第3回:個人オーナーの年金はどうすれば増えるのか(1)

個人オーナーの老後の年金は、どうすればもっと増やすことができるのだろうか。これまで当シリーズでは、国民年金、厚生年金といった2つの制度、また、個人オーナーと法人の代表取締役の違い、といった観点から「社長の年金」について論じてきたが、第3回となる今回は、「個人オーナーの年金増額法」について考えてみたい。

まずは保険料に“未払い”を発生させないこと

個人オーナーが加入する国民年金は、20歳から60歳になる前までの40年間が原則の加入期間とされ、その間、毎月欠かさずに保険料を払うことで満額の老齢基礎年金を受け取ることが可能になる制度である。

もしも、保険料を払っていない月があると、それに伴って年金額も少なくなってしまう。そのため、個人オーナーが老後の年金の増額を考える場合には、まずは「保険料に“未払い”を発生させないこと」が重要である。

そこで最初にやるべきことは、過去に保険料の“未払い”がないかをチェックすることだ。国民年金の保険料は支払期限が翌月末日と決められているが、仮にその期限までに払わなかったとしても、その後2年間は支払いを受け付けてもらえる仕組みになっている。

そのため、支払期限から2年を過ぎていない“未払い”の保険料があるようであれば、それを早急に払うことが、個人オーナーの年金増額への第一歩と言える。

国民年金に「任意加入」して支払い実績を伸ばす

過去に保険料の未払いがあったとしても、支払期限から2年を経過していると時効が成立するため、その保険料はもはや払う術(すべ)がない。しかし、そのような場合でも利用できる年金増額法がある。それは「国民年金に任意加入する」という方法である。

一般的には、60歳になると国民年金から脱退し、5年間の据え置き期間を経て、65歳から老齢基礎年金を受け取り始めることになる。だが、60歳の時点で保険料の支払い実績が40年に満たず、満額の老齢基礎年金を受け取れない場合には、60歳以降、本人の希望により国民年金に加入できる道も開かれているのだ。このような仕組みを「任意加入」という。

たとえば、60歳の時点で保険料の支払い実績が38年であり、満額受給できる40年には2年足りないとする。この場合には、60歳から62歳までの2年間、国民年金に「任意加入」すれば、保険料の支払い実績を40年に伸ばすことができ、満額受給が可能となる。

ただし、「任意加入」ができる最大年数は、特殊なケースを除いて60歳から65歳になる前までの5年間である。そのため、60歳の時点で保険料の“未払い”が5年よりも多い場合には、この方法でも40年の基準は満たせないので、注意が必要である。

通常の保険料に「付加保険料」をプラスする

原則として、国民年金の保険料は、誰でも同じ金額を払わなければならない。ただし、希望すれば通常の保険料に少し上乗せをして払うことも可能である。この少し上乗せをして払う保険料を「付加保険料」といい、1ヵ月当たり400円になる。

この「付加保険料」を払っておくと、払った「付加保険料」の半額が毎年の年金額に上乗せされて受け取れる仕組みになっている。

たとえば、「付加保険料」を20歳から60歳になる前までの40年間に渡って払ったとすると、支払い総額は400円×480ヵ月(=40年)で192,000円になる。「付加保険料」は払った保険料の半額が毎年の年金に上乗せされるので、このケースでは192,000円の半額である96,000円が毎年の年金に上乗せされて生涯、受け取れることになる。

払った保険料の半額が毎年の年金に上乗せされるということは、単純計算すると年金をもらい始めて2年で収支が合うということになる。そのため、この「国民年金付加年金制度」は、「2年で元が取れ、その後は得する一方の制度」などともいわれる年金増額法である。

「個人オーナーの年金増額法」は他にもある。この続きはまた、別の機会にご紹介しよう。