エニアグラムとは?性格の9タイプやビジネス活用方法を紹介
エニアグラムは人間の性格を、考え方や行動の奥に無意識に存在している「動機」ごとに9つに分類する性格タイプ論です。性格タイプの違いを理解することで、自分自身の無意識的な「動機」に気付きやすくなるとともに、自分とは異なる価値観を持つ他者を受け入れられるようになり、他者とのよりよい関係性を構築することにつながります。
この記事では「エニアグラム」を取り上げ、性格タイプごとの動機や特徴、ビジネスへの活用方法についてわかりやすく解説します。
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エニアグラムとは
エニアグラムとは、ギリシャ語で「9つの図」をあらわす言葉で、人間の性格は9つのタイプに分けることができるとしています。
エニアグラムでは人間の性格を「動機」の違いで分類します。ここでいう「動機」とは人の行動の奥にある「無意識」のことをいいます。意思決定をしたり行動を起こしたりするときの要因となるものです。自分と他者の「動機」を知ることで自己理解と他者理解が促進され、さまざまな「違い」を受容できるようになります。
用語解説:「エニアグラム」|組織・人材開発のHRインスティテュート
エニアグラムのタイプ診断をおこなう方法
簡易的なエニアグラムのタイプ診断はウェブ上で無料公開されています。
ここでは日本エニアグラム学会とエニアグラム研究所の診断ツールをご紹介します。
※いずれも簡易的な診断であり、自身がどのタイプであるかの決定は、ワークショップへの参加等を通じ、ご自身で納得して決定いただくことが重要です
日本エニアグラム学会
1989年に発足した特定非営利活動法人です。
エニアグラムを普及する機関として、ワークショップの開催やアドバイザーの育成、企業・学校向けの講演会などをおこなっています。
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エニアグラム研究所[日本]
エニアグラム研究の第一人者であるリソ&ハドソンが主宰する研究所です。
日本ではリソ&ハドソンの資格認定を受けた代表者が窓口となり、講演会やワークショップを開催しています。
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エニアグラムを学習するメリット
エニアグラムを学習するメリットとして以下の点が挙げられます。
自己理解が深まる
エニアグラム学習を通じて、自分自身の性格タイプを把握でき、自分では気づいていなかった動機や価値観が明らかになります。自分の行動のメカニズムを知ることで自己理解が深まり、自身のモチベーションをコントロールしやすくなるメリットがあります。また、自己理解が進むと、自分の特性を活かせる仕事を見つけやすくなります。
他者理解が促進される
エニアグラムの学習を通じて、他者の言動の裏側にある動機や、自身との違いが理解できるようになり、他者理解が促進されます。異なる価値観の相手とも円滑なコミュニケーションを取ることができるようになることで、他者とよりよい関係をつくっていくことができます。
エニアグラムの9つのタイプ
エニアグラムでは人間の性格を以下の9タイプに分類します。ここでは日本エニアグラム学会が定義する各タイプの動機や主な特徴とともに、各タイプを動機づける際のポイントをご紹介します。
各タイプの動機・特徴・動機付けのポイントの表は下記サイト・発行物・書籍を参照し「ミライイ」編集部にて作成いたしました。
参照:エニアグラムについて|日本エニアグラム学会
参照:「エニアグラム9つのプロフィール」 日本エニアグラム学会 発行
参照:「ソニー [TK式] エニアグラムリーダー研修」 武田耕一大和出版 1999年
タイプ1:改革する人
仕事において「公正さと厳しさ」や「信頼度の高さを求めること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 自分なりの基準に則り、正しい間違いのないことをしたい |
特徴 | ・もっとよくできるはずなのに、と自分を責めたり、こうなるべき、と考える。忙しくしている。 ・外見は冷静に見えるが、心の中には怒りを秘めている。ただし怒りを表に出すのはダメ。 ・他の人が休んでいても自分の仕事が終わるまでは休まず働く。仕事ぶりのことを言われるとチクっと言いたくなる。 |
動機づけのポイント | ・一生懸命仕事をしていることを認識すること ・結果的に理にかなっていなくとも、本人は理にかなったことをしたいと思っていることを理解すること ・批判するのではなく、『それは正しくないのではないか』と質問の形で聞くこと |
タイプ2:人を助ける人
仕事において「人間中心、組織の和を優先すること」や「他者の求めに応えること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 人の役に立つことで、愛を得たい |
特徴 | ・情愛深く、困っている人に救いの手を差し伸べ、周りの人々の助けになることに心を砕く。 ・相手に必要とされないと落ち込んだり、感謝されないと怒る。 ・自分の欲求を犠牲にして他の人の面倒を見ようとする。 ・愛の与える代償として、他の人に愛してもらおうとする。 |
動機づけのポイント | ・頻繁にコンタクトをとり、積極的に話をする機会を持つこと ・人の役に立ち、手助けできる場をつくること ・日々の成果を当然のことと思わず、きちんと口に出して感謝すること ・仕事上、タイプ2のメンバーが他人と交わる状況をつくり、長時間一人で仕事をする環境におかないこと ・他人の前でほめられる状況をつくること |
タイプ3:達成する人
仕事において「結果を優先して実利をとること」や「目標に向けチームを引っ張ること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 成果を出して、賞賛を得たい |
特徴 | ・目標達成のために周りを巻き込んでいく。どうしたら一番効率的に結果を出せるかが見える。 ・他人からどう見られているか気になる。スマートな振る舞いをする。 ・目標達成のための手段を選ばない。周りを手駒のように使うこともある。 ・失敗を恐れ、成功しなそうなものには手を出さない。 |
動機づけのポイント | ・業績に対して十分な賞賛を与えること ・仕事だけでなく、人間としての資質を認め、ほめること ・もっとタイプ3のメンバーが成長し、高められる機会を与えること ・タイプ3のメンバーが、日々前進していることを認めること |
タイプ4:個性的な人
仕事において「洗練さとユニークな発想を持つこと」や「個人の才能・感情を理解すること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 自分らしさを表現することで、感動を味わいたい |
特徴 | ・平凡であること、人と同じであることを嫌う。 ・ひとりひとりの個性や雰囲気に気づくことができる。 ・大きなグループには入らない。特別なグループで深いつながりを持ちたい。 ・感動を大切にして芸術などで表現しようとする。 |
動機づけのポイント | ・ユニークな才能を認め、それに感謝すること ・よく理解しようとする態度をとること ・本人が気づいていないプラスの面に気づかせてあげること ・感情を処理するための時間やスペースに配慮すること |
タイプ5:調べる人
仕事において「客観的・理性的に判断すること」や「専門性の高い熟考された計画をもつこと」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 情報を分析し、物事の本質を見極めたい |
特徴 | ・知識・情報をもつことで賢明であろうと心がける。 ・行動を起こす前に熟考し、行動に移すまでに時間がかかるタイプの人々。 ・研究者タイプ。思考を使って情報を重視。実際的でないものも集めてくる。 ・その知識を積極的に披露はしない。傍観者の役割。沈黙していることが多い。 |
動機づけのポイント | ・タイプ5の人の知性を認め、能力や専門性を賞賛すること ・ときにはタイプ5の人と同じ関心をもつようにすること ・独立性を保持するための時間と空間を認めること ・仕事を頼む際には、まず仕事を与え、手段を与え、ガイドラインを与えた後は、自分でやらせること |
タイプ6:忠実な人
仕事において「信頼と協力」や「義務を遂行すること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 責任を果たすことで仲間として認められ、安心したい |
特徴 | ・周りと仲良くしたい。責任感が強い。お互いに支え合う。 ・組織やグループの中で自分が安心して所属できているか?など不安の感情がある。 ・不安に対処するために周りに頼ろうとする。規則・規範がすごく大事。上司にも従順。 ・みんなの中にいると安心する。みんな同じ方向を向いている。 |
動機づけのポイント | ・タイプ6のメンバーと同じ方向に向かっていることを頻繁に確認すること ・明快な指示を与え、明快な規則を与え、明快なフィードバックを頻繁に与えること ・しっかりとサポートすることを理解させること ・過去の成功例を思い出させること ・意思決定については、放任も押しつけもせず、本人の意見を確認することを通して決定させること |
タイプ7:熱中する人
仕事において「楽観と熱意」や「新しい事柄に対して活気づくこと」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | いろいろな可能性に挑戦して、人生を楽しみ幸せでいたい |
特徴 | ・万事にプラス思考で楽しいことを見出す能力がある。 ・常に楽しい計画を立て、広く浅く何にでも好奇心を持つ。 ・人生を明るく楽しく過ごしたい。夢を追うのが大好き。 ・苦しみ、つらさをできるだけ回避しようとする。何かに熱中することで和らげようとする。 |
動機づけのポイント | ・任せた仕事が非常に刺激的であることをアピールすること ・多くの人と会う機会を与えること ・一つのことでうまくいかなかったときは、別の場を設けてあげて、同じ事柄で長く落ち込ませないようにすること ・タイプ7のメンバーの喜び、熱意、アイデアを他人と分かち合える場を与えること ・言いたいことが言える環境をつくること |
タイプ8:挑戦する人
仕事において「主張し、結果責任を取ること」や「影響力を行使すること」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 自分の影響力を行使して、存在を感じていたい |
特徴 | ・自己主張が強い。第一人者であることを志向する。 ・他人に頼らず、正しいと思ったことを進めていく。 ・自信が自然と周囲に伝わる。 ・弱い人を助けるが、自分に挑む人は排除する。 ・自分の弱さを見せたがらない。 |
動機づけのポイント | ・意思決定の権限を与えあまり細々と指示をしないこと ・独創的でチャレンジングな仕事を与えること ・話をする時には、完結かつ直接的に話すこと ・成果やリーダーシップを賞賛すること |
タイプ9:平和をもたらす人
仕事において「ゆったりとした姿勢と傾聴」や「ことを平穏無事に運ぶこと」に関心が向きやすい傾向があります。
項目 | 内容 |
動機 | 他者と融和することで、平和な気持ちでいたい |
特徴 | ・内面の静けさを保っていたい。葛藤や不安・不快を解消したい。避けていったりする。 ・忙しくすることもあるが、内面は落ち着いている。 ・スロースターターだが、一歩動き出せば大きな力を発揮する。 ・他の人に対しても価値判断をしない。いろんな人と一緒にいることができる。 |
動機づけのポイント | ・良く話し、耳を傾け、自分がわかってもらっていると感じることのできる状況をつくる ・自分の考えを表明しても葛藤や闘争は生じないことを理解させること ・自分自身では気づいていないよい資質を指摘してあげること ・変化を求めるときには、忍耐強く理解を求めること ・賞賛するときには、正面から仰々しくやるよりも、第三者を通じて耳に入る方法をとること |
エニアグラムのビジネスへの活用
エニアグラムによるタイプ別の特性理解は人材マネジメントや組織マネジメントに活用できます。
人材マネジメント
エニアグラムを用いて社員一人ひとりの性格タイプを把握することで、個人の動機や特性に合わせた関わり方(マネジメント・コミュニケーション)が可能となります。また、エニアグラムの内容理解を通じて自分のタイプの特性を知ることで、社員自ら主体性を発揮しやすくなる効果も期待できます。
組織マネジメント
互いの性格タイプにおける考え方や行動、その裏側にある価値観等を理解し合うことは、チームビルディングにも有効です。エニアグラムを活用すると、表面上の言動の裏側にある「動機」が明らかになり、他者理解が促進されます。自分と相手との違いを認識して相互理解が深まると、円滑なコミュニケーションが取れるようになり、良好な関係性をつくることができます。
他の特性診断・理論
エニアグラム以外にも、自己理解や他者理解を促すツールがあります。ここでは、他の特性診断・理論を以下に紹介します。
クリフトンストレングス(ストレングスファインダー)
クリフトンストレングス(ストレングスファインダー)とは、34の資質から自身の才能・強みを知るアセスメントツールです。ここでいう「才能」とは“自然に繰り返される思考、感情または行動のパターン”を意味し、それを強みとして発揮するには「投資」が必要とされています。
関連記事:クリフトンストレングス(ストレングスファインダー)とは?メリットや資質を紹介
DiSC
DiSCとは、個人の思考・行動パターンを4つのタイプに分けるアセスメントツールです。相手の思考のクセを知ることで、個々に適したコミュニケーションを取れるようになり、相互理解が深まります。
まとめ
エニアグラムとは、人間の性格を、考え方や行動の奥に無意識に存在している「動機」ごとに9つのタイプに分類する性格タイプ論です。エニアグラムの学習を行うと、自分の無意識下にある性格タイプ別の「動機」に気づき、自己理解が深まります。また、自分と他者の特性の違いを知ることで、コミュニケーションが取れるようになり、チームワークの向上につながります。
HRインスティテュートが提供する「エニアグラム体験ワークショップ」では、実際に簡易なエニアグラム診断を受けていただき、自分の言動の裏側にある「動機」に気づくためのヒントをお伝えしていきます。チーム内の相互理解や人間関係に課題を感じている企業担当者様は、以下のリンク先より本プログラムの詳細をご確認ください。
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