【セミナーレポート】DeNAに学ぶ、個の成長を支援する組織の作り方ーHR本部 副本部長 風早 亮氏が登壇(後編)

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外部環境が激変する中で、「個の成長」が企業の成長を担う重要なポイントとなっている。
これを受け、当社ではProFuture株式会社と共催して「DeNAに学ぶ、個の成長を支援する組織の作り方」と題したセミナーを開催した。
セミナーの内容を前編・後編に分けてお伝えしており、後編となる今回は、株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 副本部長 兼 人材開発部 部長の風早 亮氏と、当社代表の三坂によるパネルディスカッションの様子をお送りする。
ファシリテーターはProFuture 代表取締役社長の寺澤 康介氏が務めた。

目次

パネルセッション「未来を成功に導くリーダーの条件とは」

風早氏/株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 副本部長 兼 人材開発部 部長
三坂
(ファシリテーター)
寺澤氏/ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研所長

従来のヒエラルキーが介在しない場をいかにつくるか

寺澤氏:風早さんのお話を聞いて、驚きだったことの一つが360度フィードバックを記名式で行っていることでした。バイアスなどはかからないのでしょうか。

風早氏:当社には5つの約束事があるとお伝えしましたが、その中に「発言責任」、「傾聴責任」があります。その思想に則って、あくまで組織のために、伝えるべきことを適切なマナーで伝えます。このことを十分に説明した上で、アンケートを展開しています。

寺澤氏:カルチャーの土台があるからこそ、成り立っているのですね。

三坂:ヒエラルキーに慣れている組織が、同じことをするのは少し難しいかもしれません。だからこそ、先ほど少し触れたピラミッド的な領域と、そうでない領域を創り出すことが必要になってくると思います。

寺澤氏:会場から風早さんに質問が来ています。「エンゲージメント調査を導入する際、メンバー層にはどのように導入目的を説明するのでしょうか。マネージャーや人事部が現状把握するためと解釈されないでしょうか」

風早氏:当社でも非常に気を使っています。あくまで課題を明らかにして組織をより良くするために行うと、事前に調査の目的をしっかりと伝えます。また、調査後は結果を全社員に向けて速やかにレポートし、透明性を高めています。

寺澤氏:三坂さんの講演で、部下と上司をバラバラに育成しない、関係性の質を高めるために両方を同時に行うとおっしゃっていました。実践的で効果の高い研修としてワークアウトを紹介されていましたが、さらに具体的に説明いただけますでしょうか。

三坂:会議の質を変えることに主眼を置いています。どんなに教育を施しても、会議の質が変わらないと結果にはつながらないと考えるからです。会議は閉ざされた状態で行われることが多いのですが、そこにコンサルタントや経営陣が入っていきます。どんな企画を立て、どうフィードバックするかを見る。必要に応じて、コンサルタントも企画に対しても意見や質問をするので、異なる視点に気付くことができます。大切なのは、実際の仕事のテーマについて議論し、部下の企画力と上司の支援力を実践的に鍛えることです。

情報取得がリーダーに求められる役割

寺澤氏:リーダーということに視点を移すと、グローバルのリーダー調査で、一番の課題として挙げられていたのが、次世代リーダーの育成でした。特にコロナ禍でリーダーシップパイプラインが弱まっていると認識されているようです。リモート環境で仕事をすることも増えていますが、風早さんはリーダーの役割は変わっていると感じているでしょうか。

風早氏:本質的なところは変わっていないと思います。ただ、状況の把握が難しくなっているので、情報を取りに行くことがより求められるようになっています。情報取得はリーダーだけの役割ではなく、人事だからできることもあるので実施しています。

寺澤:人事として、具体的にはどんなことを行っているのでしょうか。

風早氏:リモート中心の働き方になって、現場が見えにくくなっているのは事実です。一方で、一次情報は中長期で組織を見る上で必要不可欠。人事はリーダーに今の組織はどうなっているかと、問いを投げかけます。そうすることで、リーダーもわかっていないことに気づけます。リーダーにも見えてない部分はありますので、戦略人事として事業の成功のために必要なアクションを先手で取ります。

寺澤氏:オンラインだからこそ、人事が意欲をもってやれば現場が把握できるようになっていると言えるでしょうか。

風早氏:そう思います。SNSを活用すれば、メール以上に気軽なコミュニケーションが取れますので、よりスピーディに情報を取得できます。

寺澤氏:一方、人事が介入し過ぎると不信感を招くこともあります。工夫できることはあるでしょうか。

三坂:人事は立場的に難しいところがあり、何かすると面倒がられる傾向にあるのは事実です。人事の支援として求められるのは、「無理をさせないようにすること」でしょう。無理を促すような取り組みだから反発が生まれるのであって、反対に現場の無理を軽減できる仕組みを作る。例えば、リモート環境でコミュニケーションをとることに無理が生じていたらSNSを導入する、といったこともその一つです。現場の無理を取り除くことができれば、すごく良い取り組みになるし、感謝もされるはずです。人事が現場に行ったときはどこに無理が生じているか、“無理探し”をしてほしいですね。無理とは理がないところです。ロジカルではなく、感情的、場当たり的になっている部分などを見つけるようにしていただければと思います。

自身の役割を自覚できれば、自律的な動きにつながる

寺澤氏:三坂さんのところには、各社からさまざまな相談が寄せられていると思います。今はリーダーのどんな能力を伸ばしたいという要望が多いでしょうか。変化はありますか。

三坂:研修のニーズでいえば、オンラインのファシリテーション力を強化したいという声が多く寄せられています。会議を主催していろんな人の意見を聞く役割があるのですが、オンラインではどうしても一方通行になりがちで、引き出す技術を学びたいと言います。これはリーダーやマネージャー像の変化と捉えられ、これまでのように存在を示すだけ、あるいは背中を見せるだけで威厳や安心感を与えるのは難しくなっています。もう一つは主観もありますが、コロナ禍で不安な世の中になっている今、リーダーには明るさ、ポジティブさが必要になっていると感じています。

寺澤氏:これからの組織で最重要の一つとなる「社員の自立」を高めるために、効果的な施策はあるでしょうか。

三坂:役割の自覚が大事になります。職務については、例えば、自分は人事であるとわかっている人が大半ですが、その中で自分はどんな役割を持っているのか自覚できている人は少ないのではないでしょうか。自分の役割を理解することが自発的な行動や自律的な動きにつながるはずです。

寺澤氏:最後に一言お願いします。

風早氏:現場が見えにくくなっている今、何が起こっているのかをいち早くつかむのが、人事の役割であり、これからに向けての重要な要因となります。フットワークを軽く、一次情報を取り、必要なアクションを先手で取るのが大事です。人事が元気だと会社が元気だと私は信じています。大変なことも少なからずありますが、ぜひ人事同士のつながりを広げ、一緒に頑張っていければと思っています。

三坂:コンサルタントという立場上、さまざまな業務に接しますが、一番難しいと感じているのが人に関することです。問題があっても、なかなか変えられないかもしれません。そういう時は、月並みですが、自分から変わることが大事ではないでしょうか。コロナ禍で大変ですが、個が積極的に動けるように、人事の皆さんからエネルギーやパワーを出していただければ、と思います。

(プロフィール)
■風早 亮氏/株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 副本部長 兼 人材開発部 部長
2008年にDeNAに入社。ゲーム・エンターテインメント事業の渉外やマネジメントを担当したのち、ヒューマンリソース本部に異動。同年、DeNAの次世代経営メンバーを育成するネクストボードに選出。現在は、副本部長として全社の採用及び人材育成の統括からブランディング、総務まで人事領域全般を率いる。20年4月より現職。

■寺澤 康介氏/ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長(ファシリテーター)
1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。

■三坂 健/株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長 シニアコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。 安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン株式会社)にて法人営業等に携わる。退社後、HRインスティテュートに参画。経営コンサルティングを中心に、教育コンテンツ開発、人事制度設計、新規事業開発、人材育成トレーニングを中心に活動。また、海外進出を担いベトナム(ダナン、ホーチミン)、韓国(ソウル)、中国(上海)の拠点設立に携わる。 国立学校法人沼津工業高等専門学校で毎年マーケティングの授業を実施する他、各県の教育委員会向けに年数回の講義を実施するなど学校教育への支援も行っている。近著に「この1冊ですべてわかる~人材マネジメントの基本(日本実業出版社)」「全員転職時代のポータブルスキル大全(KADOKAWA)」など。2020年1月より現職。

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