アサーティブ・コミュニケーションとは?4つの柱と3つのタイプを解説
アサーティブ・コミュニケーションとは、攻撃的でも受動的でもなく、自分の意見を尊重しつつ、相手の意見も大切にするバランスの取れたコミュニケーション方法です。多様性が重視される現代社会では、ダイバーシティや働き方改革が進む中で、職場での円滑な人間関係を築くために、このようなコミュニケーションがますます重要になっています。
この記事では、アサーティブ・コミュニケーションの基本となる4つの柱や、その実践方法、ビジネスにおける活用法について、わかりやすく解説します。
アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分の意見をしっかり伝えながら、相手の意見も尊重するコミュニケーション方法です。
「アサーティブ(assertive)」は「断言する」「自己主張する」という意味の英単語ですが、アサーティブ・コミュニケーションでは、自分と相手の両方を大切にし、攻撃的でも受動的でもない適切な主張を行います。単に自分の考えを押し通すのではなく、相手と対等な立場で意見を交換し、互いに利益が得られるWin-Winの関係を目指します。
用語解説:アサーティブ・コミュニケーション|組織・人材開発のHRインスティテュート
アサーティブ・コミュニケーションの4つの柱
アサーティブ・コミュニケーションの基本となる考え方には、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」の4つの柱があります。相手を尊重しながら効果的なコミュニケーションを行うためには、これらの要素を理解し、実践することが重要です。
誠実
誠実さとは、自分にも相手にも正直であることです。意見が対立した場合でも、無理に相手に合わせて自分の考えを曲げることは自分に誠実ではありませんし、相手の主張を埋めとめないまま自分の主張を押し通そうとする姿勢も相手への誠意に欠けています。相手の意見を尊重しつつ、自分の考えも率直に伝えることが求められます。
率直
自分の意見を隠さず、飾らず、ストレートに伝えることが大切です。遠回しな表現では、相手に正しく伝わらない可能性があります。主語を「私」にして、自分の気持ちや考えを明確に伝えるよう心がけましょう。
対等
アサーティブ・コミュニケーションでは、相手と対等な立場で意見を交換します。たとえ上下関係がある場合でも、萎縮したり高圧的な態度を取ったりするのは避けるべきです。お互いに優劣や上下関係を意識せず、対等な立場で向き合うことが大切です。
自己責任
自分の言動に責任を持ち、その結果を受け入れる姿勢が必要です。たとえ望ましくない結果であっても、それが自分の言動によるものであれば受け入れるようにします。また、自分が主張しなかった結果について他人を責めるのではなく、それも含めて自己責任として捉えることが重要です。
コミュニケーションの3つのタイプ
コミュニケーションにはさまざまなスタイルがありますが、大きく分けると「アグレッシブ」「ノンアサーティブ」「アサーティブ」の3つのタイプに分類されます。
攻撃的(アグレッシブ)
アグレッシブなコミュニケーションは、自分の意見や考えを強く押し通し、他者を無視した自己中心的なスタイルです。このタイプは「負けたくない」という自己防衛の心理から、相手をコントロールしようとする傾向があります。その結果、相手との関係が悪化しやすく、周囲から反感を買い、サポートを得られなくなることがあります。
受動的(ノンアサーティブ)
ノンアサーティブなコミュニケーションは、自分の意見を抑え込み、相手を優先するスタイルです。このタイプは自己主張ができず、理不尽な要求にも従ってしまうため、ストレスや劣等感を抱えやすい傾向があります。一見すると相手を尊重しているように見えますが、実際には人に嫌われたくないという自己保身が背景にあり、結果的に自己中心的ともいえる行動です。
適切な主張(アサーティブ)
アサーティブなコミュニケーションは、自分の意見を率直に伝えつつ、相手の意見も尊重するバランスの取れたスタイルです。この方法では、一方的に自分を押し通すことも、相手に迎合することもありません。双方が納得できる結論を目指すため、建設的で良好な関係を築くことができます。
アサーティブ・コミュニケーションの実践法
アサーティブ・コミュニケーションを実践する方法を以下にまとめました。
DESC法
DESC法は、「Describe(描写)」「Explain(説明)」「Specify(提案)」「Choose(選択)」の4つのステップで構成されるコミュニケーション手法です。この方法を使うことで、相手を傷つけずに自分の意見を効果的に伝えることができます。
Describe(描写)
まず、現在の状況や相手の行動について、客観的な事実のみを伝えます。この際、自分の感情や推測は含めず、具体的な状況を正確に説明することが重要です。
Explain(表現)
次に、その事実に対して自分がどう考え感じているか、または共感している点を素直に伝えます。相手に説明する際は誠実さを心がけ、感情的にならず、互いを尊重する姿勢で自分の意見を表現することが大切です。
Specify(提案)
問題点に対して具体的な解決策を提案します。このとき、相手に「命令」するのではなく、「提案」として伝えることがポイントです。上から目線にならないよう、相手が受け入れやすい言葉で提案することが求められます。
Choose(選択)
最後に、提案に対する相手の反応を確認し、次に取るべき選択肢を示します。相手が必ずしも「Yes」と答えるとは限りませんので、提案が受け入れられない場合でも感情的にならず、代替案を用意して柔軟に対応する姿勢が大切です。
アイ(I)メッセージ
アイ(I)メッセージとは、自分の感情や意見を「私」を主語にして伝えるコミュニケーション手法です。これに対して、相手を主語にする表現を「ユー(You)メッセージ」といいます。
アイメッセージは、相手を非難せずに自分の気持ちや考えを率直に伝えることができるため、ユーメッセージよりも柔らかい印象を与えます。特に、言い方が「きつい」と指摘されることが多い人や、自己主張が苦手な人には、この手法を意識すると良いでしょう。
研修
アサーティブ・コミュニケーションは、研修を通じて学ぶことができます。一般的なコミュニケーション研修では、まず基礎知識を学び、その後ペアワークやグループワークなどの演習を行う形式がよく採用されています。このような実践的なトレーニングによって、コミュニケーションスキルが向上し、ビジネスシーンでも効果的に活用できるようになります。
アサーティブ・コミュニケーションのメリット
アサーティブ・コミュニケーションには、社内のコミュニケーションを活性化し、社員同士の意見交換を促進する効果があります。自分の考えを率直に伝えられる風通しの良い職場環境が整えば、意思疎通や情報共有がスムーズになり、業務効率や生産性の向上につながります。
さらに、互いの意見を尊重するコミュニケーションは、社員のメンタルヘルスにも良い影響を与えます。上下関係にとらわれず、対等な立場でやり取りを行うことで、上司と部下の関係改善にも効果が期待できます。
アサーティブ・コミュニケーションのビジネスへの活用
アサーティブ・コミュニケーションは、異なる価値観を持つ社員同士が対等な関係を築くために役立ちます。上司と部下が良好な関係を保つためには、自分の意見を明確に伝えつつ、相手の考えも尊重する姿勢が重要です。
特に「ノンアサーティブ」な人は、相手に遠慮して自分の意見を主張できず、悩みを一人で抱え込んでしまうことがあります。このようなタイプの人がアサーティブ・コミュニケーションを習得することで、対等な立場から自分の意見を率直に伝えられるようになり、精神的な負担も軽減されます。
近年では、ダイバーシティや働き方改革の推進により、職場での柔軟なコミュニケーションがますます求められています。自分も相手も大切にする自己表現を身につけ、状況に応じた適切な主張を心がけましょう。
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まとめ
アサーティブ・コミュニケーションは、自分の意見をしっかりと主張しながら、相手への配慮も忘れないバランスの取れたコミュニケーション方法です。これにより、より良い人間関係を築くための第一歩を踏み出すことができ、ビジネスシーンでも効果的に活用できます。
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