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フィジビリティ・スタディとは?事前調査のメリットや評価のポイント・進め方を解説

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近年のビジネス市場では、急速な技術発展やグローバル化によってニーズが多様化し、将来の予測が非常に難しい「VUCA時代」といわれています。フィジビリティ・スタディは、ビジネスの実現可能性を事前に予測するために行われる調査であり、このVUCA時代において、リスクを正しく評価する手法として確立されています。

この記事では、フィジビリティ・スタディの概要とともに、事前調査のメリットや評価のポイント、具体的な進め方について詳しく解説します。

目次

フィジビリティ・スタディとは

フィジビリティ・スタディは「実現可能性調査」「実行可能性調査」「成立可能性分析」とも呼ばれる手法で、事業計画やプロジェクトが実現可能かどうかを事前に調査するものです。これは、リスクを理解し想定される失敗を未然に防ぐための手法として確立されてきました。

つまり、見切り発車でプロジェクトを開始することや、リスクを無視したまま損失が膨らむ事態を避けるための手法とも言えます。変化が激しく先が読めない時代に特に重要で、プロジェクトの採算性を事前に確認したい場合に非常に有効です。

フィジビリティ・スタディの歴史

フィジビリティ・スタディの歴史は、1993年にアメリカのテネシー川流域開発公社(TVA)によって行われたダム建設プロジェクトから始まります。この河川開発事業は、多額の予算と多くの関係者が関わるため、「失敗できないプロジェクト」として注目を集めました。

プロジェクトのリスクや潜在的なトラブルを事前に可視化するための手法としてフィジビリティ・スタディが評価され、その結果、この手法は現在、大規模な事業だけでなく、より小規模な事業においても広く利用されるようになりました。

フィジビリティ・スタディとPoCの違い

フィジビリティ・スタディと似た用語に「PoC(Proof of Concept)」がありますが、これは「概念実証」を意味します。両者は共にプロジェクトの実現可能性を評価するという点で類似していますが、PoCはプロジェクト発足後に行われるという特徴があります。例えば、システムのテストリリースや試作品の作成を通じて、実際の顧客の反応を確認します。

一方、フィジビリティ・スタディはプロジェクト発足前に実施されることが特徴で、机上での検討が行われます。このため、PoCに先立って実施され、プロジェクトが発足した後に失敗や頓挫するリスクを未然に防ぐ役割を果たします。

フィジビリティ・スタディのメリット

ここでは、フィジビリティ・スタディを行うことのメリットを詳しく解説します。なぜ多くの事業でこの手法が採用されているのか、その理由を深掘りして見ていきましょう。

リスクの軽減

フィジビリティ・スタディは、将来において想定されるリスクを洗い出し大幅に軽減することができます。「見切り発車で始めたプロジェクトが赤字に転じた」「予想外の問題が次々と発生し、プロジェクトが頓挫した」などのリスクを事前に回避しやすく、損失を未然に防ぐ効果があります。

意思決定の質向上

フィジビリティ・スタディの結果は、データをもとにした意思決定に役立つため、個人の勘や直感に頼らない、より組織的で合理的な判断が可能となります。客観的なファクトやデータに基づき判断するため、より精度の高い意思決定を行うことができます。

プロジェクトの方向性明確化

複数のシナリオに基づいてフィジビリティ・スタディを行うことで、最も実現可能性が高く、かつ収益性が期待できる手法を選び取ることができます。これにより、プロジェクトの方向性が明確になり、次に取るべき行動が明らかになります。また、チーム全体の意思統一を図ることができ、リスク軽減以外にも多くのメリットが得られます。

フィジビリティ・スタディの評価ポイント

ここでは、フィジビリティ・スタディの評価ポイントを詳しく解説します。どのような視点から進めるべきか迷っている方に、ぜひ参考にしていただければと思います。

技術面での評価

まず、フィジビリティ・スタディでは技術面の評価が行われます。計画中のプロジェクトが技術的に実現可能かどうか、生産に必要なソリューションや設備、ノウハウ、知識の面から判断します。新しい設備投資や人材の採用が必要な場合は、それにかかるコストや時間も試算に含めます。技術的な要素が確実でなければ、プロジェクトの成功は難しいため、ここでの評価は非常に重要です。

財務面での評価

プロジェクトを実施するために必要な全体コストを可視化し、財務面で無理がないかをシミュレーションします。コストだけでなく、ROI(投資収益率)も計算し、「この投資に見合う価値があるのか」「投資額を回収できるか」といった点も慎重に評価します。財務面での問題があるとプロジェクトの継続が困難になるため、正確なシミュレーションが求められます。

業界・市場面での評価

競合他社の動向や市場の変化、国内外の経済情勢を基に、自社の現状と比較して評価します。また、法規制や最新の技術動向も加味し、プロジェクトをリリースするタイミングが適切かどうかを判断します。「国内では難しいが、海外市場であれば成功の見込みがある」といった市場の選定にも役立つ手法です。

運用面での評価

フィジビリティ・スタディでは、長期的な運用の視点からもプロジェクトを評価します。「リリース後、運用が追いつかない」といった事態を防ぐため、顧客の期待に長期にわたって応えられるかを判断します。例えば、運用部門の人員が不足していないか、ランニングコストが利益を圧迫しないかといった具体的な運用面での評価が重要です。

フィジビリティ・スタディの進め方

ここでは、フィジビリティ・スタディの進め方について詳しく解説します。プロジェクトを成功させるためには、事前にリスクを十分に可視化し、しっかりと準備を整えることが大切です。以下のステップに従って、計画的に進めましょう。

事前リサーチ

まず、フィジビリティ・スタディを始める前に、プロジェクトに必要な情報を徹底的にリサーチします。主に、「技術面」「財務面」「業界・市場面」「運用面」という4つの観点に分けて情報を収集します。情報が多ければ多いほど、後の課題を正確にリストアップできる基盤が作られ、対策の精度も上がります。

課題のリストアップ

次に、リサーチした情報をもとに、自社のプロジェクトと照らし合わせ、明確な課題をリストアップします。課題は「技術面」「財務面」「業界・市場面」「運用面」の4つの分類に分け、それぞれの課題や問題点を洗い出します。この段階で具体的な課題が整理できれば、今後の対策や代替案の検討がしやすくなり、プロジェクトの方向性が明確になります。

打ち手の策定

課題ごとに適切な対策(打ち手)を策定します。課題解決に必要な方法を全てリストアップし、各方法にかかるコスト、必要な人員、所要期間を可視化します。実現可能性が高くかつ効果的な方法を優先的に実行することが重要です。最適な解決策を見つけ出すためには、メリットとデメリットをしっかり比較する必要があります。必要ならば、関係者と十分な議論を重ねて意思決定を進めます。

代替案の検討

理想的な解決策が見つからない場合に備えて、代替案を複数用意しておきます。代替案があることで、プロジェクトの方向性を柔軟に調整し、進行を続けられる場合もあります。また、代替案は、予期しない問題が発生したときにも有効であり、プロジェクトを止める必要がなくなることが多いです。計画段階から複数の選択肢を考えておくことが、成功の鍵となります。

調査結果に対する評価

フィジビリティ・スタディの最終段階として、これまでの調査結果を総合的に評価し、プロジェクトの実現可能性を判断します。技術面、財務面、市場面、運用面から分析を行い、リスクと利益のバランスを考慮します。評価結果に基づき、プロジェクトを予定通り進めるか、計画を修正するか、代替案を採用するか、または中止するかを決定します。最終的な評価結果は、経営陣や関係者に報告され、プロジェクト実施の可否を決定する重要な判断材料となります。

フィジビリティ・スタディの事例

フィジビリティ・スタディの成功事例として、バングラデシュで実施された小規模電力供給プロジェクトがあります。十分な電力が供給されていなかった地域で、太陽光発電と蓄電装置を設置するプロジェクトが提案され、フィジビリティ・スタディによる高い実現可能性が認められた後、実行に移されました。

その結果、電力のなかった地域で生活する低所得者層の利便性が大幅に向上し、地域への大きな貢献を果たす事業として今も評価されています。

まとめ

フィジビリティ・スタディは「実現可能性調査」「実行可能性調査」「成立可能性分析」とも呼ばれる手法です。新規プロジェクトが成功するかどうかを事前に判断したいときに、非常に役立ちます。複数の視点からプロジェクトや自社の置かれた状況を分析すれば、より客観的な意思決定がしやすくなるでしょう。

本記事で紹介したフィジビリティ・スタディの進め方を参考にしつつ、新たなプロジェクトの実現可能性をしっかりと評価してみてはいかがでしょうか。具体的な手順を活用し、プロジェクトを成功へと導きましょう。

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