セレンディピティとは?意味や具体例、ビジネスにおけるメリットを解説
ビジネスシーンでも耳にする機会が増えてきた「セレンディピティ」。偶然から生まれた幸運を掴み取る能力のことで、大きなビジネスチャンスにつながる可能性を秘めています。セレンディピティと出会うためには、偶然の幸運をただ待っているだけでなく、自ら積極的に行動を起こしていくことが大切です。
この記事では「セレンディピティ」を取り上げ、その意味や具体例やビジネスにおけるメリットについてわかりやすく解説します。
セレンディピティとは?
セレンディピティ(Serendipity)とは、予期せぬ発見が新たな価値を生み出す事象のことです。「偶然の産物」「幸運な偶然を引き寄せる力」を意味する言葉で、ペルシャのおとぎ話『セレンディップの3人の王子たち』に由来します。これは、父王の命令で旅に出たセレンディップ王国の王子たちが、旅の途中で降りかかってくる多くの困難を持ち前の知恵と機転で解決していく物語です。この作品を語源とし、イギリスの政治家・小説家のホレス・ウォルポール氏が「セレンディピティ」という造語を生み出しました。
「シンクロニシティ」との違い
シンクロニシティとは「意味のある偶然の一致」を指す言葉で、たとえば「会いたいと思っていた人にたまたま遭遇した」「連絡しようと思ったそのときに相手から連絡が来た」といった事象を意味します。セレンディピティとは「偶然の出来事」という点で類似しますが、シンクロニシティは事象そのものを指すのに対し、セレンディピティは偶然から新たな価値を発見する主体性な行為・能力を指すという点で違いがあります。
セレンディピティの具体例
私たちの身近にもセレンディピティがきっかけで生まれたものが数多く存在しています。ここでは偶然の発見によって生み出されたセレンディピティの具体例をご紹介します。
ペニシリン
セレンディピティの代表例といえるのが、アレクサンダー・フレミングが発見した伝染病の治療薬「ペニシリン」です。ブドウ球菌の実験中、培養器の中にアオカビを発生させてしまったフレミングはこれを捨てようとしますが、よく見てみると「アオカビの周囲にだけ細菌が繁殖していない」ことに気づきます。これをきっかけとして、アオカビに細菌の繁殖を抑える物質があることが確認され、世界初の抗生物質「ペニシリン」が誕生したのです。この発見は医学に革命をもたらし、多くの命を救う治療法の基礎となりました。
万有引力の法則
万有引力の法則とは、アイザック・ニュートンが発見した「すべての物体は互いに引き合う力を持っている」という法則です。木からリンゴが落ちる様子を観察したニュートンは、リンゴは地面に落ちるのに、なぜ月は落ちてこないのか?と疑問を抱き、あらゆる物体の間には互いを引き付け合う力が働いていること(=引力)の発見に至ったといわれています。こうした偶然の観察が、万有引力の法則という科学史に残る大発見につながったのです。
ポストイット
ビジネスにおけるセレンディピティの事例としては、3M(スリーエム)社の「ポストイット」が知られています。貼ってはがせるポストイットは、失敗した接着剤の開発がきっかけとなって生まれた製品です。くっつきはするもののはがすことも可能な性質、このような弱い接着剤の用途を探るなかで、簡単に貼り直せるメモ用紙としての活用が発見されたのでした。
SNSサービスのTwitter(現在は「X」に改称)は、当時の社員が遊びとして開発したツールをサービス化したものです。社内で人気が出たことをきっかけに、偶然にも「中毒性が高いツール」であることがわかり、その後オープンSNSとして実用化されました。今では世界中にユーザーを持つ大規模なソーシャルメディアプラットフォームへと成長しています。
電子レンジ
電子レンジ誕生のきっかけとなったのは、アメリカのパーシー・スペンサー博士による「レーダー装置の実験」でした。この実験中、自分のポケットに入れていたチョコレートが溶けていることに気づき、これがヒントとなって世界初の「レーダーレンジ」の開発につながったのです。マグネトロンによる加熱効果を応用した調理器として、日本では1961年に国産電子レンジ1号機を発売、その後家庭での利用が広まりました。
ポテトチップス
ポテトチップスは顧客のクレームをきっかけに誕生した商品です。フライドポテトを厚く切りすぎていることに不満を持った顧客に対応するために、じゃがいもを紙のように薄くスライスして揚げてみたことがはじまりといわれています。クレーム対処の過程で生まれた「超薄切りポテト」が今では世界中で人気を博し、偶然が大きなビジネスチャンスに変わる事例の一つとなりました。
セレンディピティのビジネスにおけるメリット
ポストイットやTwitter(現在のX)のように、セレンディピティがビジネスチャンスにつながる事例は珍しくありません。セレンディピティが生まれることは、ビジネスにおいて以下のようなメリットをもたらします。
イノベーションの創出
予期せぬ発見が新たな製品・サービスの誕生を促進し、市場開拓の機会を創出する可能性が高まります。セレンディピティによる「幸運な偶然」が、新たな商機を生み出すことも少なくないのです。セレンディピティにはこれまでの常識を覆すような発見もあり、その情報をもとに革新的なアイデアが生まれやすく、社会に大きな変化をもたらすようなイノベーションの創出につながる可能性も秘めています。
競争優位性の強化
市場にモノがあふれ、競合商品・サービスがひしめき合うなかで、自社の優位性を確保するのは容易ではありません。しかし、偶然の機会を素早く捉えれば、他社に先駆けた市場参入を果たすことができます。セレンディピティによる新たな発見は他社との差別化につながり、競争の激しい市場での優位性を強化するものとなるでしょう。そのためには「幸運な偶然」を引き寄せる力、それをチャンスに変えていく力が必要です。
セレンディピティを起こしやすくする方法
セレンディピティは単なる幸運ではなく、偶然を引き寄せて幸運に変える力といえます。ここではセレンディピティを起こしやすくする行動をご紹介します。
多様な価値観を持つ人と交流する
多様なバックグラウンドを持つ人々とのつながりを持つと、新たなアイデアや視点が生まれやすくなり、セレンディピティが起こる可能性が高まります。異業種交流会や世代の異なる人との会食など、ビジネスやプライベートにかかわらず、他者との交流を図れる場には積極的に参加するとよいでしょう。また、多様な人々と触れ合う際には、自分とは異なる考え方も受容する姿勢が大切です。
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オープンマインドで積極的な姿勢を保つ
オープンマインドとは、ありのままの自分を表現しつつ、新しい視点や価値観も柔軟に受け入れられる心の姿勢のことです。オープンマインドでいると、自分の考えや経験に固執しないため、予期せぬチャンスや偶然の発見を受け入れやすくなるでしょう。また、ポジティブな姿勢でいることは、困難に直面したときに新たな切り口や可能性を見出す力となります。セレンディピティは失敗から生まれる事例も多いため、何事も前向きに捉えることが大切です。
興味を持ち行動量を増やす
何事にも興味を持ち続けることで、新たな知識や経験が積み重なり、セレンディピティが起こりやすくなります。いつもは通らない道を歩く、初めての料理を作る、新しい分野の本を読むなど、普段とは違う行動や小さな挑戦をしてみると、これまで思いつかなかったユニークな発想が浮かんでくることがあります。些細な好奇心を大切にし、行動量を増やすことを意識するとよいでしょう。
失敗を恐れずチャレンジする
何らかの行動を起こすとき、それがすべて成功に結びつくとは限りません。しかし、セレンディピティは「偶然の産物」であり、失敗がきっかけとなって偶然の幸運が舞い降りることも少なくありません。失敗する可能性があっても、それを恐れずに前向きに挑戦することで、予期せぬ発見が生まれる土壌が整います。そして、諦めずに挑戦を繰り返すことが、新しいアイデアや解決策を生み出す鍵となるのです。
まとめ
セレンディピティとは「幸運な偶然」を発見する力のことです。ビジネスにおいては、偶然見つけたものが新たな価値を生み出し、市場開拓のチャンスや競争優位性の強化につながることがあります。あくまで「偶然の産物」ではあるものの、多様な人々と関わる機会をつくる、興味の幅を広げて新しい分野にチャレンジするなど、いつもとは違う行動をしてみることでセレンディピティが起こる可能性を高めることができます。まずは興味のある分野から、行動量を増やすことを意識してみてはいかがでしょうか。
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