3割の企業が採用数を前年よりも増やすと回答。一方、採用数を減らす企業は5%しかなく、昨年以上の「学生の売り手市場」となることは必至である。企業側のプレエントリー状況をみると、大手企業では昨年比で増えている企業が減っている企業を上回るなど、大手企業志向が昨年よりも強くなっている。中堅・中小企業にとっては例年にも増して厳しい採用活動になるだろう。
採用減の企業はわずか5%
まずは採用計画から見ていきたい。まだ採用計画が「未定」とする企業も6%ほどあるものの、30%もの企業が前年比で「増やす」と回答、一方、「減らす」と回答した企業はわずか5%と、昨年以上に企業の採用意欲は高い。
従業員規模別で見ると、「減らす」とする企業は大手企業が最も多いものの、それでもわずか8%に過ぎず、32%は「増やす」と回答している。
[図表1]採用計画数の前年比
「ターゲット層の応募者」にこだわる企業
企業の課題を聞いたところ、半数以上の企業が選択したのが「ターゲット層の応募者を集めたい」で53%。「応募者の数を集めたい」とする企業も42%と全体の3位にもなっている。母集団自体が不足している企業も多くなっている。
2位には「大学との関係を強化したい」(45%)が入った。4位の「学内企業セミナーの参加大学を増やしたい」(39%)と合わせ、今年も大学との関係強化を課題にしている企業が多い。
【具体的な課題】
・一括採用ではなく個別のスキル確認やマッチングの確度をいかに高めるか、(効率的な採用プロセスとあわせて)が課題となっている。(メーカー)
・教育・研修やOJTで望ましいレベルにまで育成可能な学生の成長余力の把握。(情報・通信)
・採用したい人材像に近しい学生の獲得方法の確立。(商社)
・事業拡大にともなう即戦力候補生を広く集めたい。(サービス)
・これまでと同等レベルの学生を確保することは容易だが、一つ上のレベルの学生の確保が難しい。(メーカー)
・採用予定数が増えても、人員と予算が増えない。(メーカー)
・就活解禁前後は毎年バタバタしますが、3月解禁となったため、賃金改定・入社式前準備・人事考課関連と重なり、輪にかけた忙しさになることです。(メーカー)
・採用数を増やす必要がある中で、いかに効率良く優秀な学生を採用することができるか。魅力付けや内定フォローに至るまで、各プロセスでブラッシュアップができないかいつも模索しています。(情報・通信)
・仕事の魅力をより上手く伝えることができる内容に改善できれば良好。(情報・通信)
・適性検査に合格する割合が年ごとに下がっており、受験してもらいたい層を多く集めることで、合格率の低下を防ぎたい。(情報・通信)
・選考プロセスの途中で辞退・フェードアウトする数が多い。(商社)
・役員面接の改善。(サービス)
[図表2]新卒採用の課題
大学キャリアセンター対策が上位に
2018年新卒採用でより重要になると思われる施策を聞いたところ、トップは「自社セミナー・説明会」(48%)、続いて「学内企業セミナー」(45%)が2位と、リアルな学生とのコミュニケーションが上位に来ている。数年前まだトップだった「就職ナビ」は22%と、半分以下のポイントにとどまり、同じwebでも「自社採用ホームページ」の方が30%でそれよりも上位に来ている。「キャリアセンターとの関係強化」が34%で3位となっており、大学キャリアセンター対策が施策の上位に来ている。
[図表3]2018年新卒採用でより重要になると思われる施策
ターゲット採用施策をしている大企業は56%
「学歴フィルター」「ターゲット採用」などと称される、特定の大学層の学生に対して特別な施策を行う重点採用を実施している企業の割合は、全体で39%。企業規模別の内訳をみると、中小企業では26%と4社に1社程度の割合なのに対して、中堅企業で51%、大企業では56%と過半数に及んでいる。就職ナビや合同企業セミナー等で広く母集団形成をはかる一方、学内企業セミナーや研究室訪問など、特定の大学については個別対応を行っている。ただし、特定大学の学生だけから採用しない「指定校採用」制をとっている企業は少なく、あくまでも「重点校採用」であり、その他の大学からは一切採用しないという企業は少数派となっている。
[図表4]ターゲット校採用の実施
大手企業は国公立大重視
ターゲット校施策を実施している企業に対して、どの大学グループをターゲットとしているかを複数選択で聞いたところ、企業規模による差が見られた。大手企業では、「旧帝大」や「早慶上智クラス」を押さえて、「上位国公立クラス」がトップで67%と、3社に2社がターゲットとしている。次いで「旧帝大クラス」が60%、「中位国公立クラス」「地方国公立大クラス」がともに53%で続く。私大では、「GMARCH・関関同立クラス」が47%で、「早慶上智クラス」は33%にとどまる。「日東駒専」までをターゲット校とする大手企業はわずか7%となっている。メーカーを中心に、国公立大の人気が強い。
具体的な施策を見てみると、
・キャリアセンター訪問による関係強化
・キャリアセンターを訪問し、学内セミナー参画要請
・ターゲット校や学部への支援(寄付や教室へのスタッフ派遣)
・大学主催のセミナーへの出席、合同セミナーがなければ、単独で開催ができないか働きかけ
・学内セミナーにOBOGを参加させる
・大学および研究室の訪問回数を増やしている
・大学教授、研究室との直接的な接点強化
など、大学との関係性強化を挙げる企業が多い。
[図表5]ターゲット大学グループ
存在感を増すダイレクトリクルーティング
最近、新卒採用だけでなく、キャリア採用でも耳にするようになってきた「ダイレクトリクルーティング」。就職ナビや合同企業セミナーに頼るのではなく、人事採用担当者が能動的な採用活動を展開する「ダイレクトリクルーティング」の実施割合が16%にもなった。従来の就職ナビや合同企業セミナーだけでは満足できず、「待ち」の姿勢から「攻め」の姿勢へと変わってきつつある。
[図表6]ダイレクトリクルーティングの実施
「逆求人サイト」の活用が広がる
「ダイレクトリクルーティング」を実施している企業を対象に、具体的な施策を聞いたところ、トップは断トツで「逆求人サイトの活用」で56%と過半数に及ぶ。学生からのプレエントリーを待つ従来の「就職ナビ」と異なり、学生が登録しているエントリーシート・データベースを検索・閲覧して、自社の求めるタイプの学生に個別にアプローチメールを送って呼び込むという仕組み。エントリーシートの内容に沿って個別にメールを送る作業は手間のかかる作業であることは間違いないが、呼び込むことができれば、その後のステップで選考落ちとなる学生の割合は、従来の就職ナビ経由のエントリー者とは大きく差が出る。結果的には効率の良い選考ができているともいえる。
「入りたい学生の中から採る」のではなく、「採りたい学生を採りに行く」という発想の転換が起きている。従来の大量の「母集団」からの絞り込みという考え方ではない。
[図表7]ダイレクトリクルーティングで実施している施策
中小企業で減少したプレエントリーが大手企業へ還流
企業へのプレエントリーの状況を前年同期と比較しもらったのがこちら。全体ではプレエントリーが減少した企業が35%に対して、増えた企業は22%と、減少した企業の割合が多くなっている。しかし、企業規模別に分解してみると、プレエントリーが減少している企業は、中小企業では4割を超え、中堅企業でも3割を超えるなど、増えた企業を大きく上回っている。一方、大手企業を見てみると、減少した企業も2割はあるものの、増えた企業はそれを上回り3割にも達している。学生の大手企業志向の高まりが垣間見える結果となった。
[図表8]プレエントリー数の対前年比
4月までに面接開始の企業が3分の2
経団連の指針では「6月1日 面接選考開始」となっているものの、律儀にそれを守る企業は極めて少ない。「6月」「7月以降」との回答は2割そこそこしかない。匿名調査であるといっても表向きの回答をしている企業も少しはいるだろう。そう考えれば、「6月1日以降」を順守する企業は2割もない。面接開始時期のピークは、「4月」の29%ではあるが、採用広報が解禁された「3月」からすでに開始した企業も26%と大差はない。3月1日に就職ナビによるプレエントリー受付や、合同企業セミナー・学内企業セミナーが解禁されたばかりで、もう面接まで開始されるとなると、学生にしてみれば企業研究をする間はほとんどないことになる。応募動機も固まらないまま選考が進むことになり、企業は選考を通じて動機形成を図っていくことになる。
[図表9]面接選考の開始時期
解禁日前に内定出しを始める企業が3分の2
最後に内定を出し始める時期を見てみよう。ピークは「4月」で28%、次いで「5月」の24%となった。大手企業では、水面下での面接を「5月」までに進めながらも、内定出しは「6月」になってからとする企業が昨年は多かったが、今年は「5月」に内定まで出し始める企業が増えてくるものと予想される。内定出しを「6月」以降と計画している企業は35%と、3分の1程度にとどまる。他社の内定出しの状況次第では、それらの企業も前倒しする可能性は十分にある。
[図表10]内定出しの開始時期
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年3月21日~3月29日
有効回答:184社(1001名以上:14%、301~1000名:34%、300名以下:52%)
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