レピュテーションとは?意味やリスクの要因と対策について解説

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ステークホルダーの意思決定に大きな影響を及ぼす「レピュテーション」。企業としては自社に悪影響をもたらすレピュテーションへの予防策を講じるとともに、リスクが顕在化した場合の対応策についても考えておく必要があります。

この記事では「レピュテーション」を取り上げ、その意味やリスクの要因・対策について詳しく解説します。

目次

レピュテーションとは

レピュテーションとは、企業のステークホルダー間で形成される「評判」や「風評」を意味し、企業への評価を指す言葉です。企業に対する信頼性をあらわし、ブランド力や採用活動、社員のモチベーションなどに大きな影響を与えます。企業を取り巻くステークホルダーにとっても、評判の悪い企業との付き合いは自らの評判を下げることになりかねないため、取引や投資をするうえでは各企業のレピュテーションを意識しています。

情報セキュリティ分野での意味

情報セキュリティ分野における「レピュテーション」は、サーバーやドメインの安全性を評価する仕組みを指します。スパムメールやウイルスメールの排除、悪質なWebサイトの判定に活用されています。サーバーが自動で情報を収集するため、従来のセキュリティソフトよりも運用負荷が軽く、多岐にわたるセキュリティリスクに対応できます。

レピュテーションリスクとは

レピュテーションリスクとは、企業に関するネガティブな評価が拡散されることで、企業イメージや信頼性、ブランド価値が低下するリスクのことです。社員の不祥事や内部告発、根拠のない風評被害などが主な発生原因となり、企業経営に重大な損害をもたらすおそれがあります。企業としては社員のリテラシー教育や監視体制の強化によってレピュテーションリスクを未然に防ぐとともに、リスクが顕在化した場合にも迅速かつ適切に対応することが求められます。

レピュテーションリスクが重視される理由

レピュテーションリスクが重視される理由の一つにSNSの普及が挙げられます。SNSに投稿されたネガティブな情報や不適切な動画は、ユーザー間で瞬時に拡散され批判が殺到することがあります。拡散力の強いSNS への投稿は企業に対する評判や信頼を大きく左右するおそれがあるため、企業としても見過ごすことのできない問題となっています。

また、消費者の意識や価値観が変化していることも、レピュテーションリスクに注目が集まる要因の一つです。近年は倫理観や社会的責任を重視する消費者が増え、企業の不祥事が信頼低下や売上減少につながりやすくなっています。企業としては透明性の高い健全な企業経営をおこない、ステークホルダーとの良好な関係を維持していく必要があります。

レピュテーションリスクの5つの要因

レピュテーションリスクが高まる要因として以下の5つが挙げられます。

商品・サービスの品質低下

商品・サービスの品質低下は顧客満足度に影響し、評判悪化や売上減少を招きます。「商品の品質が落ちている」「サービスの内容が悪くなっている」など、品質に関するネガティブな評価がSNSで拡散されると、企業のブランド価値が大きく損なわれるリスクがあります。

経営者・社員の不祥事

経営者や社員の不祥事は企業全体の信頼性を失墜させる要因となります。不祥事の具体例としては、職場内でのハラスメントや反社会的勢力との関係、犯罪行為、SNSへの不適切な投稿などが挙げられます。このような不祥事がメディアやSNSで拡散されると、顧客離れや株価下落を引き起こし、企業の存続をも左右する事態になりかねません。

内部告発

社内の不正行為や労働環境問題が外部に公表されると、企業を取り巻くステークホルダーからの評判が著しく低下します。内部通報制度が整っておらず社員が問題を通報できない、通報があっても社内で適切に対応できないなど、告発によって組織の透明性不足も露呈し、社会的信頼が失われます。

コンプライアンス違反

健全な企業経営にはコンプライアンス(法令遵守)が欠かせません。法令違反や規制違反が世間に発覚すると、企業に対する社会的信頼が失墜し、深刻なレピュテーションリスクとなります。違反発覚後の対応によってはさらに批判を浴びてブランド価値が低下し、倒産の一因となるおそれがあります。

風評被害

根拠のないデマや誤解に基づく批判が拡散され、不当に評判を傷つけられるリスクもあります。風評被害が発生してしまうと、インターネット上での炎上や企業イメージの低下、顧客離れなどの悪影響がもたらされます。風評被害の影響を最小限に抑えるには、企業の見解を示す声明文の発表や公的機関・専門家への相談など、迅速な情報発信や適切な対応が必要となります。

レピュテーションリスクの発生事例

企業の評判を損ねるリスクとは具体的にどのようなものなのか、実際に発生したレピュテーションリスクの事例を紹介します。

アルバイトの不適切行動

アルバイト従業員が職場内での不適切な行動をインターネット上で公開し、企業のイメージを大きく失墜させた事例です。いわゆる「バイトテロ」と呼ばれるもので、不適切な行動の写真や動画をSNSに投稿して大炎上となり、なかには店舗の閉店や破産に追い込まれた事例もあります。

個人情報の流出

大手通信会社で約900万件の顧客情報が流出した事例では、顧客からの信頼低下と経営悪化を招き、当時の社長が辞任する事態にまで発展しました。

商品表示の不正

食品の産地偽装が発覚し、消費者の信頼を失って事業停止に至った事例もあります。産地情報は消費者が食品を選ぶうえでの重要な要素であり、産地偽装は消費者の信頼を裏切る悪質な行為と言わざるを得ません。

レピュテーションリスクの評価方法

レピュテーションリスクを評価するには、報道調査やSNS分析を活用し、企業の評判や顧客の反応を定量的に把握する方法があります。また、アンケートやインタビューを通じてステークホルダーの意見を収集し、商品・サービスの品質や企業イメージの改善点を特定することもできます。匿名回答にすると正直な意見や感想を得られる可能性が高く、レピュテーションリスクの正確な評価に役立ちます。

インターネット上で自社名を検索してユーザーの声を調べる、いわゆる「エゴサーチ」も自社の評判を知る方法の一つです。ただし、個人的な恨みや思い込みによる誤った情報が投稿されていることもあるため、これだけではレピュテーションリスクを正しく評価できない点に注意が必要です。

レピュテーションリスクへの対策

企業がレピュテーションリスクに備えるための対策を以下にまとめました。

社員への教育

レピュテーションリスクに備えるには、コンプライアンスや情報セキュリティに関する研修を定期的に実施し、社員一人ひとりのリスク意識を高めることが重要です。SNSの適切な利用方法やネットリテラシー、機密情報の取り扱いについて学ぶ機会を提供し、社員の行動が企業の評判に直結することを理解させる必要があります。また様々なメディアが発信している情報を鵜吞みにせず、批判的に評価・分析し活用する力(メディア・リテラシー)を育てていくとも重要です。

用語解説「メディア・リテラシー」| 組織・人材開発のHRインスティテュート

広報活動の強化

正確かつ迅速な情報発信は企業の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼を集めることにつながります。自社のホームページやSNS、プレスリリースなどの広報チャネルを活用し、企業の取り組みや価値観を広範囲に向けて定期的に発信するのが望ましいでしょう。積極的な広報活動を通じて一貫性のあるメッセージを届けることで、企業に対してポジティブな印象を持ってもらえるようになります。

監視体制の構築

監視体制の構築もレピュテーションリスクの予防策の一つです。内部監査や第三者機関の設置により、社内の不正行為を見逃さず、問題の早期発見につなげることができ、SNSや口コミサイトなどインターネット上の情報を常時監視することで、根拠のないデマや誹謗中傷に対して迅速な対応をとることができます。また、レピュテーションリスクが顕在化した場合も、監視体制を強化していればネガティブな影響を最小限に抑えることができます。

企業らしさの浸透

企業価値や企業らしさを社員に浸透させることで、社員が日々の業務や意思決定において何を基準に行動すべきかを明確に理解できます。これにより、企業の評判を損なうような不適切な行動や倫理的に問題のある行動を未然に防ぐことにつながります。また、顧客や取引先、地域社会などの外部ステークホルダーに対して一貫したメッセージや行動を示すことができます。こうしたコミュニケーションを通じて、ステークホルダーとの信頼関係が強化され、レピュテーションリスクが低減します。

関連プログラム「ウェイ・マネジメント」| 組織・人材開発のHRインスティテュート

レピュテーションリスクが表面化した際の対応

レピュテーションリスクが表面化した際に企業がとるべき対応は次のとおりです。

  1. 情報の真偽確認:拡散された情報の正確性を確認する
  2. 透明性ある説明:ステークホルダーに対し、事実関係や再発防止策を具体的に説明する
  3. 再発防止策の実施:組織や制度の見直し、社員教育の強化などで信頼回復とリスク低減を図る
  4. 法的措置の検討:悪質な虚偽情報や風評被害に対しては法的措置を検討する

ステークホルダーからの信頼を回復するためには迅速かつ誠実な対応が不可欠となります。万が一の事態が起きたときに素早く対処できるよう、あらかじめ対応方法を決めておくのが望ましいでしょう。

まとめ

レピュテーションとは「評判」や「風評」を意味する言葉で、ビジネスにおいてはステークホルダー間で形成される企業への評価を指します。また、企業に関する悪評が拡散され、企業経営に悪影響が及ぶリスクを「レピュテーションリスク」といいます。

近年は倫理観や社会的責任を重視するステークホルダーが増え、企業には常に社会からの厳しい目が向けられています。企業としてはレピュテーションリスクへの対策によって自社が被る損害を最小限に抑えるとともに、ステークホルダーとの良好な関係の維持に努める必要があります。

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