傾聴とは?意味や目的、効果をわかりやすく紹介
傾聴はビジネスシーンで重視されるスキルの一つです。傾聴する力が高ければ仕事上の関係者と信頼関係を構築しやすく、両者の関係性が深まることで業務を円滑に進行できるようになります。社内外を問わず多くの人と関わるビジネスパーソンであれば身につけるべきスキルといえるでしょう。
この記事では、傾聴の意味や効果とともに、傾聴力を高めるためのトレーニング方法をご紹介します。
傾聴の意味
傾聴(けいちょう)とは、相手の話に耳を傾け、表情や話し方、姿勢など言葉以外の要素にも注意しながら相手を理解しようとするコミュニケーション技法のことです。
本来、傾聴はカウンセリングやコーチングで用いられる手法でしたが、近年はビジネス上の活用にも注目が集まっています。経済産業省が提示する社会人基礎力の要素にも「傾聴力」が含まれており、チームで働く力(チームワーク)の一つとして紹介されています。
参考:経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力について」
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傾聴の目的
「傾聴」という言葉には「聴く」という漢字が用いられています。「聞く」は単に音声が耳に入ってくるというニュアンスが強いですが「聴く」は相手を理解しようと率先して耳を傾け、相手の話を真摯に聞くことを意味します。このため、傾聴の目的は、話し手が伝えたい点に重点を置き、話の内容を正しく理解することといえます。このような相手に対する理解や共感を示すコミュニケーションを心がけると、相手からの信頼を得やすくなり、良好な関係性を築くことができます。
傾聴の効果
傾聴をビジネスシーンで実践することで以下のような効果が期待できます。
意見や心情の整理
傾聴には、話し手の思考を整理し、主体的な行動に移行させる効果があります。人は漠然とした思いを持っていても、それを言語化しなければ自分自身で明確に認識できないものです。また、相手に伝達するレベルにまで至っていない考えもあるでしょう。この点、聞き手が傾聴することで、話し手は自分の意見や心情を整理できるようになります。これを繰り返すことで思考が鋭敏化し、自らの意思で悩みや課題を解決するための行動をとれるようになるのです。
信頼関係の構築
傾聴することで、話し手は「自分の意見や考え方をありのままに受け止めてもらえている」と感じ、相手に対して信頼を持つようになります。反対に、傾聴を欠いたコミュニケーションをしてしまうと、話し手は「自分の話が聞き流されている」と感じ、相手を信頼して話すことはできなくなるでしょう。つまり、相手との信頼関係を構築できるかどうかは、話を聴く姿勢にかかっているといっても過言ではないのです。
業務の円滑化
信頼関係のない相手からあれこれ指示を受けても、人は素直に従う気にはなれないものです。一方で、双方の間に信頼関係が成立している場合は、多少困難な作業であっても前向きに取り組もうとします。傾聴する姿勢は信頼関係の構築につながり、結果として業務の円滑化をもたらす効果が期待できます。
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傾聴が活用される場面
傾聴はさまざまな場面で活用されています。理解や共感を示しながら相手の話を聴く姿勢は、カウンセリングやコーチングをはじめ、子育てや看護、身近な人たちとの会話など、日常生活においても役立つスキルです。また、ビジネスシーンでも幅広く必要とされており、たとえばチーム内での1on1や社外の関係者との折衝など、利害を調整する場面では特に重要なスキルとなります。
用語解説:「コーチング」|組織・人材開発のHRインスティテュート
傾聴の3要素
「積極的傾聴」を提唱した米国の心理学者カール・ロジャーズ氏は、成功しているカウンセリングでは以下の3要素が揃っていると指摘しています。ここでは、話をする側を「クライアント」、話を聴く側を「カウンセラー」とし、クライアント視点における優秀なカウンセラーに共通する要素をご紹介します。
自己一致
カウンセラーが偽ることのない自分自身を表現できている状態が「自己一致」です。たとえば、クライアントの話を聞くなかでわかりにくい点があったときに、そのままにせずに真意を確認するなど、相手にも自分自身にも真摯な姿勢で聴くことをいいます。傾聴においては、カウンセラーとクライアントの認識を一致させることが重要です。
無条件の肯定的関心
カウンセラーがクライアントの感情や考え方のすべてをありのままに受容することが「無条件の肯定的関心」です。話を聴く際には、善悪の判断や好き嫌いの評価を入れずに耳を傾けます。仮に社会通念から考えて受け入れ難い内容だったとしても、そのバックボーンに対し肯定的な関心を持って聴くことが重要です。
共感的理解
カウンセラーがクライアントの立場に立ち、相手の気持ちに共感し理解しようとすることが「共感的理解」です。ここでのポイントは、カウンセラー自身の考えや経験、価値観はいったん排除し、クライアントの世界観を的確に理解しようと努めることです。また、共感していること、理解していることをクライアントに示し、安心感を持ってもらうことも重要です。
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傾聴力のトレーニング方法
日々の生活やビジネスシーンなど、傾聴が役立つ場面はさまざまあります。傾聴力を高めるためには何をすればよいのか、日常的に取り組めるトレーニング方法をご紹介します。
非言語コミュニケーションを活用する
相手が安心して話せるようにするには、聞き手が話しやすい雰囲気をつくることが大切です。具体的には、相手の方に身体を向けて聴く姿勢をとり、柔らかい表情や笑顔、落ち着いた声のトーンを心がけるとよいでしょう。このような非言語コミュニケーションも、会話内容と同程度に重要となります。誰かと話すときに「ながら聞き」(他のことをしながら耳だけ貸すこと)になっていないか自己チェックしましょう。
また、相手の動作を模倣するミラーリングを取り入れたり、適切なタイミングで相槌を打つように意識したりすることも、傾聴力の向上に効果的です。
話す割合を相手が多めとなるように意識する
傾聴する際のポイントとして、会話の割合を相手のほうが多めとなるように意識することが挙げられます。具体的には、相手が話す割合を7、自分が話す割合を3くらいに調整するとよいでしょう。傾聴においては自分が話す割合を意識的に減らし、相手の話に積極的に耳を傾けるよう心がけることが大切です。
質問を使い分ける
相手が話しやすい質問をすることで、会話が弾み、自然と話に耳を傾けられるようになります。具体的には「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を使い分けることがポイントです。前者は「どう思いますか」のように自由な回答が求められる質問、後者は「はい」「いいえ」の二択など回答が制限される質問をいいます。相手の考えを深く知りたいときはオープンクエスチョンが有効となりますが、まだ相手のことをよく知らない段階であれば、相手が回答しやすいクローズドクエスチョンから投げかけるとよいでしょう。
話を要約して言い換える
話の要点を整理して言い換える作業も、傾聴するうえで心がけたいポイントです。相手の話を要約して話すことで、相手は自分の話を客観的に捉えられるようになります。要約する際には、ネガティブな表現があればポジティブな表現に言い換えることを意識しましょう。たとえば「物事に対して悲観的になりがちだ」という発言があれば「慎重に行動できるタイプですね」と言い換えるとよいでしょう。
バックトラッキングを用いる
バックトラッキングとは、相手の言葉をそのまま繰り返すことで、オウム返しともいわれます。聞き手が話し手の言葉を繰り返すと、話し手は「自分の話を聴いてもらっている」「自分を受け入れてもらっている」ことを実感し、聞き手に対して好感や信頼を持つようになります。バックトラッキングを用いる際は相手の言葉を言い換えずに、たとえば「この仕事に挑戦したい」という発言があれば「この仕事にチャレンジしたいのですね」ではなく「この仕事に挑戦したいのですね」とそのままの表現で繰り返すことがポイントです。
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まとめ
傾聴とは、相手に対する理解や共感を示し、真摯な態度で話を「聴く」ことをいいます。ビジネスシーンでも重宝されるスキルであり、傾聴力が高まると相手との信頼関係を構築しやすくなり、業務の円滑化につながります。今回取り上げたトレーニング方法を参考に、ビジネスで活用できる傾聴力を身につけましょう。
HRインスティテュートでは、傾聴力を含めたビジネスコミュニケーション全般を向上させるさまざまなプログラムを提供しています。新入社員から中堅社員を対象とした「ビジネスコミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ」は、ビジネスに役立つコミュニケーションスキル(傾聴力・質問力・伝達力)をトレーニングするプログラムです。また、マネジメント層向けには「マネジメントコミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ」、社内講師を育成したい企業には「社内インストラクター育成支援」を用意しています。
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