注目されるデカコーン企業の最新情報と日本の現状とは
歴史の浅い非上場企業でありながら、巨額の利益をもたらす存在として期待される「ユニコーン企業」が世界中で次々と誕生しています。ユニコーン企業が珍しくなくなってきた今、スタートアップ企業が世界により認められる存在になるには、100億米ドル以上の評価額が付けられた「デカコーン企業」を目指さなければならない時代になってきたといえます。
この記事では、世界の注目を集めるデカコーン企業の概要とともに、特に高い評価額が付いている最新のデカコーン企業情報や日本における現状をご紹介します。
デカコーン企業とは
デカコーン企業とは「創業10年以内」「評価額10億米ドル以上」「非上場」といった3つの条件を満たしているユニコーン企業のうち、100億米ドル以上の評価額が付けられている企業を指します。
「デカコーン」という名称は、10倍を意味する「デカ(deca)」と伝説の生き物「ユニコーン(unicorn)」を掛け合わせてつくられた造語です。また、評価額が1,000億米ドル以上のユニコーン企業は、100倍を意味する「ヘクト(hecto)」を用いて「ヘクトコーン企業」と呼ばれます。
ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏によってユニコーン企業が提唱された2013年以降、アメリカや中国を中心に次々と創出され、2022年現在においては1,000社を超えるユニコーン企業が存在しています。上場などでユニコーン企業の条件を満たさなくなった企業は「卒業」することになりますが、出ていく企業よりも新たに入ってくる企業の方が多く、ユニコーン企業の数は年々増加しています。
このような中で、近年は評価額が100億米ドルを超えてデカコーン入りを果たす企業も増えており、デカコーンの時代が訪れていると言っても過言ではありません。
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デカコーン企業の現状
アメリカの調査会社・CB Insightsが運営するデータベース「The Complete List Of Unicorn Companies」によると、2022年4月時点のユニコーン企業数は1,074社。そのうち、評価額100億米ドル以上のデカコーン企業は51社でした。
現在のデカコーン企業はどの国でうまれ、またどのようなサービスを展開しているのか、デカコーン企業の分布を「国・地域別」「業種別」に下表にまとめました。
世界のデカコーン企業51社のうち、アメリカと中国(香港含む)だけで39社と、全体の8割近くを占めています。また、業種では「FinTech」「インターネットソフトウェア・サービス」が多く、テクノロジー関連企業のめざましい発展が見受けられます。このように、アメリカ・中国の二大国が中心となっていること、テクノロジー関連の業種が多いことは、ユニコーン企業全体の傾向とほぼ同じです。
用語解説「フィンテック(Fintech)」| 組織・人材開発のHRインスティテュート
なお、2022年4月時点において、評価額1,000億米ドル以上のヘクトコーン企業に位置付けられている企業は以下の3社のみです。
●Bytedance(評価額1,400億米ドル)
●SpaceX(評価額1,003億米ドル)
●SHEIN(評価額1,000億米ドル)
「Bytedance」は動画共有サービス・TikTokなどを運営する中国のテクノロジー企業、「SpaceX」は世界で初めて民間人だけでの宇宙旅行に成功したアメリカの航空宇宙メーカー、「SHEIN」はファストファッションを扱う中国のアパレルEC(D2C)です。SHEIN社の評価額が1,000億米ドルを突破したと報道されたのは2022年4月のことで、それまでは評価額150億米ドルのデカコーン企業でした。
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注目のデカコーン企業
今、特に高い評価額が付けられている注目のデカコーン企業10社をランキング形式で下表にまとめました(CB Insights「The Complete List Of Unicorn Companies」より)。
世界最大のデカコーン企業は、オンライン決済サービスを提供しているアメリカのFinTech企業「Stripe」です。日本では2016年からサービスが始まり、大手企業からスタートアップまで数多くの企業で導入されています。2014年にユニコーン入りしたStripe社は現在の評価額が950億米ドルと、今後ヘクトコーン企業になる可能性は十分にあるでしょう。
Stripe社をはじめ、上表のデカコーン企業ランキングのうち、10社中5社がFinTech関連企業であることにも注目です。FinTechとは金融(Finance)と技術(Technology)から成る造語で、金融分野とIT技術の融合で生まれた革新的なサービスをいいます。上表のランキングでは、アメリカのStripe社、スウェーデンのKlarna社、バハマのFTX社などがランクインしました。金融サービスに新たな価値をもたらすテクノロジーとして、世界中のFinTech企業が高い評価を得ていることがわかります。
また、宅配便アプリを提供するインドネシアの物流会社「J&T Express」(評価額200億米ドル)のような、中国・インド以外のアジア圏デカコーン企業の台頭も注目に値するでしょう。インドネシアでは2021年末までに9社のユニコーン企業がうまれており、東南アジアのスタートアップ企業を牽引する存在といえそうです。
さらに、2022年3月時点では評価額52億米ドルだった暗号通貨金融サービスを提供する英国企業「Blockchain.com」(評価額140億米ドル)のように、ユニコーン企業からデカコーン企業へと急成長を遂げる企業の登場にも期待が高まっています。
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日本におけるデカコーン企業の現状
CB Insights「The Complete List Of Unicorn Companies」によると、現在のところ日本にデカコーン企業は存在しません(2022年4月時点)。そもそも日本はユニコーン企業の数が少なく、スタートアップの興隆に関しては世界に遅れをとっているといわざるを得ません。 2022年4月現在、評価額10億米ドル以上のユニコーン企業に追加されている日本企業は以下の5社です。
岸田内閣は2022年を「スタートアップ創出元年」とし、「スタートアップ5か年計画」を策定する方針を明らかにしました。具体的には、スタートアップ企業の創出・育成を成長戦略の柱の一つとし、担保なしで立ち上げ資金の融資が受けられる制度をつくるなど、国を挙げてスタートアップ創出強化に取り組むことを表明しています。今後、政府の後押しを受けたスタートアップ企業のユニコーン入りが期待されます。
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まとめ
ユニコーン企業のうち、100億米ドル以上の評価額が付けられた企業のことを「デカコーン企業」といいます。2022年4月時点において、世界のデカコーン企業数は51社。ユニコーン企業と同様に、デカコーンに育つ企業もアメリカ・中国といった大国が中心ではあるものの、近年はヨーロッパ圏やアジア圏などでもデカコーン企業が誕生しています。 世界最大のデカコーン企業にはアメリカのFinTech企業「Stripe」が君臨しており、FinTech領域の興隆はめざましいものがあります。日本は世界と比べてユニコーン企業の数が少なく、デカコーン入りの兆しはまだまだ見えません。しかし、成長戦略の柱として政府によるスタートアップ支援の動きが加速していることから、将来的に日本のユニコーン企業の増加、デカコーン企業誕生の可能性は大いにあるでしょう。
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