ミッションを実現し、バリューを体現する組織の創り方~世界で活躍する人を増やすプログリットの経営哲学(後編)

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2019年にミッション・バリューを刷新し、成長を続けてきたプログリット。より“戦う集団”であるために、その浸透に取り組んできた。前編では、ミッション・バリューの背景にある経営やサービスへの想い、人材育成やサービスレベル向上に向けて工夫していることについてインタビューを行った。後編では引き続き、株式会社プログリット 代表取締役社長 岡田祥吾氏に、ミッション・バリューの体現に向けた文化醸成の具体的な取り組みについてお話を伺った。

・前編の内容はこちら
ミッションを実現し、バリューを体現する組織の創り方~世界で活躍する人を増やすプログリットの経営哲学(前編)

目次

まずはトップが誰より高い目標を掲げ、組織変革に挑む

三坂:2019年に社名・ミッション・バリューを刷新し、大胆なリブランディングに取り組んだプログリットさんですが、ミッション・バリューを刷新する上で、岡田さんがベンチマークしていた企業や組織はありますか。

岡田氏:特定の企業に倣ったということはありませんでしたが、変革のイメージは「サークルから部活へ」でした。

三坂:それは分かりやすいですね!

岡田氏:私自身、高校まで野球部でした。練習は厳しかったのですが、それ以上に楽しかった思い出があります。大学進学後はサークルに入りました。サークルは楽でしたが、結局面白くなくなり、辞めてしまいました。そういった私自身の経験も踏まえて、「きついけれど、面白い組織をつくろう」と社員に伝えたんです。リブランディング以降、徐々に戦う集団には近付いていますが、私としては道半ば。「まだ緩いな」と思うところがあるので、もっと厳しい環境に身を置く必要があると思っています。

三坂:「きつくする」ために、目標を高くするというアプローチがあります。高い目標を掲げて、全員で頑張っていこうというようなこともしていますか。

岡田氏:バリューの「FIVE GRIT」のひとつに、まさに「Go Higher – 高い目標を掲げよう」というものがあります。それでも、まだまだこれが当社の強みになっているとは感じません。私自身が高い目標を掲げるだけではなく、社員全員がそれをできなければ意味がないと思います。今後底上げしていくために、時間をかけて取り組んでいこうとしています。やはり、新しい文化を醸成していくことは、一朝一夕では成し遂げられません。そこは何年かかけても、基準を上げていきたいです。

設楽:高い目標を、当たり前のように掲げ続けることができたら組織は大きく変わるのではと私も感じています。

岡田氏:本田圭佑さんは「ワールドカップで優勝する」と言い切っていらっしゃいました。それは突拍子もない目標を掲げているとは思っていなくて、おそらく彼は当たり前だと思っていたはずです。彼のように、高い目標を掲げること自体、常識になるレベルまで引き上げていきたいと思っています。なぜなら、スピード感と高い目標がなければ、当社のような小さいベンチャーは勝っていけないからです。だからこそ、今は私自身が誰より高い目標を掲げて、常識レベルを引き上げようとしています。

三坂:岡田さんにとって、「勝つ」とはどういうことですか。

岡田氏:まずはナンバーワンになることですね。そうならなければ、何も変えられないと思います。例えば、英語業界でいくら私たちが色々言ったとしても、耳を傾けてもらえません。政治の世界でも、与党になるからこそ変えていくことができます。

「世界で自由に活躍できる人を増やす」ミッションを実現するには

三坂:経営者の方とお話しをしていると、よく“Will”の話題になります。まずWillがあって起業しているのか、あるいは起業してからWillが芽生えてきているのか、岡田さんはどちらのタイプですか。

岡田氏:どちらもありますね。もちろんWillがまずあって起業しているのですが、変化していきます。

三坂:どう変わってきていますか。

岡田氏:抽象度が上がっています。創業前に考えていたことは「世の中にある英語スクールでは、英語力が上がらない。だから自分の手でいいサービスをつくろう。そうすれば、1人でも多くの日本人を救えるのではないか」ということでした。そのWillで会社を立ち上げて走ってきたのですが、会社の規模が大きくなるにつれて、いいサービスを作り続けることはもちろん、「業界を変えていこう」「この業界で働く人の待遇を変えていこう」「日本全体を変えていこう」と、抽象度が上がってきたのです。それは今でも発展途上で、今後も変わっていくのではないかと思います。

もうひとつは、責任感ですね。私たちがやっていることは、これまで英語業界を育ててきた先駆者の方々に、噛みつくようなことです。それならば、本物にならなければなりません。ただ先駆者を倒すのではなく、本当に世の中のためになることをしなければというマインドセットに変わってきています。

設楽:改めて、今の岡田さんに見えているのはどんな世界ですか。

岡田氏:日本は言語の壁で守られている反面、言語の壁があるからこそ世界に出ることができていないので、それをボーダーレスにしていきたいと思っています。多くの日本企業が海外展開をしていますが、まだまだ英語に関するイシューが大きいです。日本企業の底力はとても大きいので、そこを解決したら、日本はかなり変わる可能性があると思います。

設楽:まさにプログリットさんが掲げる、「世界で自由に活躍できる人を増やす」ミッションですね。

三坂:「世界で自由に活躍できる人を増やす」というミッション、「英語」というワードが入っていませんが、英語以外の事業ドメインを広げていくことも見据えているのですか。

岡田氏:見据えています。「世界で自由に活躍できる人を増やす」とき、最も大きなイシューは「英語」であると捉えています。だからまず、英語の事業を展開しているのです。しかし、イシューは他にもたくさんあります。英語ができるだけで欧米人と渡り合えるかというと、決してそうではありませんよね。英語はもちろん重要ですが、それ以外のイシューにも取り組んでいきたいです。

ミッション・バリューを体現しやすい文化をつくる

三坂:私たちHRインスティテュートのミッションは、「主体性を挽き出す」です。そこで、岡田さんが社員の主体性を挽き出すために意識されていることをお聞かせください。

岡田氏:まず、ミッションへの共感度合いが、主体性を発揮するうえで非常に重要だと考えています。ミッションに共感できない会社で働いている状態を想像していただきたいのですが、とても主体性は発揮できませんよね。そこで、私が重視しているのは、まず入り口でミッションに共感している人しか採用しないことです。

そして入社してからも、私がミッションを語り続けますし、会社としてもミッション共感の仕組みを回しています。例えば、年に1回「ミッションアワード」を開催しています。社員全員がその1年でどのようにミッションを体現したのか、10人ずつくらいのチームに分かれてプレゼンテーションをします。投票をしてチームの代表を決め、その中から経営陣がトップ5を決めます。そして選ばれた5人が全社集会で壇上に上がり、全社員の前で自身がミッション実現に貢献したことについてプレゼンを行うのです。ミッションを体現している人を称える場を創ることで、自身の行動を振り返ったり、感化されたりして、社員一人ひとりがより主体的になっていきます。

三坂:確かに、ミッションに共感していなかったら受け身になってしまいますよね。

岡田氏:はい。また当社のバリュー「FIVE GRIT」のひとつに、「Own Issues – 課題は自ら解決に導こう」というものがあります。これは言い方を変えると、主体性を持とうということです。もし「頑張っているのはダサい」というような雰囲気があったら、なかなか主体性を持って動きにくいですよね。当社には、それが本当に賞賛される文化があります。そういう価値観、文化を浸透させることは、戦う集団になる上でもとても大切ですね。

採用と評価においても、「FIVR GRIT」を重視し、根付かせていく

三坂:HRインスティテュートでは、最近「『らしさ』を、成長の原動力に。」をコーポレートスローガンに据えました。岡田さんのこれまでのお話を伺って、まさに「らしさ」を活かすことが非常に大切だと思いました。そういった人材を採用する時、まずミッションへの共感があると思いますが、他にはどんなところを見ていますか。

岡田氏:ひとつは「アンラーンできるか」です。当社のサービスは、業界の常識とは一線を画すものですから、ゼロから学べる人かどうかを重視しています。そして、「FIVE GRIT」のひとつに、「Respect All  互いにリスペクトし合おう」というものがありますが、前職の悪口などを言う人は採用しません。また、私は面接でよくフィードバックをするのですが、これもFIVE GRITの「Appreciate Feedback  フィードバックに感謝しよう」に則り、フィードバックをもらった時に感謝できるかどうかは、採用する上で重要なポイントです。

三坂:評価については、どのように行っていますか。

岡田氏:「FIVE GRIT」の体現度合いと、成果の達成度合いの両方で評価しています。

設楽:「FIVE GRIT」はどのように評価していますか。

岡田氏:まず、メンバーと直属の上司が半期の行動を一緒に振り返り、事実と認識のすり合わせを行い、その上で上司が一次評価を実施します。その後一次評価者が集まって評価を精査することで、フェアネスを担保しています。本人にも自己評価を行ってもらいますが、それは最終評価には影響しません。あくまで自己評価は、評価と自己認知のギャップを知り、改善に向かうために行います。

三坂:よくある問題が、上司はしっかり評価しているつもりでも、部下の納得感が低いことです。プログリットさんでは、自己認知と上司の評価にギャップがあった場合、どのようにしていますか。

岡田氏:評価の前には、上司と一緒に自身の半期の行動について振り返る「振り返り面談」を設けているため、評価を伝えるタイミングで上司とメンバーの認識が大きく異なるということは基本的には起こりません。加えて、評価期間に関わらず週に1度程度は1on1を設定し、日常的に上司とメンバーが対話の時間を持つようにしています。1on1では、業務の話ではなく、メンバーの心身のコンディションや悩み、目標達成や成長に向けた会話をメインにすることで、メンバーが納得感を持って働ける環境を作っています。

プログリット自身も、世界で自由に活躍するために

三坂:プログリットさんには、英語業界をぜひ変えて欲しいですね。日本の経済が30年停滞している原因のひとつに、日本人の英語力も同じく停滞していることがあるように思います。そこに風穴を開ける存在になっていただきたいです。

最後にひとつ、世界へ出ていくお考えはありますか。

岡田氏:あります。具体的な時期は決めていないのですが。私たちのお客様は世界に出ていく方ばかりですから、お客様から刺激を受ける部分も大きいです。

会社として、刺激は常にあった方がいいと思っています。もちろんミッション・バリューを大切にすることは大前提ですが、刺激がなければ停滞していきます。それに淡々と働くだけならば、社員たちがわざわざプログリットで働く意味がありませんよね。だからこそ、高い目標を掲げて、刺激ある環境で戦う集団になっていきたいと思っています。

三坂:本日は貴重なお話をありがとうございました!

設楽:ありがとうございました!

対談者プロフィール
■岡田 祥吾氏/株式会社プログリット 代表取締役社長
大阪大学卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案等、数々のプロジェクトに従事。同社を退社後、2016年9月にプログリット創業。英語コーチングサービス「プログリット」を主軸とし、サブスク型英語学習サービス「シャドテン」も展開。22年9月、東証グロース市場に上場。

■三坂 健/株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長 シニアコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン株式会社)にて法人営業等に携わる。退社後、HRインスティテュートに参画。経営コンサルティングを中心に、教育コンテンツ開発、人事制度設計、新規事業開発、人材育成トレーニングを中心に活動。また、海外進出を担いベトナム(ダナン、ホーチミン)、韓国(ソウル)、中国(上海)の拠点設立に携わる。 国立学校法人沼津工業高等専門学校で毎年マーケティングの授業を実施する他、各県の教育委員会向けに年数回の講義を実施するなど学校教育への支援も行っている。近著に「この1冊ですべてわかる~人材マネジメントの基本(日本実業出版社)」「全員転職時代のポータブルスキル大全(KADOKAWA)」「戦略的思考トレーニング(PHP研究所)」など。2020年1月より現職。

■設楽 浩司/株式会社HRインスティテュート コンサルタント
早稲田大学理工学部卒業後、損害保険ジャパン株式会社に入社。リテール営業、企業営業を経て、一橋ICS(International Corporate Strategy)にてMBA修了。ホールディングス人事部で人材開発・組織開発などに携わる。その後、HRインスティテュートに入社。

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