成長を続けるPR Table~組織の強み、HR市場で存在感を発揮する独自のプロダクト「talentbook」に迫る

近年、人材の価値が大きく見直されています。人材の獲得競争が激化する中で、より自社にマッチした人材、未来に向けた変革を起こせる人材の採用を目指して、企業はさまざまな取り組みを試している状況です。これに伴い、独自のコンセプトを打ち立て、採用市場に参入するケースも増えてきています。

今回、ミライイ編集部ではそうした新進気鋭のスタートアップのなかから、株式会社PR Tableをピックアップ。同社は「働く人のストーリー」を発信するサービス「talentbook(タレントブック)」を運営。PR・広報の手法や考え方を駆使して採用の新たなサービスを確立し、大きな成長を遂げています。以下に、「働く場」としても注目される株式会社PR Tableの組織やプロダクトの強みにフォーカスを当て紹介していきます。

目次

PR Tableの軌跡~創業から難局を乗り越え、組織拡大を続ける

talentbook メディアページ

PR Tableとは

 PR Tableは、どちらもPR業界出身の兄・大堀航氏、弟・海氏が2014年に創業した会社です(現在は共同代表取締役体制で経営)。「働く人の笑顔が”連鎖する”世界をつくる」をビジョンに掲げ、企業(採用力強化)と個人(就活・転職迷子の解消)の課題を実現するキャリア学習プラットフォーム「talentbook」を開発・提供しています。

「talentbook」は記事・動画など採用コンテンツの制作支援に加え、自社サイトや採用チャネルにおける活用支援、リーチ量や滞在時間、アクションデータに基づいたデータ分析も実施し、コンテンツの「つくる・届ける・分析する」課題を解決。現在までに導入実績は累計1200社超となっています。このほか、同社は調査、戦略策定、Web制作、広告運用など、人材採用に関する幅広いサービスを展開し、ワンストップで採用マーケティングを支援しています。

PR Table成長の軌跡

・創業の経緯と想い~新しい広報・PRを自らの手で生み出したい
同社を創業した航氏と海氏は、広報・PRの新しいサービスを自ら創り上げたいという想いを持っていたと話します。互いの思いを語り合い、構想と準備に1~2年。特に世の中に伝えたかったのは「会社のちょっといい話、社員のそれぞれの活躍」とのこと。

PR系企業から事業会社に転職し広報を担当していた航氏は、「プレスリリースをするほどではないが、取り上げたくなる話題は多くある」と感じたようです。確かに、広報として発信できる企業の「ネタ」は限られますが、社員の「ストーリー」にフォーカスすれば、発信の材料は多くあるでしょう。航氏と海氏もこの点に可能性を見出し、何万社にも使ってもらえる、これまでにない新しい広報が形作れると意気込みました。

・著名ベンチャーキャピタルの出資を受け、力強い成長曲線を描く(2014年~2019年)
同社は、2015年に社員ストーリー配信サービス「PR Table」の提供を開始します。しかし、期待していたほどの需要がないという事態に直面しました。営業活動は必ずしも順調とは言えなかったようですが、訪問企業から「採用ツールとして使えるのではないか」とアドバイスを受け、これが転機になったそうです。提案先を広報から採用部門に切り替え、大きく飛躍します。

2016年にはみずほキャピタル、大和企業投資、個人投資家へ第三者割当増資を実施。これまでPR領域への投資はほとんどされていなかったことを鑑みると、同社のビジネスがいかに高く評価されたかがわかるでしょう。この時、同社は六本木へオフィスを移転。2017年にはDGベンチャーズ、みずほキャピタル、大和企業投資、静岡キャピタル、ABCドリームベンチャーズへ第三者割当増資、2018年にもSTRIVE(旧グリーベンチャーズ)、三井住友海上キャピタル、UB Ventures、みずほキャピタルへ第三者割当増資が実施されました。

その後も順調に拡大を続け、同年には渋谷へオフィスを移転したほか、「企業と「個」の新しい関係構築」をテーマに日本最大級のPRカンファレンス「PR3.0」を開催するなど意欲的に事業に取り組んできました。

・成長フェーズに入る中で生じた課題(2020年~2022年)
2020年に「PR Table」は「talentbook」へとリニューアルされました。採用広報向けのツールということを明示し、リブランディングを図ります。一見、事業は右肩上がりに成長している印象を受けますが、必ずしもすべてが順調だったわけではなかったようです。というのも、組織には「ほころび」が生じていたから。組織体制が確立されていないにも関わらず、急激な人材採用をしたことが要因と推察されます。

航氏・海氏は仲間との意思疎通がうまくいかず、2020年のコロナ禍が重なり、大量の退職者が出てしまいました。さらに航氏は2021年に体調を崩し、3カ月ほど休養期間を取ることに。危機的な状況の中、2人は組織の立て直しを図ったのでした。

・組織課題を乗り越え成長スピードを加速させる(2022年以降~現在)
同社では、投資家の助言を受けてビジョン、ミッション、バリューを再定義。このことが一つのきっかけとなり、事業拡大の「勝ち筋」を見つけ、事業は次の成長フェーズへと入っていきます。航氏と海氏は社員へのマネジメントポジションの引継ぎに着手。2023年には1年で組織規模を2倍に拡大し、シリーズDラウンドの資金調達が累計17億円にも達します。同年、権限の移譲とガバナンスの強化を目的に、新たに2人の執行役員を選抜し、社外取締役2人の就任も決定されました。

写真左から共同代表取締役 大堀航氏、執行役員CFO 津田祐実氏、執行役員CRO 石橋知男氏、共同代表取締役 大堀海氏

PR Tableが手掛けるプロダクト「talentbook」とは

「talentbook」とは

改めて同社のサービス「talentbook」を紹介します。「talentbook」は「働く人」から企業の魅力を伝える採用マーケティング支援サービスです。働く人を通じて、不透明になりがちな会社や仕事の「リアル」を伝えています。一般的な社員インタビューではどうしても一部のハイパフォーマーが脚光を浴びがちです。しかし、「talentbook」で取り上げられるのは必ずしもわかりやすい成果を上げた社員ばかりではありません。社内にいる多様な社員の思いに焦点を当てることで、「本当のカルチャー」を表現。その一人ひとりのストーリーが、求職者の興味を引き付ける原動力になると捉えています。同社によれば、一般的な社員紹介と比較し、「感情を引き出す取材」で紡がれたストーリーは、記憶定着度が22倍も⾼いと言います。

最終的に同社が目指しているのは、働く⼈(=タレント)をブランディング(=タレントブランディング®)して、採用力・エンゲージメント力の向上を図ることです。同社の定義するタレントブランディング®とは、「企業に眠る⼈的魅⼒を可視化し、継続的に発信することで、『働く価値のある場』としての評価‧信頼を積み上げ、社内外に好影響を与えていくブランディング⼿法」です。タレントブランディングには「タレント⾃⾝が社内外からのフィードバックをもらうことで、企業の⼈的資本の最⼤化へと繋がる」効果もあると説明しています。

PR Table独自の戦略設計から実行支援のフレーム

さらに、「talentbook」は単なるメディアにとどまらず、企業の情報発信を効率化するCMSの側面もあり、高度なデータ分析までも可能にします。つまり、採用担当者が抱えるコンテンツの「つくる・届ける・分析する」課題を解決するのです。現在、企業規模や職種業界問わず、多くの企業が採用マーケティング・採用ブランディング活動の一環として「talentbook」を活用するまでになっています。

「talentbook」の強みと特長

①人事部の広報パートナーとして「採用マーケティング活動」を支援
「talentbook」は理念や働きがい、キャリアパス、組織文化など採用につながる多彩な情報を発信することができます。また、調査や戦略策定・Web制作・広告運用などコンサル・実行支援としての運用改善型ソリューションも提供。採用における情報発信の課題を解決する、人事部の広報パートナーとなるツールと言えるでしょう。

②情報発信における「リソース」と「デリバリー」を担保
「企画を立てるのが難しい」「ノウハウが不足している」「継続性を保てない」など情報発信(≒PR活動)の悩みが解決されます。

【解決の3つのポイント】
・高品質かつ低価格でコンテンツを量産
独自開発した生成AI×プロ編集者による制作モデルを構築。累計8,000記事を制作したノウハウを蓄積しており、クラウドから必要な項目を入力するだけで、ストーリーの最適な構成を提案する機能が標準搭載されています。

・パートナーメディアで掲載
制作した記事は、「talentbook」をはじめ、テーマに応じて親和性の高いメディアパートナー先でも掲載可能です。ターゲット層へのリーチ拡大に貢献します。

・記事の分析もラクラク
PV・UUは記事別・企業別に計測・分析され、専用画面で情報の到達度を簡単に確認できます。また、カスタマーサクセスが伴走支援するため、成果向上に向けた情報発信のPDCAサイクルを回すことができます。

③競合サービスにない独自性
「talentbook」は働く⼈(=タレント)の広報を通じて、⼈的資本の最⼤化を目指します。社員を主役にしたキャリア学習プラットフォームというコンセプトに振り切っており、常に社員の想いやキャリアがフォーカスされます。企業発信の給与や待遇面での訴求とは異なり、効果的なエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。また、優秀な人材をスカウトするWantedly、自社や商品などの情報を伝えるためのPR TIMES STORY、ユーザーが思い思いに記事を書くnoteなどとは使用の目的が異なっており、差別化が図られています。

成長を支えるPR Tableの「組織としての強み」

PR Tableのビジョン

ビジョン・ミッション・バリューの浸透

同社はビジョン・ミッション・バリューを以下のように定義しています。
ビジョン(創造したい世界):「働く人の笑顔が“連鎖する”世界をつくる」
ミッション(使命):「笑顔が生まれる“きっかけ”を増やす」
バリュー(事業成長に必要な人としてのスタンス):「つよく、やさしく、かっこよく。」

このうち、バリューをさらに見てみましょう。

PR Tableのバリュー

・つよく:成長のために今自分ができること・できないことを認識する。フィードバックを真摯に受け止め、自らの改善点を見極める。そして、毎日0.1%の改善を積み重ねる。

・やさしく:顧客、メンバー、パートナーを成功に導くための傾聴を怠らない。困っていることに気づき、 整理して課題を特定する。そして、課題解決に向けて自発的に行動する。

・かっこよく:過去の前例にとらわれず、成長のためにベターよりも、ベストな選択肢を考え抜く。選択が決まったら即行動し、失敗したらすぐに軌道修正する。

バリューは「事業成長に必要な人としてのスタンス」と言えるものです。同社では全社員の話し合いで定義されたこともあり、バリューが意識された行動が目立つようになったとのこと。社員に笑顔の連鎖が生まれ、一時的に会社を支配していたギスギスした雰囲気も解消されていったと言います。この結果、会社の生産性が上がり、ビジョンの実現に近づいていることが実感されるようになりました。

関連プログラム:ミッション・ビジョン・バリューが浸透するワークショップ|組織・人材開発のHRインスティテュート

フルリモートでも業務は滞りなく行われる

同社はフルリモート制が導入されており、社員は20都府県に在住しています。フルリモートが実現されている背景には「主体性重視」の姿勢があるのでしょう。社員一人ひとりが主体的にキャリアを選択できるよう支援制度も用意。この結果、さまざまな事情で出社勤務ができない優秀な人材の獲得にもつながっています。

共同代表だからこそのメリット

共同代表の航氏と海氏は以下のように役割分担されています。

・航氏:お客様のニーズや声を拾い、ビジネスを作るなど0→1のチャレンジをする役割。

・海氏:組織づくり、仕組みづくりなど1→10を行います。航氏のつくった小さなきっかけを大きく形にしていく役割を担います。

それぞれの強みと得意領域を活かすことで、より強い組織運営が実現されているようです。

さらなる成長を見据えるPR Tableのビジョン

最後にPR Tableが見据えるビジョンについて紹介します。

目指しているのは「talentbook」を誰にとっても当たり前の存在にすること

幅広い企業に導入されている「talentbook」ですが、どちらかと言えば、大手企業が中心です。今後はさらに導入企業の幅を広げ、日本全国の企業が「talentbook」を通じ、それぞれのストーリーを発信している状況を目指しています。

多くの転職希望者の一助となるサービスへ

総務省・労働力調査(2023年)で、国内には転職希望者が約1,000万人いることが明らかになりました。一方、多くの転職希望者は「自分の適性が不明」と、新たなキャリアに進むことを躊躇しているとのデータもあります。このような中、「最も幸せな選択」を実現するための一助となるサービスへと育てていくことを同社は志しています。

10年以内に導入企業を3万社に

事業の目標として、「talentbook」を10年以内に3万社へ導入することを掲げています。転職希望者1,000万人が「talentbook」に何らかの形で触れていることが理想です。目標の実現に向け、社員が一丸となり邁進しています。

協力企業様のご紹介

株式会社PR Table
所在地:〒102-0083 東京都千代田区麹町4-8-1 THE MOCK-UP 麹町312
代表者:大堀 航 / 大堀 海
事業内容:「talentbook」の企画・開発・運営、採用マーケティング支援
企業情報:https://prtable.com/
メディアページ:https://www.talent-book.jp/

代表プロフィール

・大堀 航氏
株式会社PR Table 共同代表取締役
1984年7月生まれ。 中央大学法学部卒業。2008年、大手総合PR会社のオズマピーアールに入社し、IT企業を中心に広報戦略立案・実行業務に従事。2012年、レアジョブに入社し、広報責任者として2014年6月に東証マザーズ上場に貢献。2014年12月、弟の大堀海とPR Tableを創業する。有名ベンチャーキャピタルより累計17億円強の資金調達を完了。

・大堀 海氏
株式会社PR Table 共同代表取締役
1987年10月生まれ。 中央大学法学部卒業。 カフェを運営するベンチャー企業で営業・広報を経験し、2012年にPR支援事業で独立、2015年に事業譲渡。2014年12月にPR Tableを創業。

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