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ジェンダー平等とは?ジェンダー・ギャップ指数を用いた日本の現状と改善事例

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男女共同参画社会が叫ばれて久しい日本では、女性の管理職登用など社会進出に加えて、男性の育児休業休暇取得率の改善など「ジェンダー平等」を目指した動きが進んでいます。とはいえ世界的に見るとまだまだ日本のジェンダー・ギャップ指数は低く、今後も改善の余地があるといえるでしょう。

この記事では、ジェンダー平等について解説しながら、ジェンダー・ギャップ指数を用いた日本の現状について解説します。

目次

ジェンダー平等とは

ジェンダー平等とは、教育・雇用・政治参加・結婚などのライフスタイルに至るまで、性別に関わらず全ての人に平等な機会が与えられるべきとする考え方です。

SDGs目標5でも「ジェンダー平等」の達成を掲げ、女性の地位向上・教育機会の獲得が目指されました。若い世代を中心に少しずつジェンダーによる差別をなくす考え方が広がり「ジェンダー平等」「ジェンダーレス」として定着しつつあります。
日本の法律・政策ではジェンダー平等が強く意識されており、性差だけを理由として個人の自由を妨げることが禁止されています。

ジェンダーとは

そもそもジェンダーとは、社会的な風習・通例・文化によって作られた性差を指す言葉です。生物学的な性差ではなく「男性」「女性」に区分して役割を押し付けるステレオタイプな考え方が「ジェンダー」といえるでしょう。

なお、ジェンダーの例として、以下のような事例や考え方が挙げられます。

● 女性は家事育児で家を支えるのだから大学など高等教育は不要である
● 男性は外で収入を稼ぐことが本懐なのだから育児休業を取るのはナンセンスだ
● 男の子は青、女の子はピンクが好きなはず
● 男性を優先的に昇進・昇給させ、女性は一般事務などに従事させる
● 同じ仕事でも男性と女性とで基本給を変える
● 男性は強くあるべき、女性は優しく穏やかであるべき

社会や文化の中でどのように振る舞うべきか、どのような役割を果たすべきか、などの固定観念が強く、個人のアイデンティティが性差により決まってしまうことが少なくありません。ジェンダー平等の考え方が定着しつつある令和の時代でも、自然とステレオタイプな考え方をしてしまう人は多いのではないでしょうか。

ジェンダー・ギャップ指数

ジェンダー・ギャップ指数とは、国・地域におけるジェンダー不平等の程度を示す指標です。ジェンダー・ギャップ指数が高ければジェンダーレスな状態にあり、反対にジェンダー・ギャップ指数が低ければまだまだ。
なお、ジェンダー・ギャップ指数の計算には、教育・経済・政治・健康の4分野14項目の指標が使われます。

日本のジェンダー平等

ここからは、世界と比べた日本のジェンダー平等について解説します。残念ながら日本のジェンダー・ギャップ指数は世界118位と低く(※)、特に政治・経済分野での低迷が続いています。

参考:朝日新聞|【ジェンダーギャップ指数】日本、2024年は世界118位で低迷続く 政治・経済に課題

日本のジェンダー・ギャップ指数が低い理由

日本のジェンダー・ギャップ指数が依然として低いままである理由として、以下が挙げられます。

● 女性経営者・管理職が少ない
● 女性官僚・議員が少ない
● 女性の平均年収・生涯賃金が低い
● 育児・家事の負担が女性に偏っている

政治・経済分野では、特に女性経営者や女性官僚の少なさが顕著です。先進国および東アジア太平洋地域19ヶ国においてともに最下位を記録しており、女性が社会の意思決定機関に参画できていないことがわかります。

また、「女性は家庭・男性は仕事」というステレオタイプがいまだに根強く、育児・家事の負担が女性に偏っているため女性のキャリアアップが妨げられるという事態が発生しています。そのため女性の平均年収・生涯賃金が低いままになっているのも課題といえるでしょう。

政治分野における女性の参画状況

日本の衆議院における女性議員の割合は、2023年10月時点で9.68%に留まります。先進国のなかでも最低水準であり、2018年に施行された政治分野における男女共同参画推進法の後も、劇的な変化はみられていません。

その理由として、議員活動と家庭生活(子育て・介護)の両立が難しいこと、政治は男性がするものという固定的な考え方が強いことが挙げられます。その他、女性候補者を育成する機会が少ないことや女性としてハラスメントを受ける機会が多いことも理由となりました。

参考:Global Gender Gap Report 2024 | World Economic Forum

経済分野における女性管理職の状況

日本では、2021年の時点で課長相当職以上のポジションに就いている女性の割合は13.2%に留まっています。女性管理職の割合が50.5%と過半数を超えるフィリピンなどの事例があることを考えると、同じアジア圏でも大きな違いがあるといえるでしょう。

「女性版骨太の方針2023」では、課長相当職以上のポジションに就いている女性の割合を2030年までに30%にできるよう、目標が設定されました。

経済分野における女性管理職の割合が少ない理由も、子育て・介護との両立が難しいことに起因します。「男は会社で、女は家庭で」などジェンダーの押し付けも、昇進を目指しながらバリバリ働きたい女性にとってハードルとなっています。

参考:Global Gender Gap Report 2024 | World Economic Forum

ジェンダー平等とDE&I

DE&Iとは「多様性(Diversity)」「公正性(Equity)」「包含性(Inclusion)」の頭文字を取って作られた言葉です。性別だけでなく、年齢・出身地・居住地・宗教・文化や価値観などの違いを認め合い、多様な人材が自由に活躍できる社会を目指す要素として広く知られるようになりました。

ジェンダー平等は、前述した「社会的な風習・通例・文化によって作られた性差」をなくし、男女間の平等を目指すものです。DE&Iは性差だけでなく年齢や国籍などありとあらゆる差をなくして多様性を認めるための取り組みですが、そのなかにジェンダー平等も含まれていると考えてよいでしょう。

日本でもDE&Iの取り組みが広がっており、以下で詳しく解説します。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

経済産業省では、世界的に遅れを取っている経済分野におけるDE&Iの改善を目指し、ダイバーシティ経営を推奨しています。ダイバーシティ経営は「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営(※)」として定義されていて、業種・職種を問わず取り組みが必要なものとして周知を進めています。

具体的なDE&Iの施策として、同一労働同一賃金の徹底や・パパママ育休の促進・人材育成や能力開発など、さまざまな案が挙げられています。その他、人事評価制度の見直しによる男女平等な昇進機会の提供や、個々のキャリアと結びつけた現場指導なども効果的といえるでしょう。

●関連プログラム/キャリアデザイン・ワークショップ

リモートワーク導入によって育児中の社員が離職せずにいられるようにすることも、社内でダイバーシティ研修を実施して社員の意識を高めることも施策のひとつです。

引用:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」

ジェンダー平等を実現する企業の取り組み

ここでは、ジェンダー平等を実現する企業の取り組みについてより詳しく掘り下げていきます。制度改革が必要な大規模な取り組みから、比較的手軽な取り組みまで幅広くあるため参考にしてみましょう。

女性の管理職登用促進

女性の管理職登用促進は、ジェンダー平等を実現する企業の取り組みとして特に有名です。女性が意思決定の場に参画することで組織の健全な成長や多様な視点を持った判断に貢献する他、女性経営者のロールモデルができることで女性社員の定着にもつながります。
また、管理職候補の女性社員にメンター制度を設け、スキルアップを図ることもあります。

ワークライフバランスの推進

リモートワークやフレックスタイム制度の導入、産休・育休・有給休暇の取得促進など、ワークライフバランス推進に向けた取り組みをする方法もあります。仕事とプライベートをどちらもバランスよく充実できる環境を整えることで、ライフイベントが発生しやすいタイミングでも離職せずに就労を継続できるでしょう。

男女間賃金格差の是正

男女間の賃金格差を是正するため、同一労働同一賃金を徹底するのも効果的です。また、女性のキャリアアップを支援したり人事評価の基準を統一したりすることで、女性の生涯賃金を上げやすくする方法もあります。

ジェンダー平等に関する啓発活動

ジェンダー平等やダイバーシティに関する啓蒙活動の一環として、社員向けの教育・研修をする方法があります。「ダイバーシティ研修」などを幅広い社員に受けさせることで、自分のなかに合ったステレオタイプに気づくきっかけにもなります。

ハラスメントの防止と啓蒙

ハラスメントの防止と啓蒙に努めるのも、企業の役割とされています。何がハラスメントに当たるのか解説して社員の意識改善を図りつつ、問題が起きたときに相談できる社内ホットラインの構築など、相互に話しやすい環境を作ることが大切です。

●関連プログラム/ダイバーシティ・インクルージョンワークショップ

ジェンダー平等に取り組む企業の成功事例

ジェンダー平等に取り組む企業の成功事例をご紹介します。どのような会社でどのような取り組みがされているか参考にしてみてください。

アクセンチュア株式会社

アクセンチュアでは、フレックスタイム制や時短勤務制度などの導入や包括的な研修プログラムの開催などを通してジェンダー平等に取り組んでいます。現在、取締役会の45%、グローバル経営委員会の26%を女性が占めるまでに至りました。加えて、女性社員の従業員満足度やモチベーション向上につながっています。

参考:ジェンダーダイバーシティ | アクセンチュア

メルカリ

メルカリでは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションをもとに、インクルーシブな組織をつくるために多様な人材採用・育成を積極的に実施しています。女性はもちろん海外人材の管理職登用を進め、管理職における女性比率は23.7%、外国籍比率は28.7%と前年より増加しています。また、女性やLGBTなどのマイノリティを対象にした、エンジニア育成プログラムの実施など社内外での活動を活発に行い、2022年日本企業として初めて、ジェンダー平等に関するグローバル認証「EDGE Assess」を取得しています。

参考:Inclusion & Diversity | 株式会社メルカリ
参考:メルカリ、ジェンダー平等に関するグローバル認証「EDGE Assess」を日本企業として初めて取得

ANA

ANAグループではダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンを経営戦略のひとつとして考え、女性が少ない部門における女性登用や「仕事と育児の両立支援セミナー」の実施などに力を入れています。その他、ジェンダー研修や女性管理職育成プログラムなども独自に実施しており、IATAダイバーシティ&インクルージョンアワードを日本の航空会社のとして初めて受賞しました。

参考:ジェンダー平等に関する取り組み | サステナビリティ | ANAグループ企業情報

まとめ

少しずつ男女共同参画社会ができあがっているとはいえ、日本は世界規模で見るとまだまだジェンダー・ギャップの大きい国となっています。本記事でご紹介したジェンダー平等を実現する企業の取り組み事例も参考にしながら施策の立案・実施を進めることで、男女間の差別や性差に縛られず全ての人に平等な機会が与えられる社会を目指していきましょう。

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