句として詠んだ作品。「学生が自宅の自室でウェブ面接に参加中、カメラに映る学生の背後のドアが開き、学生の母親が『あんた、なに独り言しゃべってるの? 頭おかしいのか?』と言いながらカメラにインしてきた。学生は必死に『面接中!出てって!!』と怒っていた。」と作者。自宅生にとって、WEB面接を成功させる秘訣は、いかに母親にWEB面接を理解してもらい、協力までいかなくともいいから、邪魔だけはしないようにしてもらうことなのかもしれない。面接官である人事担当者にとっては微笑ましいエピソードも、面接を受けている最中の学生にとっては目の前が真っ暗になるほどの事件であろう。ところで、この学生の面接結果はどうだったのかが気になる。この学生の今後長きに渡る母子関係にも十分にご配慮いただき、是非とも寛大な評価をしていただきたい。
WEB面接中の家族の乱入・映り込みを詠んだ句はほかにもいくつかあったが、こちらの句で詠まれているケースもなかなか強烈なエピソードだ。WEB面接の画面に、学生の隣にスーツ姿の母親が座っていたとのこと。画面に映り込まないように小声でサポートするというレベルではなく、堂々と画面に登場し、「自分の家だから」と当然のように話し、子供が困ると代わりに自ら回答までしてしまう母親に、ただただ呆気にとられる作者の様子が目に浮かぶ面白い作品である。
WEB面接は自室で受ける学生が多く、部屋の様子から趣味趣向が垣間見えることもある。このケースではアイドルグループの同じメンバーのポスターが部屋一面に貼ってあり、推しメン(応援しているメンバー)が面接官にもわかってしまったという作品。自宅の中で白い壁を探したり、合成背景を設定する学生もいるようだが、面接官の側からすれば、ありのままを見せてくれると受け答えだけでは伝わらない学生の人となりが分かり、良い面もあるのかもしれない。
新型コロナウイルス感染拡大への対応として、選考過程のオンライン化が進む中、緊急事態宣言が採用活動の本来のピークと重なり、「一度も直接学生に会うこともなく内定を出す」というケースが少なくなかった21卒採用。「内定後フォローをしても心の距離が縮まっている感じがしない」と作者。やはりオンラインでのコミュニケーションの限界というのはあるのだろうか。採用担当者のもどかしく、切ない気持ちが表現されている作品である。
採用活動時期を直撃した今回のコロナ禍。早急な対応を迫られ、企業の採用担当者はさぞかし苦労し、戸惑ったことだろう。新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにリモート面接をしているにも関わらず、自宅の通信環境が不安なのか、上司の面接支援のためなのか、その理由は定かでないが、自分自身はそのリモート面接ために出社しなければならないという矛盾を端的に表した作品である。シンプルながらも、作者の戸惑いとやるせない気持ちが上手く表現されている。
「Zoom飲み会」という言葉がSNS等でも一時話題になったように、WEB会議ツールを面接だけでなく、プライベートでも利用している学生は多いだろう。しかし、プライベートでの設定のまま切り替えを忘れてしまうと、面接の場面でこのような悲劇も起こってしまうようだ。加工フィルターのウサギの耳を外そうとして、誤って合成背景のほうを外して、ウサギの耳は残ってしまうというミスからも、焦りまくっている学生の様子がよく伝わってくる作品である。
IT化への抵抗感は世代によってもかなり差があるようだ。作者の会社では、上層部は「会うことが大事」との認識が強く、オンライン化に対する抵抗感が強い一方、部下と学生はこの変化を比較的すんなりと受け入れたことを詠んだ作品。「オンラインと対面、どちらが良いか」という問いに対しては簡単に答えは出せない。ただ、今回のような緊急事態に対して、企業が状況に応じた対応を速やかにできるかどうかは、学生から厳しくチェックされたことは間違いない。
企業のWEBセミナーの際、学生側は基本的にカメラをOFFにし、学生側の様子は企業側には分からない。ひたすらカメラ(PC)に向かってしゃべり続ける様は、端から見れば確かにYouTuberのようだ。ただ、学生の反応が見えないというのは、話している当事者としては不安なはずだ。「YouTuber気分」でWEBセミナーに取り組み、さらにそんな自分を俯瞰して短歌にまでしている作者は、さまざまな状況を楽しめる適応能力が高い人物なのだろう。
作者には、社長が面接内容をあまり重視せず、容姿の好みで学生を選んでいるように映ってしまったようだ。さすがに今の時代に「容姿で選んでいる」と公言するような経営者はいないだろうが、そういった判断基準で選んでいるように「見えてしまう」こと自体が問題かもしれない。作者も「人事は真面目に取り組んでいるのに残念」と言っている。真剣に取り組む学生・人事に対し、経営者も真摯さがきちんと伝わるような態度で応えて欲しいところである。
「カメラに映る上半身はスーツでビシッと決めているが、映らない下半身はラフな格好」という趣旨の作品は就活川柳のほうにも多く見られたが、これは学生に限った話ではないようだ。この作品ではサンダルだが、自宅からWEB面接をしている面接官の中には、下半身はパジャマやスウェットという人もいるのかもしれない。学生も面接官も、お互い下半身だけパジャマで面接をしている画を想像すると、なかなか面白い。
オンライン面接では、通信環境によっては動画が固まってしまうことがよくある。「慣れるまでは、面接官が何かまずい発言をしたせいで、学生が固まってしまったのではないかとヒヤヒヤしたものです」と作者。学生も面接官側もオンラインでの面接に慣れるまでは手探り状態で、失敗したり、ヒヤヒヤしたりする場面が多々あったことだろう。そんな現場の戸惑いがよく伝わる作品である。通信環境が気になる場合には、無線LANやWiFiではなく、有線LAN接続をお勧めする。
主 催 | HR総研(ProFuture株式会社)、「就活会議」(就活会議株式会社) |
募集期間 | 2020年7月1日〜12日 |
応募資格 | 2021年卒採用を実施した企業の採用担当者 |
応 募 数 | 82作品 |
入 選 数 | 13作品 |