スキルベース組織とは?定義や注目される理由を解説

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欧米の一部企業で導入が進んでいる「スキルベース組織」。職務を基準とするジョブ型とは異なり、社員個人のスキルを重視した人材マネジメントモデルを指します。スキルベース組織を取り入れることで、企業はどのような効果を期待できるのでしょうか。

この記事では「スキルベース組織」を取り上げ、スキルの定義や注目される理由、導入による効果についてわかりやすく解説します。

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目次

スキルベース組織とは

スキルベース組織とは、社員一人ひとりのスキルを基準に成り立つ組織形態のことです。スキルデータを構築し、個人のスキルを軸に人材の採用・配置・教育・評価などの人材マネジメントをおこないます。欧米ではこれまで主流だったジョブ型の人材マネジメントに代わり、一部の企業でスキルベース組織の導入が進められています。

ジョブ型雇用との違い

ジョブ型雇用とは、企業が職務内容を明確に定義し、それを遂行できる人材と雇用契約を結ぶ採用方式のことです。先に職務(=ジョブ)を決めておき、その業務遂行に必要なスキルを持つ人材を当てはめることで、企業が求める職務や役割に適したスキル・経験を持つ人材を雇用することができます。

一方、スキルベース組織では職務に固定されたスキル・経験の有無に関わらず、あくまで社員一人ひとりのスキルに基づいた意思決定をおこないます。ジョブ(=職務)をタスク(=作業)レベルまで細分化し、社員の持つスキルとマッチングさせることで、より適切な役割分担で業務を遂行できるようになります。

関連記事:ジョブ型雇用とは?意味やメンバーシップ型の違い、企業事例を紹介

スキルの定義

スキルベース組織における「スキル」とは、個人の保有するスキル・能力(コンピテンシー)全般を指します。業務を遂行するためには専門的な知識・技術だけでなく、課題解決力やコミュニケーション能力、リーダーシップ、時間管理スキルなどさまざまな能力が求められます。また、物事を体系的に整理して考える論理的思考力(ロジカルシンキング)や新しい環境にもスムーズに適合できる柔軟性なども必要なスキルです。また、広義のスキルで捉えると個人の強みをストレングスアセスメント等で把握することも有効です。

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つまり、スキルベース組織の「スキル」は個人の資質や特性なども含まれる幅広い概念であり、ジョブ(=職務)によって標準化されたスキルとは異なる意味を持ちます。職務や役割を超えて、社員を「多彩なスキルを持つ働く個人」と捉えるのが特徴です。

スキルベース組織が注目されている理由

欧米ではジョブ型雇用が主流であるものの、実態は多くの社員が「ジョブ」を超えた仕事をおこなっています。また、コロナ禍にあったように、急速な環境変化に企業が適応していくために柔軟な仕事の進め方が求められるようになりました。

デロイトトーマツの調査レポートでは、ジョブに基づく人材マネジメントが組織能力の低下を引き起こしかねず、社員への適切なキャリアの提供が損なわれることを指摘しています。変化の激しい時代に組織の可能性を伸ばすものとして、標準化された「ジョブ」よりも社員個人の「スキル」に焦点を当てた「スキルベース組織」が注目されているのです。

参考:スキルベース組織―新たな仕事と労働者のモデル|デロイトトーマツ

スキルベース組織の期待できる効果

スキルベース組織の導入によって以下のような効果が期待できます。

人材不足の解消

学歴や職務経験を求める一般的な採用方式とは異なり、スキルベース採用で重視するのは個人の持つ能力や資質です。はじめに学歴や経験でふるい落とさないことで、従来の方法よりも候補者数が増加し、自社にマッチした人材を確保しやすくなります。これにより、仕事のミスマッチの防止とともに定着率が向上し、ひいては人材不足の解消につながることが期待できます。また、はじめからスキルを基準に候補者を見極めることでスピーディーな採用活動が可能となり、採用に係る時間やコストを削減できるメリットもあります。

業務効率・生産性の向上

スキルベース組織では、社員一人ひとりのスキルを見える化し、業務に必要なスキルを持つ人材を配置します。これにより適材適所な配置が実現するとともに、即戦力としての活躍も期待できるため、業務効率と生産性の向上に寄与する可能性が高いでしょう。また、すでにスキルを有する社員を置くことで、業務遂行のための研修・教育を最短で完了できるメリットもあります。

スキル開発の促進

スキルベース組織を導入すると、需要に対して不足しているスキルが明確になり、スキル開発の促進につながります。個人のスキルを中心に据えた組織形態により、ジョブ(=職務)にとらわれなくなった社員は、新しいことにもチャレンジしやすくなります。社員自身が仕事の目標を見つけ、自らのスキルを把握し、スキルアップに努めることができます。

従業員エンゲージメントの向上

スキルベース組織において、社員は自らの強みを仕事で発揮しながら、不足したスキルの習得に励むことができます。企業が一人ひとりのスキルを把握し、それぞれのスキルを活かせる業務や役割を与えれば、社員は自分に適した環境のなかで自らの能力を最大限に発揮できるようになるでしょう。結果的に社員のエンゲージメントが高まり、定着率の向上や離職率の低下にもつながっていきます。

ダイバーシティ(多様性)の実現

ダイバーシティ(多様性)とは「ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在すること」を意味する言葉です。スキルベース組織では、学歴や経験よりも個人のスキルを重視します。これにより、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まるため、組織の多様性が高まります。

また、多様性のある組織ではイノベーションが創出されやすく、ビジネス環境の変化も柔軟に受け入れることができます。変化に強い組織として、高い競争力を維持できるでしょう。

関連記事:多様性(ダイバーシティ)とは?SDGsで求められるダイバーシティや企業の取組み事例を紹介

テクノロジー活用の重要性

スキルベース組織の強化にはテクノロジーの活用が不可欠です。たとえば、経営戦略上の必要なスキルの特定や社員の保有スキルの一元化など、広範にわたってテクノロジーを活用することになります。また、仕事とスキルのマッチングやスキルの評価などにはAI(人工知能)を活用します。

スキルベース組織では個人のスキルを基準に人材マネジメントをおこなうため、構築するスキルデータは有効なものでなければなりません。しかし、こうしたテクノロジーを効果的に活用し、社員個人のスキルを十分に把握できている企業は少ないのが現実です。

スキルベース組織における懸念点

企業にとってさまざまな効果が期待できるスキルベース組織ですが、同時に以下のような懸念点があることも理解しておく必要があります。

スキルのみに着目したマネジメント

スキルベース組織は個人のスキルに焦点を当てたマネジメントモデルですが、スキルのみに着目した人材マネジメントはデメリットもあります。スキルベース組織における「スキル」は個人の資質や特性も含み、広範にわたる概念といえます。ジョブ(=職務)よりもスキルを重視する組織形態ではあるものの、社員が持っているさまざまな側面にも着目し、一個人に基づいた人材マネジメントをおこなうことが重要です。

データの取扱いとAIの使用

デロイトトーマツの調査レポートによると、自らのデータが共有されることにネガティブな感情を持つ労働者は少なく、自分にメリットがあるなら前向きに受け入れる傾向にあります。しかし、企業がスキルなどの個人データを収集する場合は、それが適切に扱われるという信頼を得なければなりません。データの収集方法や活用方法、その効果やメリットについて、あらかじめ社員に共有しておく必要があるでしょう。また、マッチングや評価をおこなうAIに偏りがないか、企業が責任を持って監視していくことも重要です。

参考:スキルベース組織―新たな仕事と労働者のモデル|デロイトトーマツ

まとめ

スキルベース組織とは、個人のスキルを基準とする人材マネジメントモデルのことです。ここでいう「スキル」は業務の専門知識や技術だけではなく、働く人の性格や資質なども含む多様な概念とされています。ジョブ(=職務)に固定されたスキルや経験の有無に関わらず、社員を「働く一個人」と捉えてさまざまな側面に着目するのが特徴です。

スキルベース組織の導入により、人材不足の解消やスキル開発の促進、ダイバーシティの実現などの効果が期待できます。また、その業務に必要なスキルを持つ即戦力の人材を配置するため、業務効率や生産性の向上にもつながります。一方で、社員のスキルのみに着目すると、その人が持つ他の優れた側面を見落とすおそれがあります。あくまで「一個人」と見て、スキル以外の側面も人材マネジメントに活かしていくことが重要です。

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