経験者採用とは?経団連の意図や中途採用・キャリア採用の違いを解説
経団連は「中途採用」の呼称を「経験者採用」に改める方針を発表し、すでに多くの官公庁などで「経験者採用」の表記が使用されています。これまで使われてきた「中途採用」や「キャリア採用」とはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、経団連が「経験者採用」に表記変更した背景や中途採用・キャリア採用との違い、採用担当者が知っておくべき経験者採用を成功させるコツについて詳しく解説します。
「経験者採用」に表記変更した経団連のねらいとは?
日本経済団体連合会(経団連)は2022年11月7日の定例記者会見において、新卒以外の採用全般で使われている「中途採用」という呼称を「経験者採用」に改める考えを明らかにしました。その理由は「中途」という表記に否定的なイメージがあると判断したからです。
また、近年は通年採用を実施する企業が増えており「中途」という表現が時代にそぐわなくなってきたことも表記変更の理由に挙げられます。ビジネス環境が変化し、採用手法も多様化するなか、ネガティブな印象を払拭して成長分野への人材移動の促進を強化していくことがねらいです。
2023年以降、経団連が作成する資料のなかで「経験者採用」の表記が反映されます。会員企業に対しても積極的な使用を呼びかけており、すでに外務省や厚生労働省、国税庁などの官公庁で「経験者採用」の表記が用いられています。
「経験者採用」と「中途採用」の違いは?
先述のとおり「経験者採用」とは「中途採用」の表記を見直したもので、時代の変化が「経験者採用」という表記変更をもたらしたといえます。
ビジネスを取り巻く環境は常に変化しており、既存事業の拡大や新規事業への参入など、企業は自社の事業戦略に合わせて必要な人材を採用する必要があります。変化の激しい時代において、即戦力として活躍できる「経験者」を企業が求めていることも「経験者採用」への表記変更に至った一つの背景と考えられるでしょう。
「中途採用」と「キャリア採用」の違いは?
「中途採用」と混合しやすい言葉に「キャリア採用」があります。採用の目的は「企業の成長のために新たな労働者を迎え入れること」であり、この点は共通していますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
「中途採用」は、未経験または何らかの実務経験を持ち、転職やキャリアアップを考えている人を採用することを指します。新卒入社からおおむね3年以内に退職し、再び就職活動をしている「第二新卒」や、前職で実績をあげ、新たな挑戦や成長の機会を求めている人など幅広く含みます。
一方「キャリア採用」は、その分野で豊富な経験と専門知識を持つ人を採用することを指します。高いレイヤーのポジションを求める人や、新しい業界や役割への移行を目指す人などがこれにあたります。
また、中途採用の場合は第二新卒など比較的キャリアの浅い人材のポテンシャル採用も含みますが、キャリア採用では即戦力を求めていることを明確にする企業が多く、第二新卒は含まないのが一般的です。
企業が経験者採用・キャリア採用をおこなう目的
企業が経験者を採用する目的として、自社にはなかったスキルと知識を組織にもたらすことが挙げられます。豊富な専門知識と実務経験を持った人材を採用すれば、企業のプロセスや業務の改善、生産性の向上、イノベーションの推進などに貢献してもらえます。さらに、経験の浅い社員のメンターとして、スキルアップやキャリアアップにつなげてもらうことも期待できるでしょう。
また、新卒採用では研修に多くの時間をあてる必要がありますが、経験者採用・キャリア採用の場合はすでに実務経験のある人材を雇うため、新卒採用時のような長時間の研修が不要となります。企業としては即戦力となる人材を迎え入れることで、育成コストを抑えながら業績の向上や成長の促進を目指すことができるのです。
経験者採用・キャリア採用の5つのメリット
即戦力となり得る経験者を雇うことは企業に多くの利点をもたらします。
経験者採用・キャリア採用をおこなう主なメリットは以下の5つです。
自社の課題を解決できる
経験者は、前職での経験を通じて得た豊富なスキルと知識を持ち合わせています。経験豊富な人材のノウハウを活用することで、自社の業務プロレスやオペレーションの課題を解決し、業務効率化につなげられます。
生産性が向上する
経験豊富な人材は、経験の浅い社員よりも効率的かつ生産的に仕事をこなすことができます。自社が求めるスキルや知識を持つ人材を採用すれば、即戦力としての活躍が期待できるでしょう。
トレーニングコストを削減できる
経験者はすでにスキルや知識を持っているため、新卒採用で実施するような基礎的な研修が必要なく、トレーニングコストを大幅に削減できます。研修が不要になることで、即戦力として入社後すぐに活躍してもらえるメリットもあります。
指導の機会を得られる
経験豊富な人材を雇えば、経験の浅い社員の指導を任せることも可能となり、スキルアップやキャリアアップを支援してもらえます。
企業文化によい影響を与える
豊富な経験と専門知識を有する人材は、会社に安定感とプロフェッショナリズムをもたらし、企業文化全体に好影響を与えます。また、自社に新しい視点やアイデアが入ってくることで、イノベーションの促進につながるメリットもあります。
経験者採用・キャリア採用の5つのデメリット
経験者を採用することは企業に多くのメリットをもたらす一方で、以下のようなデメリットも存在します。
給与が高くなる
実績豊富な経験者は、一般的に経験の浅い人材よりも高い給与を求めます。そのため、人件費がかさみやすく、企業の収益に影響を与える可能性があります。
変化に対する抵抗感がある
経験者は、企業の方針や手順、技術の変更などに対し、抵抗感を持つ場合があります。これにより、新しいアイデアやプロセスの導入が遅れると、企業の成長を妨げる要因になってしまう可能性があります。
自分のやり方が確立されている
豊富な実務経験を持つ経験者の多くは、長い時間をかけて独自の仕事のやり方やルーチンを確立しています。それを変えることが困難な場合、新しいプロセスや技術を採用しにくくなる可能性があります。
柔軟性に欠ける
自分のやり方を確立している経験者は、仕事に対するアプローチの柔軟性に欠け、新しい状況や課題に適応することが難しい場合があります。この点、未経験者や経験の浅い社員のほうが、仕事に対して柔軟性があるといえます。
成長の可能性が低い
すでにキャリアのピークに達している経験者の場合、未経験者や経験の浅い社員と同じように成長することは難しい場合もあります。経験者を雇うことで、企業が長期的に社員を育成する機会が限られてしまう可能性もあります。
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経験者採用・キャリア採用が成功する5つのコツ
経験者採用・キャリア採用を成功させるコツは、綿密な計画を立て、確実に実行することです。ここでは、そのためのヒントを5つご紹介します。
仕事の要件を明確にする
経験者採用では、候補者に求める要件を明確化しておくことが大切です。実務に必要なスキルや経験、資格などの職務要件を明確に定義すれば、その職務にふさわしい候補者を引き寄せることができます。
多様な採用方法を活用する
経験豊富な候補者を幅広く集めるには、求人広告や社員の紹介、専門家のネットワークなど、さまざまな採用方法を活用することがポイントです。一つの採用方法のみならず、複数の方法を検討してみましょう。
候補者の適性を評価する
候補者を評価する際には、その人が持っているスキルや経験だけでなく、自社の文化や価値観に合うかどうかも重視することが大切です。候補者の適性を多角的に判断すれば、入社後のミスマッチを防止でき、候補者側・企業側の両方にメリットがあります。
待遇・福利厚生を充実させる
近年は、ワークライフバランスを重視する求職者が多い傾向にあります。経験者採用・キャリア採用においても、自社の待遇や福利厚生を充実させることで、優秀な人材の獲得と維持につなげられるでしょう。
成長・育成の機会を提供する
経験者の多くは、新しいチャレンジや成長の機会を求めています。このような機会を企業側が積極的に提供すれば、経験豊富な社員のエンゲージメントを維持できます。
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まとめ
2022年11月に経団連が発表した「中途採用」から「経験者採用」への呼称変更。これは採用手法の多様化する時代背景を反映したもので「中途」という言葉から派生するネガティブな印象を払拭し、成長分野への人材の移動を強化していくことがねらいです。
経験者採用は、現場が求める人材像の明確化や受け入れ態勢の整備、さらに新しい社員とのコミュニケーションを大切にすることで成功率を高め、企業の即戦力として業績の向上や成長の促進を実現できるでしょう。
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