コンサルタントとは?分野別の特徴や仕事内容をわかりやすく解説
近年、激化する企業競争の中で、自社が生き残るための戦略として重要な「コンサルタント」の力。経営戦略を立てる際の重要な参謀として認識されていますが、コンサルタントがおこなう具体的な業務内容について、詳しく理解していないという企業担当者も多いようです。
この記事では、コンサルタントとは具体的に何をするのか、その専門領域や種類、仕事内容、業界の特性までわかりやすく解説します。
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コンサルタントとは?
コンサルタントとは、ある特定の事柄・分野について助言をおこなう専門家を指す言葉です。コンサルタント(consultant)の元になる「consult」という動詞は、「相談する」という言葉です。つまり、コンサルタントを直訳すると、相手の相談を受ける人という意味になります。
ビジネス場面においては、企業や組織、個人の相談に乗り、助言をしたり、相手の課題を解決することを幅広く支援することをを「コンサルティング」といい、コンサルタントが所属している企業は「コンサルティング会社」や「コンサルティングファーム」と呼ばれています。
コンサルタントの役割は、企業が自社の経営戦略や事業計画を策定する際に、その企業にとって最適な相談役・サポート役となり、現在抱えている経営上の課題を解決に導くことです。また、クライアント企業が競合他社との競争に打ち勝つために、自社の強みや弱みを把握して他社との差別化要因を見つけ、優位性を高めるために必要な施策の企画・立案の手伝いもおこないます。
コンサルタントはコンサルティング自体をサービス・商材とし、企業が戦略プランをスムーズに実行できるよう目標設定をしながら寄り添い、意思決定をサポートします。コンサルタントが主導的に提案・アドバイスをおこなうものの、決定した経営戦略を実施するのは基本的にはクライアント企業となります。
ただし近年は、これまでより一層深く企業の内部に入り込み、実際にプランの実行までを担当するコンサルティングファームが増加し、浸透しつつあります。その要因の一つに挙げられるのが、企業を取り巻く経済情勢や社会環境の複雑化・多角化です。自社の課題認識から難易度の高い解決策の実施までをコンサルタントに任せ、確実に成果を上げたいというニーズが高まっていると考えられます。
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コンサルタントの分野・種類とは?
コンサルタントが所属するコンサルティングファームによって、さまざまな分野・種類のコンサルティングが存在します。
コンサルタント業務の主な分野・種類は以下のとおりです。
戦略系コンサルティング
経営上にある企業課題を発見し、解決のための施策を策定するコンサルタント業務です。
M&A戦略や新規事業戦略、中長期な成長戦略などのコンサルティングも提供し、近年はプランの実行支援までおこなうケースが増えています。
特にマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループなどに代表される外資系戦略コンサルティングファームは、大企業にとっての重要な戦略パートナーです。厳しい経営環境のなか、戦略をどう進めるかという重要な意思決定を、高度な情報分析力や論理的思考力、問題解決能力で支援できる強みがあります。
総合系コンサルティング
特定の分野にとどまらない、幅広い領域におけるコンサルタント業務です。
メーカーや金融、官公庁などさまざまな業界をカバーし、業務改善から戦略立案、問題解決のためのシステム導入まであらゆるサポートをおこないます。
企業の課題は、戦略のみあるいは一課題だけに特化してコンサルティングをおこなっても実行段階でスムーズにいかないケースがあります。その点、総合系コンサルティングファームは、戦略領域をカバーしながら実行フェーズにおける個別の課題にも応じられる強みがあります。業界に特化したチームや課題に特化したプロジェクトチームを組み、幅広いニーズに対応します。
ITコンサルティング
業務の課題を見える化し、IT技術の活用で解決に導くコンサルタント業務です。
IT・マーケティングに関する知識や分析力が豊富で、システムの導入支援から最適化、運用指導までおこなうこともあります。
近年はDX化が進んでいるためニーズが激増しています。IT領域はAIの進化のスピードが非常に速いため、今後も継続してニーズが発生する領域でしょう。
基幹系情報システムの導入支援をコンサルティングするケースやCRM(顧客関係管理)やSCM(サプライチェーンマネジメント)システムの導入支援など領域や課題別のITコンサルティングがあります。
組織・人事コンサルティング
組織や人事領域に関連するコンサルタント業務です。
人材開発戦略から給与・評価制度の改革、確定拠出型年金の導入まで、幅広い分野に対応しています。人材能力開発のためのプログラムを企画し、開発・提供までおこなうコンサルティングファームも存在します。
働き方改革や女性活躍推進、ダイバーシティなどに顕著ですが、人口減少が進む日本においてはますます重要性が高まりつつあり、政府の方針も色濃く反映される領域のコンサルティングです。
人事制度構築などの制度系コンサルティングがある程度市場に普及したこともあり、昨今は組織風土改革などのチェンジマネジメントが注目されています。
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財務系コンサルティング
FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)とも呼ばれ、M&A支援や財務関連の課題解決に特化したコンサルタント業務です。
会計や法務などの専門知識が豊富で、企業再生支援や企業価値評価なども担当します。
クライアントの経営層からのニーズに基づいて、財務の専門知識やノウハウの情報提供が求められるため、税理士や公認会計士などの有資格者、銀行や証券会社など金融機関での勤務経験がある方は活躍しやすい領域です。M&A支援の場合、交渉などに携わる場合もあるためタフなコミュニケーション力も求められます。
シンクタンク系コンサルティング
経済調査や官公庁向けのリサーチ、マネジメントコンサルティングといった幅広いサービスに対応するコンサルタント業務です。
シンクタンク系のコンサルティングファームは、大手企業や銀行、証券会社が母体となっていることが多いのが特徴です。政治・経済のプロフェッショナルで、調査だけではなくシステムの構築などもおこなっています。
代表的な企業に、三菱総合研究所、野村総合研究所などがあります。シンクタンク系コンサルティングファームは、研究機関ならではの知見とリサーチ力や客観的な分析力に強みがあります。ただし、企業に対しては人事やIT領域のコンサルティングもおこなっているため、総合系コンサルティングファームに近いビジネスモデルといえるでしょう。
監査法人系コンサルティング
会計監査業務とコンサルティング業務の2つを担います。
会計監査業務では財務書類における監査および証明、コンサルティング業務ではIPO(新規上場)やIFRS(国際会計基準)支援、財務・税務関連のアドバイザリー、内部統制支援など、多岐にわたるサポートをおこないます。
監査法人系コンサルティングは「守りのコンサルティング」と呼ばれるリスクマネジメントが中心業務です。財務や経理の監査だけでなく、コンプライアンスリスクなど、予測できるリスクについて中立的な立場でアドバイスします。
事業再生(企業再生)コンサルティング
企業の内部まで入り込み、事業再生・企業再生を支援するコンサルタント業務です。
クライアント企業の業務改善や事業の再生を請け負い、事業・財務・人材などのあらゆる角度から企業を改革し、経営の健全化や再成長させるための取り組みをおこないます。
一社で事業再生を手掛けるファームと、特定の課題に特化したコンサルティングファームが存在します。一般に、キャッシュフローの改善の優先順位が高くなり、債務整理や不採算事業を整理したのち、有望な事業の収益性を改善し企業を再生させる取り組みをおこないます。実際にコンサルタントが企業に乗り込み、アドバイスだけでなく自らも動きながら支援するところが特徴です。
医療コンサルティング
医療機関(医療法人・クリニックなど)や医薬品・医療機器メーカーに特化したコンサルティングです。例えば、医療法人やクリニックの開業を検討しているクライアントに事業計画の策定や金融機関からの融資、立地の選定、物件の絞り込み、人材の採用・育成などまでカバーした開業コンサルティングをおこないます。
運営中の事業主に対しては、財務診断やM&A、業務オペレーション改善、IT導入支援、人事労務管理ほか医療機関のあらゆる経営課題をコンサルティングします。
近年は、高齢化に伴う莫大な医療費への批判やそれに伴う診療報酬改定の見直し、医師の働き方改革や看護師の人手不足など課題が多い業界であり、今後は診療スタイルの変革や業務のDX化などさまざまなコンサルティングニーズが発生すると見込まれています。
と医療業界独特の制度や慣習があるため、即戦力になるまで時間を要しますが、人の生命に係わる公共性の高い分野ならではのやりがいがあります。
建設コンサルティング
ビルや道路や橋梁など土木建設プロジェクトについてのコンサルティングであり、幅広い建設分野に対応しています。技術的な専門知識や法的、環境的、経済的な側面を考慮したコンサルティングをおこないます。
建設プロジェクト計画と管理や設計コンサルティング、契約管理、品質管理などに携わります。建設コンサルタントは、建築や土木工学、環境科学などの専門知識を持ち、クライアントの要求に応じてカスタマイズされたソリューションを提供する重要な役割を果たします。
大型プロジェクトのコンサルティングをおこなう企業だけでなく、設計や環境ほか専門に特化した大小さまざまなコンサルティング会社が存在します。建設コンサルタントとして活躍するには、専門知識だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクト管理スキルも必要です。技術士や RCCM(シビルコンサルティングマネージャー)などの資格を持っていると歓迎されるでしょう。
コンサルタントの仕事内容とは?
コンサルタントの仕事には、共通して「クライアント企業の現状分析と課題の把握」「課題に関する情報の収集」「課題解決に向けたビジョンの策定と実行支援」という3つのステップがあります。
クライアント企業の現状分析と課題の把握
クライアントが目指す理想を実現するために、提示されたテーマについて現状分析と課題の抽出をおこないます。
例えば、新規事業というテーマであれば景気の動向や業界のトレンドなどマクロなデータを分析します。マクロ分析には政府機関の白書やシンクタンクなどのデータが役立ちます。
さらに、経営陣や部門リーダー、従業員のインタビューをおこない内部の状況を把握します。階層が異なるメンバーからヒアリングすることでその組織のポテンシャルやボトルネックを特定できます。
この段階で、改めて担当者と「課題」および「期待値」についてすり合わせをし、コンサルティングの目的を共有することが重要です。
課題に関する情報の収集
課題が決まったら、理想と現状とのギャップを埋めるための情報収集をおこないます。
新規事業であれば、既存事業の売上データや顧客の構成比、顧客満足度、従業員満足度調査など組織内にあるデータを集めます。さらに、現在の人的リソースの状況や特に営業部門のスタッフの人数、営業スタイルの特徴を把握します。
あわせて、新規事業の他プレイヤー企業や商品についてのデータを収集します。前述のマクロなデータや、ターゲットと想定される顧客のインタビューも行います。情報は大量に集まるため、この段階で取捨選択することが重要です。
さらに、絞り込んだ情報をSWOT分析などのフレームワークを活用し整理整頓することで、自社の強み・弱みを把握することができます。
課題解決に向けたビジョンの策定と実行支援
データを踏まえて、課題解決に向けたビジョンの策定をおこないます。ビジョンとは将来的に達成したい目標を分かりやすくしたもので、現時点で到達しうる「自社の理想のあるべき姿」です。新規事業なら、成功確率の高い事業コンセプトを提案します。
クライアントからGOサインが出たら、実行支援に入ります。クライアントに自分事として取り組んでもらうためのマインドを醸成し、戦略を実行するプロジェクトチームを立ち上げてもらう必要があります。
プロジェクトチームのメンバーが確定したら、プロジェクトの目標と役割分担やタイムラインなどを明確にし、スタートを切ります。その後はプロジェクトの推進をモニタリングし、コミュニケーションを頻繁にとりながらゴールまで熱意をもってメンバーを支援します。
コンサルタントの役職
それぞれの分野・種類・役職ごとに仕事内容が細かく分かれていることもポイントです。
コンサルタントの役職はコンサルティングファームによって呼び名が異なるものの、一般的には以下の4つに分類されます。
アナリスト
コンサルタント業界のアナリストは、アソシエイトやリサーチャーとも呼ばれる現場に最も近い職位です。
アナリストの仕事内容は情報収集と分析、資料作成などで、マネージャーやコンサルタントの指導のもとで業務をおこなうことが多く、コンサルタントキャリアのスタートポジションともいえます。
コンサルタント
コンサルタントとは一般的にアナリストから昇進した職位であり、シニアアナリストやシニアアソシエイトとも呼ばれます。コンサルタントの仕事内容はコンサルティングの実作業で、担当するプロジェクト全体に関するマネジメント業務も必要となります。課題解決への仮説を立て、検証作業をおこなうことが主な仕事です。
マネージャー
マネージャーとは、責任を持ってプロジェクト全体を取りまとめるポジションであり、プロジェクトマネージャーやマネージコンサルタントとも呼ばれる職位です。マネージャーの仕事内容は主にプロジェクトの全体管理や予算管理で、クライアント企業の開拓を担当することもあります。
パートナー、プリンシパル
パートナー、プリンシパルとは、ディレクターやヴァイスプレジデントとも呼ばれる職位です。プロジェクト運営の最終的責任者であり、コンサルティングファームの共同経営者でもあります。パートナー、プリンシパルの仕事内容は、クライアント企業の獲得や知財の開発、人材育成など多岐にわたり、コンサルティングファームそのものの経営もおこないます。
〇採用情報/HRインスティテュート コンサルタント(正社員)
経営コンサルティングや人材育成、組織開発の支援を行うHRインスティテュートでは、一緒に仕事ができる仲間を求めています。
コンサルタントになるには
コンサルティングファームへの就職を目指す方法がもっとも知られています。コンサルティングファームにもシンクタンク系や戦略系、人事系、金融系、医療系など多様なファームがあるので専門を極めるのも一つの選択肢です。
一般に即戦力を求める業界ですが、近年は新卒を大量採用する大手コンサルティングファームも増えています。コンサルタントの仕事には経験だけでなく、高度な思考力や問題解決能力、ハードワークに耐えうる体力が求められるため、地頭がよくポテンシャルの高い新卒は歓迎されます。また、ITコンサルティング支援などはITリテラシーが高い若手人材のほうが適しているケースもあります。
コンサルティングファーム以外の企業に就職してコンサルタントになる道もあります。営業コンサルタント、DXコンサルタント、マーケティングコンサルタントなどクライアントの課題解決を支援する職種はあらゆる業界に存在します。企画・営業職からスタートとしてコンサルタントの道を目指してもよいでしょう。
コンサルタント業界の特性と動向
全世界におけるコンサルティング業界の市場規模が推定10兆円から20兆円といわれる中、日本においてはまだまだコンサルタントの活用度は高くないのが現状でした。
しかし、国内ビジネスコンサルティングサービスの市場予測では、2024年の国内市場は1兆4億円規模になると予測されており、コロナ禍を機に倍増しています。急激な企業のデジタルシフトやグローバル化などが追い風となり、コンサルタントやコンサルティングへのニーズが増加したことが需要拡大の要因であると考えられます。
今後もコンサルティング市場は拡大していくことが予測される一方で、業界全体では「コンサルタントのあり方」について変化が求められています。近年はインターネットの普及などでクライアント企業自体が持っているビジネスノウハウや基礎知識が向上し、課題解決策の提示のみをおこなうコンサルタントへのニーズが減少しているのです。
今後もクライアント企業から選ばれ続けるためには、より「クリエイティブで有益な価値の提供」が求められ、コンサルティングの難易度が大きく上がっている状況といえます。業界内での生き残りをかけ、コンサルタントとして対応できる分野を広げたり、専門性を高めたりするなどの工夫が必要となるでしょう。
まとめ
コンサルタントとは、特定の事柄や分野について診断・助言する専門家を指す言葉です。コンサルタントの主な仕事内容は、クライアント企業の現状分析や課題に関する情報の収集、課題解決へのビジョンの策定、実行支援などであり、コンサルティングの分野や種類、職位によっても異なることがポイントです。
コンサルティング業界の市場規模は増加傾向にあるものの、業界特性としては「コンサルタントのあり方」が大きく変化している状況です。課題解決策の提示のみならず、いかにして「クリエイティブで有益な価値」を提供していくのか。業界で生き残るためには、クライアント企業のニーズを深く理解し、貢献度を高める工夫が必要となるでしょう。
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