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エフェクチュエーションとは?5つの原則と実践方法をわかりやすく解説

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先行きが不透明なVUCA時代に注目が高まっている「エフェクチュエーション」。成功した起業家たちに共通する思考様式のことで、彼らは従来とは異なるアプローチをおこない、望ましい結果を創り出していました。

この記事では「エフェクチュエーション」を取り上げ、優れた起業家が実践する5つの原則やトレーニング方法についてわかりやすく解説します。

目次

エフェクチュエーションとは

エフェクチュエーションとは、優れた起業家たちに共通する考え方や行動パターンを体系化した論理のことです。アメリカのバージニア大学で教授を務めるサラス・サラスバシー氏が発見・提唱しました。

従来の経営学では情報収集・分析から未来を予測するのが合理的なアプローチ方法とされていましたが、成功している起業家たちは「手持ちの手段」にフォーカスを当て、今の自分に何ができるかという視点で物事を考えていることがわかりました。不確実性の高い状況において、未来を「予測」するよりも自分で「コントロール」して対処するというのが、優れた起業家に見られる共通のアプローチ方法だったのです。

エフェクチュエーションとコーゼーションの違い

コーゼーションとは、目標から逆算して達成のための手段を考えるアプローチのことです。未来を予測して目標を設定し、その目標を達成するには何をすべきか考え、必要な手段を検討していきます。一方、エフェクチュエーションは手持ちの手段を活用し、自分でコントロールしながら新たな未来を創造していくアプローチです。つまり、コーゼーションは目標設定型アプローチ、エフェクチュエーションは「不確実性」に対処するアプローチであると言えます。

エフェクチュエーションが注目されている理由

エフェクチュエーションが注目される理由として、変化の激しいVUCA時代では従来の方法が通用しなくなってきたことが挙げられます。目標設定型のコーゼーションが有効となるのは、最初から目標が明確化されており、かつ分析から未来を予測できるケースです。移り変わりが激しく、将来に何が起こるか予測しづらい現代において、目標設定型のアプローチだけでは限界が来ているといえます。このような時流があって、不確実な未来を予測するよりも自らの資源を活用して将来をコントロールするエフェクチュエーションが注目されるようになったのです。

エフェクチュエーション3つの資源

エフェクチュエーションには3つの資源があります。まずはこれらを確認し、自分がすでに持っている手段を明らかにしていきます。

私は誰か

自分のアイデンティティを資源とする考え方です。
自分自身の属性や能力、個性、価値観などを指します。自分がどのような人物で、どのような強みを持っているかを考え、それを資源として活用できる方法を検討します。

私は何を知っているか

自分の知識を資源とする考え方です。
各人が持っている知識や経験、スキルはそれぞれ異なります。これまでの経験を振り返り、自分が培ってきた知識や専門性を活用できる方法を検討します。

私は誰を知っているか

自分の人脈を資源とする考え方です。
家族や知人、自分が頼れる人やアプローチできる人など、自分自身の社会的ネットワークを洗い出し、目的を達成するために他者が持つ手段を活用できるか検討します。

エフェクチュエーション5つの原則

エフェクチュエーションは以下の5つの原則から構成されています。

手中の鳥の原則(Bird in Hand Principle)

今、手元にあるものを明確にし、それを活かして何ができるか考えることです。
エフェクチュエーションの資源である「私は誰か(アイデンティティ)」「私は何を知っているか(知識・経験)」「私は誰を知っているか(人脈)」について考え、すでに自分の手中にある既存の手段を見いだし、それを最大限に活用します。目的の達成に向けて新たなアイデアや方法を模索するのではなく、自分の特性や知識、社会的ネットワークなどを用いて、新しいチャンスを生み出すという原則です。

許容可能な損失の原則(Affordable Loss Principle)

失敗しても許容できる損失をあらかじめ決めておくことです。
コーゼーションではどのくらいのリターンが期待できるかを考えて投資をおこないますが、エフェクチュエーションにおいては「うまくいかなかった場合」を想定し、どのくらいの損失であれば許容できるかを考えます。

一般的にリターンとリスクは表裏一体の関係にあり、リターンが大きいものほどリスクも大きくなる傾向にあります。優れた起業家たちはこれを理解しており、はじめから大きなリターンをねらうのではなく、許容できるリスクの範囲内で小さくスタートします。リスクを最小限に抑えるために「超えてはいけない損失のライン」を決めておくと、仮に失敗しても致命傷とはならず、学習しながら次のチャンスを探ることができます。

クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt Principle)

さまざまなパートナーと協力・一体となって価値を生み出すことです。
色や形、大きさの異なる布を縫い合わせて作る1枚の布を「クレイジーキルト」といいます。競合を予測して市場の機会と脅威を探るコーゼーションとは異なり、エフェクチュエーションではあらゆるステークホルダーはもちろん、時には競合企業さえもパートナーと捉え、一丸となってゴールを目指せるような良好な関係性を築きます。これにより、パートナーが持っている手段も「手持ちの手段」に加わり、新たな価値の創造へとつなげることができます。

レモネードの原則(Lemonade Principle)

逆境や不運な事態に陥っても、それをチャンスと捉えて新たな創造につなげることです。
これはアメリカのことわざ「when the life gives you lemons, make lemonade」(レモンを与えられたら、レモネードを作れ)に由来する原則で、粗悪品であっても工夫を凝らせば新たな価値となることを意味します。物事が思うように進まないとき、優れた起業家たちはそれを否定せずに学習機会と捉え、よりよい状況に転換していこうとするポジティブな思考を持っています。

パイロットの原則(Pilot in the Plane Principle)

未来は自ら作るものと考え、自分ができることに集中することです。
常に状況を把握し臨機応変に対応するパイロットに由来する法則であり、未来は予測するものではなく、自分たちでコントロールしながら創造していくものと考えます。不確実性の高い状況においては、先回りしてあれこれ準備するよりも、その時々に応じて柔軟に対応していくほうが望ましい結果につながるという考え方です。

エフェクチュエーションの実践方法

エフェクチュエーションを身につけるためのトレーニング方法をご紹介します。

行動を起こす

エフェクチュエーションを身につけるには「行動を起こす」ことが大切です。まずは小さく行動し、その結果として得られた反応を参考にしながら、さらに行動を起こします。頭の中で考えるよりもまずは動いてみる、そしてフィードバックを得ながら行動を繰り返すことで手持ちの手段の精度が上がり、どんどん使えるものになっていきます。

アスキングを磨く

アスキングとは「尋ねること」「求めること」を意味する言葉で、エフェクチュエーションにおいては「協力を得るための交渉」を指します。目的の達成に向けて必要な協力を得るために、他者を巻き込む力ともいえるでしょう。実践を繰り返すことで身につくスキルであり、アスキングが上達すると他者との良好な関係性を維持しつつ、自分が求める協力を得られるようになります。

アイデンティティを共有する

事業を拡大していくためには、アスキングを磨くと同時に、自分の協力者たちとアイデンティティを共有することも重要です。自分のアイデンティティを可視化し、ビジネスパートナーたちと共有することで、事業の方向性にブレが生じなくなります。そして、目指すべき目標に向かってともに突き進むことができます。

まとめ

エフェクチュエーションとは、成功した起業家たちに共通する思考・行動パターンを体系化した論理です。将来の予測が困難なVUCA時代では、目標を設定してから手段を考える従来のアプローチ方法では限界が来ており、手持ちの手段を活用しながら新たな未来を創っていくエフェクチュエーションに注目が集まっています。

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監修者
稲垣 一郎
アメリカ大学留学を経て関西学院大学卒業後、アーサーアンダーセン/朝日監査法人、コンサルティング部に入社。事業会社において新規事業立ち上げ等を経験後、HRインスティテュートに参画。事業戦略の立案、組織活性化のための仕組み/制度、組織カルチャーづくりなどを得意とする。中京大学非常勤講師。内部監査士、Global Mindset認定コーチ。
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