ゼブラ企業とは?特徴やユニコーン企業との違い、世界・日本の企業を紹介
長期的な視点から経済性と社会性の両立を目指す「ゼブラ企業」。事業を通じて社会課題の解決に取り組む経営姿勢は昨今の潮流ともマッチし、新たなビジネスモデルとして世界中の関心を集めています。
この記事では「ゼブラ企業」を取り上げ、共通する特徴やユニコーン企業との違い、世界・日本のゼブラ企業についてご紹介します。
ゼブラ企業とは
ゼブラ企業とは、利益追求と社会貢献の両立を目指す企業のことです。経済性と社会性、2つの相反する目標に取り組むことから、白黒模様のシマウマ(英語でzebra)にたとえて「ゼブラ企業」と名付けられました。アメリカの女性起業家たちが2017年に提唱した概念であり、他社との競争で市場を寡占していく現在の資本主義に対するアンチテーゼ的存在として注目を集めています。
ゼブラ企業が注目されている理由
ゼブラ企業が注目される背景には、持続可能性に対する社会的な関心があります。利益だけを追うのではなく、組織として社会課題の解決にも積極的に取り組んでいる企業が多方面から支持されています。
SDGsへの関心の高まり
ゼブラ企業の概念は、世界が達成すべき国際目標である「SDGs」(持続可能な開発目標)と合致しています。SDGsの推進により、持続可能な社会の実現に取り組む企業が社内外のステークホルダーから評価され、収益性と持続可能性の両立を目指すゼブラ企業に注目が集まっています。また、Z世代を中心にSDGsへの取り組みやサステナブル商品に関心を持つ消費者が増えていることも、ゼブラ企業の成長を後押ししているといえるでしょう。
日本政府の後押し
ゼブラ企業の創出は日本政府も支援しています。2023年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)では、中堅・中小企業の活力向上を図るための取り組みとして「地域の社会課題解決の担い手となり、インパクト投資等を呼び込む中小企業(いわゆるゼブラ企業など)の創出と投資促進」と記載されました。国の方針として示されたことで、ゼブラ企業に注目が集まるきっかけとなりました。
なお、2023年に引き続き2024年の骨太方針においても「ゼブラ企業の創出(「経済財政運営と改革の基本方針2024」P11より抜粋) 」という方針が明記されています。
ゼブラ企業の特徴
ゼブラ企業に共通する特徴として以下の点が挙げられます。
これらがビジョンとして共有され、行動と一貫している会社が「ゼブラ企業」です。
社会課題の解決を目指している
ゼブラ企業は、売上や利益の最大化ではなく、社会課題の解決を事業目的としています。社会の一員として存在する企業が持続的な繁栄を目指すためには、相利共生(集団での共存)の価値観を大切にし、経済活動と社会活動の両方を重視していく必要があります。事業活動を通じて経済的利益と社会的価値を両立させ、よりよい社会の実現を目指しています。
社会課題に対して多様な力を結集して取り組んでいる
ゼブラ企業は、多様な要素が絡み合う複雑な社会課題に対し、多様な力を結集して取り組みます。大規模な投資ではなく、クリエイティブやコミュニティの力を活用し、長期的な視点で問題に挑んでいるのが特徴です。競争よりも協力を重視し、必要な資源を共有しながら社会課題の解決を目指しています。
すべてのステークホルダーを大切にする
ゼブラ企業は、短期的な成果よりも、長期的にすべてのステークホルダーの幸福を追求する経営を目指します。株主のみならず社員や顧客、取引先、地域社会といった多様なステークホルダーの幸福を追求しています。長期的かつ包摂的な経営姿勢を持ち、あらゆる関係者が利益を享受できるようにすることが目標です。
ゼブラ企業とユニコーン企業の違い
ユニコーン企業のアンチテーゼ的存在として誕生したゼブラ企業。対照的な概念を持つ両者にはどのような違いがあるのか、ゼブラ企業とユニコーン企業の特徴を比較しながら解説します。
ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは次の3点を満たす企業を指します。
● 起業して10年以内であること
● 評価額10億ドル以上であること
● 未上場であること
短期間で大規模な利益を生み出す希少性の高さから、伝説上の生き物「ユニコーン」にたとえられているユニコーン企業。AI(人工知能)やロボティクス、半導体といった最先端の分野において、高い成長性が注目されています。
関連記事:【2024年最新版】ユニコーン企業とは?日本・世界のランキング、日本で少ない理由を解説
ゼブラ企業とユニコーン企業の比較
ゼブラ企業は社会課題の解決を目的に持続可能な成長を目指し、長期的にステークホルダー全員を幸福にする経営をおこないます。一方、ユニコーン企業は株主価値の最大化を重視し、短期間で急成長することを目指します。また、複数の企業と協力しながら共存共栄を図るゼブラ企業に対し、自社の利益を優先して市場の独占・寡占を図るユニコーン企業という違いもあります。
世界のゼブラ企業
世界にはどのようなゼブラ企業があるのか、異なる事業を展開する3社の事例をご紹介します。
Allbirds(オールバーズ)
2016年に設立されたライフスタイルブランド「Allbirds」は、サンフランシスコを拠点に“カーボンニュートラルなビジネス”の実現に取り組んでいる企業です。創業当初から環境負荷低減に重きを置いてきた同社では、二酸化炭素の排出量を完全に「ゼロ」にすることを目指し、詳細なサステナビリティレポートを公開しています。
参考:サステナビリティ活動とガイド|Goldwin Online Store
Aleph Farms(アレフ・ファームズ)
2017年に設立された「Aleph Farms」は、イスラエルを拠点に持続可能な食品技術を推進している企業です。動物血清・抗生物質不使用の培養牛ステーキ肉「アレフ・カット」において、世界初となる培養牛肉の販売認可を取得しています。これまで培養鶏肉に対して認可を得ている企業はあったものの、培養牛肉での承認は同社が初めてとなりました。
参考:Aleph Farms Granted World’s First Regulatory Approval for Cultivated Beef|Aleph Farms
Peerby(ピアビー)
2012年に設立された「Peerby」は、オランダを拠点に日用品のシェアリングプラットフォームを提供している企業です。十分に活用されていない日用品を近隣住民と共有し合うという、顔の見える距離でご近所同士がつながりを持つ仕組みを提供し、地域コミュニティの活性化を図っています。これまでの利益追求型からコミュニティモデルへと転換し、持続可能な成長を実現しました。
参考:ユニコーンから「ゼブラ企業」への転換で成功。オランダ発スタートアップPeerbyがたどり着いた「コミュニティモデル」|株式会社Zebras and Company
日本のゼブラ企業
収益性と持続可能性の両立を目指す企業は日本にも存在しています。
ここでは日本を拠点に事業展開するゼブラ企業をご紹介します。
ボーダレス・ジャパン
2007年に設立されたボーダレス・ジャパンは、世界13か国で50以上ものソーシャルビジネスを展開している企業です。同社では「恩送りのエコシステム」を導入し、通年で黒字を達成した企業の余剰利益を原資として次世代の社会起業家の創出・育成を支援しています。
AsMama(アズママ)
2009年に設立された「AsMama」は、交流・体験学習イベントの運営や共助SNSの運用などをおこなう企業です。「共に頼り合う社会」を目指し、地域コミュニティを活性化するイベントを年間2,000回以上実施しています。また、自社開発アプリ「マイコミュ」を活用し、住民が主導する共助コミュニティの形成に取り組んでいます。
参考:株式会社AsMama
石見銀山 群言堂
石見銀山のふもとにある大森町で創業した石見銀山 群言堂は、地域に根差したものづくりを通じて「生き方、暮らし方」を提案しているライフスタイルブランドです。里山暮らしから生まれる「衣、食、住、美」の商品を提供し、人々の暮らしに溶け込み長く愛される製品作りを目指しています。
参考:石見銀山 群言堂
まとめ
ゼブラ企業とは、利益追求と社会貢献を両立させ、よりよい社会の実現を目指している企業のことです。自社の利益を優先し、短期間での急成長を目指すユニコーン企業とは対照的な概念といえます。
SDGsやサステナビリティに対する社会的な関心が高まるなか、これらと合致するゼブラ企業の概念は今後ますます重要性を増すことが予想されます。日本政府も国家戦略として推進している新しい企業の形に注目してみてはいかがでしょうか。今後の経営戦略策定においても十分に参考になると思われます。
参考:経営戦略策定ワークアウト
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