プレスリリース
コロナ禍が社員のストレスに与えた影響
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、“社員の健康”のために導入されたテレワーク。
しかし、20代社員においては、メンタルヘルスへの悪影響が懸念される結果に。
2015年12月より「ストレスチェック制度」が施行され、労働者が50人以上いる事業所では、毎年1回、ストレスチェックをすべての社員に対して実施することが義務づけられている。ストレスチェック制度では、ストレスチェックを実施後、自覚症状が高い者や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い者を「高ストレス者」として選定し、「高ストレス者」と選定された社員が申し出た場合、企業は、医師による面接指導を実施する必要がある。
コロナ禍が社員のストレスにどのような影響を与えたか?を確認するため、いわゆるコロナ前である[2019年](2018年12月~2019年11月実施分)と、コロナ禍の[2020年](2019年12月~2020年11月実施分)のストレスチェック結果より、医師による面接指導の対象となる「高ストレス者」の割合を比較した。
全体でみると、高ストレス者の割合は、2019年:12.4%、2020年:12.3%と、ほとんど変わらない。しかし、年代別でみると「30代」「40代」「50代以上」の社員は、コロナ禍にもかかわらず高ストレス者の割合が減少しており、「20代」の社員のみ高ストレス者の割合が増加していた。さらに年代×性別でも分析したところ、「20代」は男性、女性とも高ストレス者の割合が増加しており、その他の年代×性別においては、すべて減少しているという結果が得られた。
20代社員のストレス状態の悪化は、「拘禁反応」も影響か。
社員の健康管理は、テレワークを前提としたアップデートが必要。――弊社の考察
約70万人という大規模な経年データを分析し、(1)コロナ禍にもかかわらず「30代以上」の社員においてはストレス状態が良化していること、(2)他方、「20代」の社員のみストレス状態が悪化しているということがわかりました。
新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、国や都道府県が推奨したテレワークは、「30代以上」の社員においては、時間的な余裕ができたり、職場の人間関係というストレッサー(ストレスの原因)を遠ざけられたり等、ストレス状態にプラスの効果があったと考えられます。一方、まだ自身で主体的にできる仕事の範囲が限られる「20代」の社員においては、テレワークにより周囲のサポートが得られづらい状況となったことで、ストレス状態にネガティブな影響があったと考えられます。
ある精神科の先生は、これを「拘禁反応」という言葉で表現されていました。拘禁反応とは、閉じ込められたことによる抑うつ状態から幻聴等の幻覚が出現することを指します。テレワークで会社に行けない(禁止されている)、プライベートでも外出しづらい(制限されている)なか、家で長時間パソコンに向かって仕事をしていると、何となく漠然とした不安を抱いてしまうのではないか、とのこと。
企業にとっては、テレワークでは社員の不調の兆し――服装や勤怠の乱れ、とりわけ「出社できない」というアラートに気づくことが難しくなります。オンラインのコミュニケーションを活用するほか、「業務進捗をしっかりと確認し、ミスや抜け漏れ、滞りから、コンディションを早期に把握する」「産業医面談をオンライン化し参加のハードルを下げ、社内に広く周知する」など、テレワークを前提とした取り組みへのアップデートが求められます。
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調査時期
2019年…2018年12月~2019年11月
2020年…2019年12月~2020年11月
調査票
ストレスチェック『Co-Labo』(『職業性ストレス簡易調査票』+独自設問が追加された調査票)
対象者数
2019年…701,961名
2020年…729,410名
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