リスキリングの導入事例6選!先進企業から学ぶ成功のポイントを解説

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必要とされる知識やスキルの移り変わりが激しい現代において、ますます重要性が高まっている「リスキリング」。

近年、多くの企業が学習環境の整備や制度づくりを進めているものの、「自社ではどのように取り組むべきか」と、導入に際して課題を抱える企業担当者も多いようです。

この記事では、リスキリングに取り組んでいる先進企業6社の事例を紹介するとともに、リスキリングを成功に導くための具体策やポイントについて、詳しく解説します。

用語解説「リスキリング(リスキル)」 |  組織・人材開発のHRインスティテュート

目次

リスキリングとは?

リスキリングとは、企業が主体となって、社員に新たな分野の技術やスキルを習得させることです。先進的なデジタル技術や利益を生み出すビジネスモデル、市場環境の変化に対応するために、新しい知識やスキルを学び、身に付けることを指します。

学び直しと訳されることが多いため、個人が主体となり学習するものだと捉えられがちですが、リスキリングは、あくまで企業が自社のニーズに基づいて社員へスキル習得を促すもの。必要とされるスキルの変化に適応するために、または、新しい職種・業務にチャレンジするために、個人の能力やスキルを再開発することが特徴です。

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リスキリングが注目される理由

近年、さまざまな企業でリスキリングが注目される主な理由には、次の3つが挙げられます。

2020年のダボス会議で「リスキリング革命」が発表されたこと

リスキリング革命とは、第4次産業革命に伴い、激変する技術に対応できる人材を育成する目的で「2030年までに10億人により良い教育やスキル、仕事を提供する」というものです。

国策として政府がリスキリングの強化を後押ししていること

人材の再教育が世界の潮流となる中で、日本においても、2022年10月に岸田首相が「今後5年間でリスキリング支援に1兆円を投じる」という方針を発表。同年11月には、経団連がリスキリングの必要性に言及するなど、リスキリングの強化を明確に後押ししています。

DXの浸透により、デジタル技術を専門とする人材の獲得が急務となったこと

デジタル技術が急速に発展する中で、地域や年齢、性別を問わず、働く人すべてが今後必要とされるスキルや知識を習得し、価値を創出し続けるためには、学べる機会や具体的な施策、制度づくりに官民一体となって取り組む必要があるでしょう。

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リスキリング先進企業の導入事例【6選】

リスキリングを導入した代表的な企業事例は次の6社になります。

事例1/日立製作所

日立製作所は、デジタルスキルや対応力を持つ人材の強化を重点課題に掲げ、日立グループで活用できるプログラムを開発。社員一人ひとりのリスキリングを支えるために、学習体験プラットフォーム(LXP)「Degreed(ディグリード)」を導入しました。

社員それぞれが空いた時間にPCを使って勉強できることで自発的な学びをサポートし、学習意欲を高めることにも成功。リコメンド機能付きのLX Pで、社員自身が興味のある分野や克服したいと思う分野を、動画を視聴したりテキストを読んだりして、数分から数時間かけて学んでいきます。多様なコンテンツを用意していることが特徴です。

事例2/ヤフー株式会社

ヤフーでは、全社員を対象に「AIを業務で活用できる人材」へのリスキリングを行っています。AI人材育成をサポートする「Z AIアカデミア」を発足し、グループ内での知識共有や人材の交流、AIを活用したビジネスの協業を促進。

また「AIケーススタディコミッティ」を設置することで、社員に学習機会の提供し、実践力の底上げを図っています。ノンエンジニアからAIプロフェッショナルに育成するリスキリングを積極的に行っていることもポイントです。

事例3/株式会社メルカリ

メルカリでは、希望する社員を対象に、博士課程進学を支援する「mercari R4D PhD Support Program」という制度を開始しました。学費のサポートだけでなく、研究時間の確保のために勤務時間を調整できる制度を導入。

国内の大学院に進学する社員が仕事と研究を両立できるように、職場環境を整備していることがポイントです。リスキリングで高度な専門知識を習得することにより組織の競争力を高められ、新しいアイデアやイノベーションの創出にもつながると考えています。

事例4/富士通株式会社

「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱している富士通は、教育投資を4割増やして、人材のリスキリングに取り組みました。将来を見据えた、人材への成長投資を加速させ、必要なスキルを社員自ら選び、学んでいくスタイルの研修を拡大。

学びのポータルサイト「FLX」を通じ、社員がどこでも即戦力になれるような、デジタルスキルなど9,000種類以上の教材を提供しています。キャリアの線路を可視化したり、ポストの社内公募に意欲を高めたりして、内部人材の強化を図っていることがポイントです。

事例5/サッポロビール株式会社

サッポログループは、全社が横並びでDXに投資する必要があると判断し「全社員DX人財化」を掲げて、DX・IT人財育成プログラムを開始しました。

まずは、DXやITの基礎を学べる「全社員ステップ」や、より専門的な内容を習得する「サポーターステップ」ではeラーニング講座を提供。最終ステップと位置付ける「リーダーステップ」では、DXビジネスデザイナー・DXテクニカルプランナー・ITテクニカルプランナーのポジションに就けるような人材輩出を目指しています。

DXの真の意義として「デジタルスキルを身に付けたら何ができるようになるか」を社員に明確に示すことで、学びの風土や仕事への意識をアップデートしていることがポイントです。現実的な成果や価値を生み出すために、経営基盤の一つとしてDXを推進し、グループを横断して人材を育成すべく、リスキリングに取り組んでいます。

事例6/武田薬品工業株式会社 

武田薬品工業は、外部のIT企業に依存しない、自社のデジタル人材の育成を目的に「DD&T(データ・デジタル&テクノロジー)アカデミー」をスタートさせています。この独自の教育プログラムは、現場で顧客と接してきた現場の社員がデジタルに関する新たなスキルや知識を身に着けることで、顧客視点でのデジタル化を実現するのが狙いです。

応募のなかから選抜された社員約30人が現場からDD&Tアカデミーに入学し、現場から離れて半年間のリスキリングを実施します。最初の1か月はデジタルの基礎を座学とワークショップで学び、そのあとは専門部署に所属しOJTで実務を経験しながら、足りない部分は学び直すという、アウトプットとインプットを繰り返し、デジタルのスキルを身につけていきます。

参加者からは「ワクワクしている」「自分のやるべき業務が定まってきた」といったポジティブな声が上がり、デジタル変革の1歩としての手ごたえを感じつつも、最終的には武田薬品工業のDXを担う”変革者”を育てることを目指しています。

関連記事:【ウェビナーレポート】DX、組織変革を加速させる「リスキリング」とは何か。その定義や実践方法をリスキリングの仕掛け人が解説(前編)

関連記事:【ウェビナーレポート】DX、組織変革を加速させる「リスキリング」とは何か。その定義や実践方法をリスキリングの仕掛け人が解説(後編)

リスキリングを成功させるポイント

リスキリングを導入している先進企業の事例からも見て取れるように、リスキリング成功には、次の5つがポイントになります。

企業としての高いコミットメント

リスキリングを通じて新しい領域のスキルを獲得し、新しい事業領域を開拓しようという強い目的意識と、経営レベルでのコミットメントがあることは共通要素といえるでしょう。リスキリングを個人の自主性任せにすることなく、企業主導で取り組むべきこととして位置付けるからこそ、制度や仕組みが機能します。

社員がリスキリングに取り組みやすい環境

リスキリングを成功に導くためには、スキル習得を優先できる環境を企業が整備すること。社員の負荷をできるだけ減らして長期的にフォローする体制を構築していくことが大切です。

リスキリングでの学びを実践

リスキリングはあくまで目標達成までの手段であるため、スキルが身についた社員がすぐに活躍できる業務や部署を社内に設ける必要があります。最初にリスキリング後のイメージを描き、実務活用できるようなスキルの習得を優先することがポイントになるでしょう。

モチベーションを高められる教育プログラム

会社が習得してほしいスキルを明確にした上で、社員の自発性を尊重したキャリアプランとマッチさせるよう、しっかり対話をすること。リスキリングのメリットを可視化しながら、モチベーションを維持できるよう外部コンテンツなどを活用することもポイントです。

長期的な視点を持って継続的に実施する

リスキリングは早急に効果が期待できるものではありません。社員が新たなスキルを獲得できるよう、長期的かつ継続的にサポートすることも必要でしょう。

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まとめ

リスキリングとは、市場環境などの変化に対応するために、企業が主体となって社員に新たな分野のスキルを習得させることです。

DX時代に企業が飛躍的な成長を遂げるためには、社員の継続的な学びやスキル習得が欠かせません。リスキリング導入に成功した企業事例を参考に、自社での取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

組織の現状や課題に合わせてリスキリングプログラムの企画設計をご支援できます。まずはお気軽にご相談ください。

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