自治体クラウド導入への具体的な課題解決方法を内閣府が発表した先進・優良事例から解く

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自治体クラウドとは、地方公共団体の情報システムを外部のデータセンターに集約し、複数の自治体で共同利用する仕組みです。自治体クラウドを導入する自治体は年々増加しており、先進的かつ優良な取り組み事例も増えています。
この記事では、内閣府が発表した先進・優良事例から、自治体クラウドの導入時に考えられる課題や具体的な解決方法をご紹介します。

目次

自治体クラウドとは?

従来、地方公共団体は情報システムや行政に関するデータを庁舎内で保有・管理し、個別に構築されたソフトで処理してきました。
自治体クラウドとは、このような自治体ごとのシステム・データ管理に代えて、セキュリティレベルの高い外部のデータセンターにて保有・管理し、複数の自治体で共同利用できるようにする仕組みをいいます。

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自治体クラウドのメリット

総務省は自治体クラウド導入のメリットとして以下の4つを挙げています。
・情報システムの運用コストを3割程度削減できる
・情報システムをデータセンターで集中監視することで情報セキュリティ水準が上がる
・災害・事故などで自治体の庁舎が被災した場合も業務継続を確保できる
・自治体クラウドの参加団体間で業務の共通化・標準化が実現する

自治体クラウドの導入を支援する地方財政措置

政府は自治体クラウドの導入を支援すべく「自治体情報システム構造改革推進事業」として自治体クラウドの推進に係る経費(1,500億円)を計上しています。具体的な対象経費は以下のとおりです。
・共同化計画に要する経費
・導入コンサルタントに要する経費
・データ移行に要する経費
・実務処理研修に要する経費
・新システムの安定稼働のためのコンサルタントに要する経費

参考:総務省|自治体クラウドの導入促進の取組

自治体クラウドの導入課題と解決方法

自治体クラウドの導入にはまず、クラウド化計画のある自治体と推進体制を立ち上げ、具体的な導入計画を策定する必要があります。
そして、現行業務の見直しや業務標準化を検討し、新システムの導入範囲や情報システム業者、団体間での費用分担などを決めていきます。

政府による取り組みはおこなわれているものの、自治体クラウドを導入する際は参加団体の合意を取りながら進めていかなければなりません。そのうえで、内閣府は以下のような導入課題と解決方法を示しています。

①課題:カスタマイズによるコスト増加と汎用性の低下
 解決:既存パッケージを導入し、パッケージに業務を合わせる

②課題:現場からの反発
 解決:首長のリーダーシップと庁内における推進体制の構築

③課題:ベンダーとの関係
 解決:ベンダーと交渉できる専門家を登用する

④課題:自治体間の調整の困難
 解決:導入を主導した県・市・町村会が中心となる

参考:内閣府|先進事例の分析[自治体クラウド]

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自治体クラウド導入の先進・優良事例

自治体クラウドの導入にあたっては、内閣府が公開している「自治体クラウド導入に係る先進・優良事例集」が役立ちます。導入実現までにどのような課題があるか、また課題解決に向けてどう動くかなど、すでに成功している自治体の事例を参考に考えていくとよいでしょう。

事例①【複数大都市参加型】岡崎市・豊橋市の自治体クラウド
愛知県岡崎市・豊橋市の自治体クラウドは、全国初となる人口30万人以上の中核市での共同利用です。対象業務は国民健康保険、国民年金、税総合システムのライフサイクル全体としています。

【課題・解決方法】
導入実現に向けた推進体制の構築が課題となっていましたが、業務主管課に管理部門を設置し、ベンダーに対しても共同化を調整。共同化相手との距離の課題に対しては、Web会議システムや情報共有ツールを活用し、コミュニケーションを図りました。

【効果】
国民健康保険、国民年金、税総合システムにおいて、5年間の合計で16億500万円(約45%)の削減に成功。クラウド化をきっかけに、業務の共同化・統一化などの業務改善も実現しました。

事例②【中心市主導型】高石市・忠岡町・田尻町の自治体クラウド
大阪府高石市・忠岡町・田尻町の自治体クラウドは「災害に強い街づくり」を契機に高石市が忠岡町と連携して共同導入、後にシステムの更新時期を迎えた田尻町が参加しました。対象は基幹系業務など合計40業務としています。

【課題・解決方法】
原則ノンカスタマイズでパッケージに業務を合わせることに対し「業務フローから根本的な見直しが必要」と現場からの反発が噴出。クラウド化を理解してもらうために情報部門が丁寧に説明を重ね、財政部門にもコスト削減効果や財政支援措置について説明をおこないました。

【効果】
導入後5年間でのコスト削減は、3市町全体で4億2,600万円(約35%)の見込みとなりました。また、データセンターはメインを関東、サブを西日本に配置し、災害リスクの分散を実現しています。

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まとめ

自治体クラウドの導入においては、現場からの反発や自治体間・ベンダーとの調整といった課題が必ず起きるでしょう。こうした課題を解決し自治体クラウドを成功させるには、導入の目的意識を共有し、協力体制を構築することが必要不可欠です。
まずは成功している自治体の事例を参考に、自治体クラウド導入の課題や解決方法について理解を深めていくことをおすすめします。

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