ジェンダーギャップ指数とは?2024年日本の現状と解決策を紹介

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世界経済フォーラムが2024年6月に公表した「ジェンダーギャップ指数2024」によると、日本の順位は146か国中118位であり、先進国のなかでいまだ最低レベルの結果となりました。教育・健康分野は世界的にみて遜色ない水準ですが、政治・経済分野は改善の傾向こそ見られるものの依然として大きな男女格差が生じています。

この記事では、日本におけるジェンダーギャップ指数の現状や、ジェンダー平等に向けた政府・企業の取り組みについて詳しく解説します。

目次

ジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダーギャップ指数とは「男女共同参画に関する国際的な指数」であり、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」が発表しています。これは、教育・健康・政治・経済の分野ごとに、男女格差の指標であるジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)を算出したものです。「0」が完全不平等、「1」が完全平等を表しており、0に近づくほど格差が大きく、1に近づくほど格差が小さいといえます。

ジェンダーギャップ指数は以下の4つの基本的なカテゴリーに分けられます。

○教育
識字率および基礎教育・高等教育就学率の男女比
(日本の順位:146か国中72位)
○健康
出生児性比、健康寿命の男女比
(日本の順位:146か国中58位)
○政治
政治家や高級官僚など、政治的に重要な地位にある者の男女比
(日本の順位:146か国中113位)
○経済
男女の賃金格差、労働参加率や管理職などの男女比
(日本の順位:146か国中120位)
※順位は2024年のもの

参考:内閣府 男女共同参画局『男女共同参画に関する国際的な指数

ジェンダーギャップ指数:日本の現状

ジェンダーギャップ指数からみる日本の現状について以下にまとめました。

日本の現状

2024年の総合順位は146か国中118位であり、2023年の125位、2022年の116位からほぼ横ばいの結果となっています。教育・健康分野は、以前は世界でもトップクラスでしたがここ2年は順位が低下しています。政治分野は146か国中113位、経済分野は146か国中120位と、日本における女性の政治・経済参画の遅れが目立っています。

日本のジェンダーギャップ指数が低い理由

日本のジェンダーギャップ指数を押し下げている要因は、女性の「政治参画」と「経済参画」の低さにあります。政治については2023年の138位から113位に上昇したものの女性参加率はいまだ低く、経済分野も女性管理職比率が課題です。

経済分野

労働参加率の男女比に関するスコアは0.768と上昇基調ですが、上級管理職における男女平等スコアは0.171と格差が大きい状況です。理由として、出産をきっかけにした離職は減少し就業継続するようになったものの、日本企業の多くがメンバーシップ型雇用制度を採用しており、管理職の登用年齢と出産や育児というライフイベントの時期が重なってしまうことで、管理職の登用が進まない状況が挙げられます。管理職の時短勤務といった選択肢を想定していない点も原因として考えられます。

また、産育休を下手タイミングで非正規を選ぶ女性が多いことが、男女の所得格差にもつながっています。

政治分野

政治参加の男女比は0.118と他先進国より低い水準です。2023年時点で、衆議院議員465人中女性は48人で9.68%、都道府県知事の女性の割合は4.3%でしかありません。

読売新聞社と早稲田大学先端社会科学研究所による2021年の世論調査では「女性議員が少ない原因」の1位は「社会に『政治は男性のもの』という意識があるから」、2位は「社会に女性への差別やハラスメントがあるから」でした。強烈な男性優位社会という印象の影響がうかがえます。

教育分野

教育分野は99.3%で事実上平等を達成しています。識字率と中等教育就学率は1位でしたが、高等教育就学率の男女比が大きく総合順位72位という結果になりました。2022年は1位だったため急激に順位が低下している印象がありますが、教育分野は多くの国でスコアが1近辺であり順位が変動しやすい傾向があります。

なお、文部科学省の調査では2023年高校卒の男子の大学進学率は60.7%、女子は54.5%でした。都市部と地方の大学進学率にも男女差の違いが見られます。

ジェンダーギャップ指数:日本政府の取り組み

ジェンダーギャップ指数の改善には、社会で働く女性の活躍を推進することが不可欠です。
ここでは、日本政府による女性活躍推進の取り組みについてご紹介します。

女性活躍推進法

女性活躍推進法とは、女性が仕事と家庭を両立しながら活躍できるように環境整備することを事業者に求めた法律です。具体的には、常時雇用する労働者が101人以上の事業主に対し「一般事業主行動計画の策定・届出」および「自社の女性活躍に関する情報公表」を義務づけるものです。

企業が女性活躍推進に取り組む効果としては以下のようなものが挙げられます。

● 女性が働きやすい環境整備が進み、社員一人あたりの生産性が向上する。
● 女性が活躍する企業として、対外的なイメージアップや優秀な人材の確保につながる。
● 家庭と両立しながら長く働けるようになり、離職率の低下や定着率の向上が見込める。
● これまでになかった自由な発想が生まれ、新しい商品やサービスの開発につながる。
● 顧客の多様なニーズに応えられるようになり、市場での競争力が高まる。

育児・介護休業法

2025年4月の改正で、仕事と育児・介護を両立するためのさまざまな措置が拡充されました。たとえば事業主は、子を養育する労働者に関する柔軟な働き方を実現するために、以下から2つ以上を選択し措置する義務が生じます。

● 始業時刻等の変更
● テレワーク等
● 保育施設の設置運営等
● 新たな休暇の付与(10日/年)
● 短時間勤務制度

また、子の看護休暇も小学校3年生までが対象となりました。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正ポイントのご案内

イクメンプロジェクト

厚生労働省は、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的としたイクメンプロジェクトを推進しています。「育てる男が、家族を変える。社会が動く。」をスローガンにさまざまな情報を発信しています。

「イクメン企業アワード」も主催しており、男性の育児と仕事の両立を推進する企業を表彰し取り組み事例を公開しています。

ポジティブ・アクション

ポジティブ・アクションとは、男女の役割分担意識や過去の経緯から男女の労働者に生じている格差を解消し、実質的な機会均等を実現する取り組みです。

内閣府男女共同参画局は「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を掲げ、企業にポジティブ・アクション推進を働きかけています。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度とは、労働者が自ら労働時間を柔軟に設定できる制度です。働き方改革の一環として、2019年4月施行の労働基準法改正で見直しがおこなわれました。

フレックスタイム制度を活用すると、通常の勤務時間帯よりも早めに出社し早めに退社する、または遅めに出社し遅めに退社するというように、総労働時間の範囲内で出退勤時刻や働く長さを自由に決めることができます。自身のライフスタイルに合わせた働き方が可能となり、特に仕事と家庭生活の調和を図りやすくなるメリットがあります。

キャリア形成支援制度

キャリア形成支援制度とは、派遣労働者を対象に、正社員化や直接雇用化といった待遇改善を目的として教育訓練や能力開発などの研修をおこなうことを義務づけた制度です。具体的な研修内容は派遣会社によって異なりますが、派遣労働者のキャリア形成に結び付くものにしなければなりません。また、派遣労働者が無理なく受講できるように、費用負担は実費程度とすることが求められています。

ジェンダーギャップ指数:日本企業の取り組み

ジェンダーギャップを改善するために、日本企業においても以下のような女性の活躍を後押しする取り組みをおこなっています。このような取り組みは、正規・非正規の待遇差の改善など、さまざまな波及効果も期待できます。

労働条件・待遇の是正

日本の女性の労働参加率は年々高まり、M字カーブはほぼ解消されています。しかし、出産・育児を機に多くの女性が非正規社員を選択するため、男女間の待遇差が大きい点が課題です。

パートタイム・有期雇用労働法により、2020年4月から正社員とパートタイム・有期雇用・派遣労働者との間の「不合理な待遇差」が禁止されています。これを踏まえて、非正規社員の能力や貢献度に応じて待遇を是正できれば、ジェンダーギャップも改善されていくでしょう。

女性管理職比率の向上

女性管理職比率を向上させるために、企業がおこなえる取り組みには以下があります。ただし、社内への説明が不十分だと男性から逆差別と捉えられやすいため「ポジティブ・アクションに相当する取り組み」であることを周知してから実施することが大切です。

● 女性社員向けに管理職育成プログラムの実施
● 女性管理職のロールモデルの選定
● 中途採用で外部から女性管理職を採用
● 外部取締役に女性を登用
● 女性管理職登用の数値目標を設定

育児休暇制度の充実

昨今は国が男性の育児休暇取得を推奨し、育児休業を取得した男性労働者が生じた中小事業主に助成金を出したり、策定マニュアルを普及させたりしていることもあり、男性の育児休暇制度を充実させる企業が増えています。

男性が育児休暇を取得することで、育休に非寛容であった職場の雰囲気が変化しジェンダーバランスのとれた環境が醸成されることが期待できます。家族との時間を大切にしながら働ける企業と認識されれば、従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。

ワークライフバランスの改善

仕事・家事・育児の負担が大きすぎるため、働き盛りの年代で自らのキャリアをあきらめたり、一時的にスローペースにせざるを得なかったりする女性は現在も多数存在します。育児中の女性がフルタイムで週5日働くことが物理的に難しいという現実を踏まえ、以下のように多様な働き方を推進し、ワークライフバランスの改善に努める企業が増えています。

● テレワーク、リモートワークの導入
● フレックスタイム制
● 短時間勤務制度の導入
● 残業時間の削減

●関連プログラム/働き方改革ワークアウト

ハラスメント対策

女性が働く際にパワハラ、モラハラ、セクハラに遭遇することは少なくありません。妊娠や出産をきっかけにマタハラにあう女性もいます。ハラスメントは男女・年代問わず自覚なくおこなっている人がいるため、以下のようなハラスメント対策をおこなうことは重要です。また、近年増加中のカスタマーハラスメントへの対応策を決めることも必要です。

● ハラスメントに関する方針の明文化
● 定期的なハラスメント研修
● 匿名の相談・報告窓口の設置
● 迅速かつ公正な対応

ダイバーシティ&インクルージョン推進

ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別に限らず年齢、国籍、文化、能力などの多様性を尊重し、一人ひとりが活躍できる環境づくりを目指す取り組みです。イノベーション創出につながるという理由で推進されることが多いのですが、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで小さな差異や不平等に対する意識が自然と高まるため、ジェンダーギャップの解消にもつながります。

● 公平な採用基準
● 多様な働き方の実現
● キャリアパスの多様化
● 公平な人事評価制度

●関連プログラム/ダイバーシティ・インクルージョンワークショップ

女性が働きやすい職場をつくることのメリット

女性が働きやすい職場をつくることは企業側のメリットも大きく、たとえば以下のようなものが挙げられます。

● 女性の社会進出が進み、人材確保につながる。
● 女性のキャリアアップが促進され、企業内での人材育成につながる。
● 女性社員のモチベーションが上がり、生産性向上につながる。
● すべての社員にとってワークライフバランスがとりやすい環境づくりを実践できる。
● 社員のストレスが軽減し、健康的な労働環境がつくられる。
● 誰もが活躍できる職場づくりに取り組む企業として、社会的な評価が高まる。

日本企業の取り組み事例

ジェンダーギャップを改善するために女性の活躍を後押しする取り組みをおこなっている企業を2社ご紹介します。

日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルドは、企業の成長を支えるのは「人」であるという考えのもと、多様な人材の活躍を推進しています。そのなかでも女性活躍推進はビジネス成長のためには喫緊の課題と位置づけており、出産や育児によってキャリアアップを諦めることがないよう、短時間勤務制度やフレックス勤務制度など柔軟な働き方を可能とする仕組みを取り入れています。

また、全社各部門の代表メンバーで形成される「女性活躍推進プロジェクトチーム」を立ち上げました。このなかで女性の活躍を後押しする仕組みの提案や意識改革のためのワークショップの展開など、他企業とも連携しながらさまざまな取り組みを実践しています。

参考:日本マクドナルド株式会社『McDonald’s CSR Report 2020』『取り組みと制度

株式会社野村総合研究所

野村総合研究所では、多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりがいきいきと働き、挑戦し続けることができる組織づくりを推進しています。

女性活躍推進の取り組みとしては、2008年度から「NRI Women’s Network(NWN)」を開始しました。これは「女性のキャリア形成支援」「仕事と育児の両立」「企業風土の醸成」の3つを柱とする社長直轄のプロジェクトであり、女性管理職の育成や仕事と育児の両立支援研修、管理職向けD&Iセミナーの開催などをおこなっています。

参考:株式会社野村総合研究所『ダイバーシティ&インクルージョン

まとめ

日本のジェンダーギャップ指数は世界118位(2024年)と依然、低迷しています。しかし、政治のスコアは大幅に改善しました。女性の労働参加率、管理職比率も着実に向上しています。今後も地道に取り組みを継続することが大切です。職場のジェンダー平等を実現することは、生産性の向上や社内の活性化、人材確保・定着率向上など、企業にとっても多くのメリットがあります。今回取り上げた政府の取り組みや企業事例を参考に、誰もが働きやすく、活躍できる職場づくりを実践していくことが重要です。

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監修者
江口 瑛子
株式会社HRインスティテュート/チーフコンサルタント、事業開発担当 慶応義塾大学法学部卒業後、外資系コンサルティング企業に入社。 戦略コンサルタントとして、主に製造業におけるサプライチェーン変革を支援するプロジェクトなどに従事。入社したコンサルタントの育成を担うインストラクターも担当。 その後、HRインスティテュートに参画。自身のコンサルティング経験を活かし、人材育成・組織開発に関する企業の課題解決やスキル育成を支援する。 企業向けのプログラムの企画・開発・実施に加えて、大学でも講師として登壇。また、自社の新サービス開発、提携先開拓、新規事業創出などの事業開発領域も担う。Global Mindset認定コーチ。
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