ポジティブフィードバックとは?実践するメリットと注意点を解説
人材育成においてフィードバックをおこなうことは重要なプロセスであり、社員の自発的な行動やさらなる成長を促進できます。しかし、適切に実施できなければ、かえって社員のモチベーションを低下させることにもなりかねません。そこで、モチベーションをアップさせるフィードバック手法として注目したいのが、相手のよい面に着目する「ポジティブフィードバック」です。
この記事では、ポジティブフィードバックとは何か?また、ポジティブフィードバックを実践するメリットや注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。
ポジティブフィードバックとは?
ポジティブフィードバックとは、相手(被評価者、プロジェクトメンバー、同僚など)のよい面を見つけ出し、肯定的な表現で指摘するフィードバック手法をいいます。
ポジティブとは「前向き」「肯定的」などの意味を持つ心理学の用語です。ポジティブフィードバックは相手のモチベーションを高め、強みや長所を伸ばすのに有効な手法とされています。ただし、ポジティブといっても単に褒めるだけでなく、相手の存在を承認するような言葉かけをおこなうことが重要です。
ネガティブフィードバックとの違い
相手の失敗や問題点に着目し、否定的な表現で指摘するフィードバックの手法が「ネガティブフィードバック」です。相手のよい面に着目するポジティブフィードバックとは対照的といえます。
ネガティブフィードバックは、相手の欠点を指摘することで気づきや成長を促していく手法とされています。ところが、ネガティブフィードバックでは改善点にフォーカスすることが多く、伝え方によっては相手が「批判されている」「ダメ出しされている」と感じてしまい、モチベーションの低下を招いてしまうケースがあります。この点も、ポジティブフィードバックがモチベーションアップに主眼を置いているため対照的です。
ポジティブフィードバックを実践するメリット
ポジティブフィードバックを実践するメリットとして以下が挙げられます。
メリット①:強みや長所をさらに伸ばせる
相手はポジティブフィードバックを通じて、自分では気づけなかった自らの強みや長所を知ることができます。自分のよい面をあらためて自覚し、その強みや長所を伸ばしていくことで、さらなる成長につながります。
メリット②:仕事へのモチベーションが向上する
ポジティブな言葉かけは相手の意欲を向上させる効果があります。業務に対するモチベーションが高まると、組織の目標達成に向けて自ら積極的に動けるようになります。また、社員のモチベーションを向上させる施策は人材流出を防ぐことにつながり、離職率の低下や採用・育成コストの削減も期待できるでしょう。
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メリット③: 信頼関係が構築される
ポジティブフィードバックでは、相手が一方的に否定されることはありません。改善点がある場合も、相手のよい面を褒めてから伝えるのがポイントです。このようなポジティブなコミュニケーションを重ねていくと、上司と部下との間で信頼関係が生まれ、良好な関係性を築くことができます。両者に信頼関係があれば、トラブルが起きた際にも部下から上司に報告を上げやすくなり、事態が悪化する前に適切な対応がとりやすくなります。
メリット④:心理的安全性が高まる
心理的安全性とは、組織のなかで誰もが安心して自分の意見を表現できる状態のことです。ポジティブフィードバックをおこなうと、相手が「自分のよい面を評価してくれている」と感じ、承認欲求が充足されます。そして、組織内のコミュニケーションが円滑化し、自分の発言が相手から拒絶されることがないという安心感も生まれます。これは心理的安全性の確保につながり、相手が自身のパフォーマンスを発揮しやすくなります。
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ポジティブフィードバックを実践するためのステップ
ポジティブフィードバックを実践するには以下のステップを要します。
ステップ①:目標の設定
まずは将来に向けた目標を設定します。ここで大切なのは本音で現状を分析し、実現可能な目標を立てることです。そのためには上司と部下が1対1で面談する1on1ミーティングなどを取り入れ、現時点での相手の気持ちや考えを丁寧に聞き取る必要があります。フィードバックを効果的に実施するためにも、相手の目標を常に確認しながら進めるのが望ましいでしょう。
ステップ②:プロセスのなかでよかった点を指摘
目標達成までのプロセスのなかで、どの行動がプラスに作用したのかを指摘します。一連の行動をできるだけ細かく分析し、どの行動がどのような影響を与えたか、具体的に示すことが重要です。
ステップ③:今後のビジョンの提示
今後どのような方向性に進むべきかビジョンを示します。次回までに取り組むべきことを設定する際は「〇日までに、〇〇を完了する」といった形で明確な期限を定め、具体的な行動レベルで内容を決めておきます。このとき、相手が今後のビジョンをイメージしやすいよう、定量的な目標を設定することも有効です。
ポジティブフィードバックを実践する際の注意点
ポジティブフィードバックを実施する際に注意すべきポイントを以下にまとめました。
注意点①:明確な根拠に基づいた指摘をする
ポジティブフィードバックでは相手のよい面を褒めることが中心となります。しかし、根拠に欠ける褒め方をしても相手は納得できず、場合によっては不信感につながるおそれもあります。
相手を褒める場合は明確な根拠に基づき、客観的な視点で指摘することが重要です。どの行動に着目し、どんな根拠に基づくのかを明確に伝える必要があります。このとき、客観的な数値に基づいた根拠を示せると、より説得力を高めることができます。
注意点②:時間を空けない
ポジティブフィードバックを実施するタイミングは、フィードバックをおこなうべき事象が発生した直後がベストです。フィードバックのタイミングが遅れると、そのときの状況の記憶が希薄となってしまうからです。即時におこなうことで、相手もフィードバック後のモチベーショを維持しやすくなります。
なるべく時間を空けずに実施するのが望ましいですが、どうしても難しい場合は隔週や月1回など、定期的にフィードバックをおこなう機会をあらかじめ設けておくことも有効です。
注意点③:相手に対して期待を持つ
心理学上、他者から期待されると成果が出やすくなり、他者から期待を得られないと成果が出にくくなるといいます。これらの現象について、前者は「ピグマリオン効果」、後者は「ゴーレム効果」と呼ばれています。
この2つの効果を理解すれば、相手に対して期待を持つことの重要性を理解できるでしょう。ポジティブフィードバックをおこなう際は、相手に対して大きな期待を持っている旨を伝えることで、相手の成長につながりやすくなります。
ポジティブフィードバックで活用できるフレームワーク
フィードバックを実施する際は「SBI型」「サンドイッチ型」と呼ばれるフレームワークを用いるのがおすすめです。これらのフレームワークを活用すると、効率的にポジティブフィードバックを実施することができます。
SBI型
SBI型とは、フィードバックする内容の具体的な状況(Situation)を説明したうえで、相手がとった行動(Behavior)をピックアップし、その行動による影響(Impact)を伝える手法です。SBI型を用いると、相手の行動がどのような結果につながったのか、事実に基づき感情に邪魔されることなく伝えられます。これにより、相手がフィードバックの内容を受け入れやすくなります。
サンドイッチ型
サンドイッチ型とは、ポジティブなフィードバックの間にネガティブな内容を挟んで指摘する手法です。具体的には、冒頭でポジティブフィードバックをおこなった後に、改善すべき修正点を伝え、再度ポジティブフィードバックを繰り返します。ポジティブな内容で始まり、ポジティブな内容で終わるため、相手のモチベーションを維持しやすいというメリットがあります。
まとめ
ポジティブフィードバックとは、相手の長所や強みに着目し、前向きな言葉をかけて相手の成長を促すフィードバック手法です。本記事で取り上げたステップや注意点を意識すれば、効果的なポジティブフィードバックを実施できるでしょう。
ポジティブフィードバックは社員一人ひとりの強みを伸ばす人材育成手法ですが、これと同程度に有効な手法として「ストレングスワークショップ」があります。HRインスティテュートで提供するプログラムを受講すれば、客観的な視点で自分自身やチームメンバーのストレングス(強み)を理解し、組織全体で活用していく方法を習得できます。
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