ベストプラクティスとは?導入するメリットや参考になる事例集を紹介
現時点における最良の方法である「ベストプラクティス」。すでに効果が実証されている再現可能な方法であり、企業が目指すべき目標として据えることもあります。
この記事では、ベストプラクティスの意味や導入するメリット、取り組みの参考になる事例集をご紹介します。
ベストプラクティスとは
ベストプラクティス(Best Practice)とは、特定の方法や工程、実践のなかで最も優れた手法を意味する言葉です。業界標準や成功事例として用いられることもあり、業界や状況によって言葉の意味が変わります。業務改革を効率的に進めるためには、自社で実現可能なベストプラクティスを導入することが重要です。
用語解説:ベストプラクティス|組織・人材開発のHRインスティテュート
ベストプラクティスの意味
ベストプラクティスは使用シーンによって多少ニュアンスが変わってきます。
ここでは一般的な意味と、技術・IT・医療の各領域における言葉の意味をご紹介します。
一般的な意味
ベストプラクティスとは一般的に「最善の方法」や「最適な手法」を意味します。
ただし、これは現時点における最良な方法を指すため、技術や環境が変化すればベストプラクティスも変わることがあります。
技術分野における意味
技術分野では「業界標準」として使用するケースが多く見られます。
公式に認められていなくても、広く普及したことで事実上標準的と認められる規格や製品を「ベストプラクティス」に指定することがあります。
IT業界における意味
IT業界では、特定サービスにおける最適なインフラやシステムを指します。
また、業界内で最も多く使用される規格や製品を「ベストプラクティス」に指定することもあります。
医療業界における意味
医療業界においては「最善の処置」や「最も効果的な治療法」として使われます。
患者一人ひとりに対し、常に適切な診断と治療法(=ベストプラクティス)を提供することが求められています。
ベストプラクティスと似ている言葉
ベストプラクティスと似ている言葉を以下にまとめました。ビジネスシーンで見聞きする機会が多いため、それぞれの言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
グッドプラクティス
グッドプラクティスとは、特定の状況で良好とされる取り組みや手法を指す言葉です。大学教育改革における「優れた取り組み」として国際的に用いられることが多く、国際機関の報告書などで実際に使用されています。
バッドプラクティス
バッドプラクティスとは、非効率な方法や失敗例、悪しき慣行などを意味する言葉です。ベストプラクティスの対になる概念であり、IT領域ではプログラミングやコーディングの「悪い見本」として使われます。是正しなければ再発の可能性が高い、早期に改善すべき慣習ともいえます。
ベストフィット
ベストフィットは「最適任」を意味し、企業における人材の選出・育成で使われることが多い言葉です。ベストプラクティスは最も優れた「手法」、ベストフィットは最も適した「人材」を指すときに用いられ、自社の経営戦略に適合する最適な人材を選ぶことを「ベストフィット・アプローチ」といいます。
セオリー
セオリーとは確立された方法や理論を指し、ビジネスにおいては「効果的な手段」「手堅い方法」として用いられます。ただし、個人の思い込みや経験に基づく方法として、主観的なニュアンスが含まれることがあります。セオリーが存在していても、それが必ずしも最適解であるとは限らない点に注意が必要です。
ベンチマーキング
ベンチマーキングとは、他社のベストプラクティスを分析し、自社に取り入れる経営手法です。分析対象となるのは製品やサービス、経営戦略、業務プロセス、社員の働き方など多岐にわたります。自社の課題を明確にし、改善策を見つけるために用いられる手法です。
用語解説:ベンチマーキング|組織・人材開発のHRインスティテュート
ベストプラクティスを導入するメリット
ベストプラクティスを導入するメリットとして以下の点が挙げられます。
ありたい姿の具体化
他組織の成功事例や最適な手法を具体的に学ぶことで、自組織が目指すべき理想像が具体的かつ現実的に描きやすくなります。また、現状とのギャップを明確化することで、達成可能な目標を設定しやすくなり、計画立案の精度が向上します。
生産性の向上につながる
ベストプラクティスの導入により、業務の属人化を防止できるメリットがあります。現時点における最善の方法や効果的な手法を採用し、既存の業務プロセスを標準化することで、誰が担当しても作業品質を一定に保てるようになります。これにより非効率な作業が是正され、作業時間の短縮やヒューマンエラーの防止、ひいては生産性の向上につながる効果が期待できます。
優れた方法に最短でアプローチできる
ベストプラクティスはすでに効果が実証されている手法です。他社の成功事例を取り入れることで、新しい方法を模索する時間と費用を節約し、スピーディーに成果を上げることができます。また、自社にとっても一定の効果が期待できる手堅い方法といえるため、新しいアイデアを採用する際に社内の合意や共感を得やすく、優れた方法に最短でアプローチできるメリットもあります。
ベストプラクティスを導入するデメリット
企業にとってさまざまなメリットがある一方、ベストプラクティスを導入する際は以下の点についても認識しておく必要があります。
自社に適合するとは限らない
ベストプラクティスは他社の成功事例であり、自社に必ずしも適合するとは限りません。業界標準を導入することで、企業の独自性が損なわれる可能性もあります。導入する際には再現性の高いアイデアを見極めるとともに、実際に取り入れた後も自社の状況に合わせて調節していく必要があるでしょう。
自社での導入が難しいケースもある
コストや人的リソースの制約、必要な技術や設備が不足しているために、ベストプラクティスの導入が難しいケースも考えられます。新しいアイデアを取り入れる際には、自社で実現可能かどうかをしっかりと検討する必要があります。導入する場合もまずは小規模で開始し、効果を分析しながら徐々に範囲を広げていくのがよいでしょう。
人材育成には当てはまらない
人材育成は個別対応が必要となり、共通のベストプラクティスは存在しません。必要なアプローチは社員の特性や状況によって異なるため、画一的な方法では効果が出にくいからです。既存の手法を当てはめるのではなく、社員一人ひとりに最適なアプローチを検討するのが望ましいでしょう。
ベストプラクティスの見つけ方
他社の取り組みを参考にしたい時には、さまざまな成功事例をまとめたベストプラクティス集が公開されているので、そうしたものを活用することができます。ここでは経済産業省と厚生労働省が公開しているベストプラクティス集をご紹介します。
ダイバーシティ経営のベストプラクティス
ダイバーシティ経営のベストプラクティスは、経済産業省が公開している「新・ダイバーシティ経営企業100選」が参考になるでしょう。ダイバーシティ 2.0に取り組む企業を「100 選プライム」、ダイバーシティ経営を実践し成果を上げている企業を「新100選」として選定し、各企業の経営課題や人材戦略、具体的な取り組み内容、ダイバーシティ経営による成果などをまとめています。
働き方改革のベストプラクティス
働き方改革のベストプラクティスを見つけるには、厚生労働省が運営する特設サイトから中小企業の取り組み事例を検索するとよいでしょう。取り組み内容や業種、地域、従業員数を選んで検索できるため、自社の課題や状況に合致する事例を見つけやすい仕様になっています。取り組みを振り返ってどう感じたか、現場で働く社員の声も掲載されており、社員側の目線も確認することができます。
経済安全保障におけるベストプラクティス
経済安全保障上の課題と向き合い、自主的にさまざまな工夫を実践している企業の事例をベストプラクティスとしてまとめたものです。多くの企業が課題としている「技術流出リスク」と「ビジネスの予見性低下」について、「従業員の情報管理意識の醸成」や「取引先企業の情報管理」「レピュテーションリスクへの対策」など21項目ものベストプラクティスが掲載されています。
※レピュテーションリスク:ネガティブな評判が広がることで企業の評価が低下するリスク
経済安全保障上の課題への対応(民間ベストプラクティス集)|経済産業省
まとめ
ベストプラクティスとは「最善の方法」や「業界標準」を意味する言葉です。特定の工程や実践において最も優れている手法であり、自社が目指すべき目標ともなり得るものです。一方で、ベストプラクティスは現時点での最良な方法であって、ビジネス環境の変化とともに変わっていく可能性があります。自社で取り入れる際には実現可能かどうか、また導入時点でもその方法が最適かどうかを見極めることが重要です。
HRインスティテュートが提供する「働き方改革支援」は、ワークスタイルの変革によって自社のあるべき姿を実現するプログラムです。目指す姿と現状とのギャップを解消するために、現場起点の現状分析で課題を抽出し、企業が取り組むべきベストプラクティスを明確にしていきます。
働き方改革の取り組みに課題を感じている方は、以下のリンク先より本プログラムの詳細をご確認ください。
関連プログラム:働き方改革支援|組織・人材開発のHRインスティテュート
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