米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、第5回目はQ4とQ5について解説する。今回の2つを一言で表すと「承認」についてである。
米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、第5回目はQ4とQ5について解説する。今回の2つを一言で表すと「承認」についてである。
Q4.この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした。
In the last seven days, I have received recognition or praise for doing good work. (Help me see my value)
Q5.上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ。
My supervisor, or someone at work, seems to care about me as a person. (Care about me)
Q4.この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした。
In the last seven days, I have received recognition or praise for doing good work. (Help me see my value)
Q5.上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ。
My supervisor, or someone at work, seems to care about me as a person. (Care about me)
部下の目指すところを理解した上で褒める
Q4について解説しよう。まず、ポイントは「この7日間のうちに」というところだ。つまり、最低1週間に1度は、部下のよい仕事ぶりや成果について、承認する・褒めることが必要なのだ。もちろん、1週間に1度と決める必要はなく、何度でもよい。それでは、どのように褒めたらいいのだろうか。やみくもに褒めるだけでは効果は見込めないし、ピントはずれの部分を褒めてしまうと、かえって部下はあなたの観察眼を疑うだろう。必要のない時に褒めるのは、逆効果だ。
どんな時に承認する、褒める必要があるかを見きわめるには、まず部下がなにを目指して仕事をしているのかを知らなければならない。どのような仕事をしたいのか、どのような存在でありたいのか。それらをとらえて、部下の目標達成につながるような行動をしたら、すかさず認めるのである。
例えば、営業担当者であれば、目標の数字を持っている。それを達成した時に、認めるたり、褒めたりするのは当然だ。だが、それでは「最低1週間に1度」という基準には達しない。担当者が、販売目標達成に向けて効果のある行動をした時、つまり、意欲的にアポイントをとったり、商品知識をしっかり身につけたり、セールストークを磨いたり、顧客に見せる資料をわかりやすい作成したり……といった節目ふしめに、その行動を認めていくのだ。
うまく進んでいる時には、まかせておけば安心とばかりに、つい、ただ黙って見ているようになりがちだが、その時に「それでいいんだよ」、「そのままがんばれ」と言葉で伝えることによって、部下は安心して仕事に打ち込めるし、ムダな努力を繰り返してしまう隘路(あいろ)にはまり込むようなこともない。
さらに、承認する・褒めることをこまめに続けていくと、マイナスのフィードバック、つまり「叱る」についてもうまく機能するようになってくる。「いつも自分のことをしっかり見て、いいタイミングで褒めてくれる上司なのだから、耳の痛いことでも聞くべきだ」という気持ちが部下の中にうまれてくるのである。
プライベートも含め、「ひとりの人間」として気にかける
Q4が仕事に対する承認であるのに対して、Q5は「ひとりの人間として」と、さらに踏み込んだ承認となっている。別に難しく考えることはない。まずは、毎日、名前で呼びかけよう。そして、個人個人に対して違う言葉をかけよう。今まで見たQ1からQ4の内容に共通することはなんだろうか。それは、部下のことを観察し、対話を通して部下を知ろうということだ。一人ひとりを知っていれば、当然、話す内容もそれぞれ別々になる。それがすなわち、部下が「ひとりの人間として気にかけてくれている」と感じとることにつながるのだ。
さらに、部下は、あなたのもとで働く人という顔だけでなく、プライベートな顔も持っている。毎日名前を呼んで、一言二言でも個別に話をしていくと、家庭や趣味のこと、今勉強していることなども話題にのぼるだろう。プライベートな内容については、仕事のことと違ってアドバイスしたり、フィードバックしたりする必要はない。しかし、部下のワークライフバランスについても気にかけていることを、態度で伝えておくとよいだろう。
部下が女性の場合であれば、結婚・出産・育児は大きなライフイベントで、両立のために上司と相談する機会はよくあるだろうが、男性部下に対しても同様に機会をもうけなければならない。上司が、自分のワークライフバランスについて気にかけてくれるとわかると、部下は、自分が単に取り替えのきくコマではなく、ひとりの人間として尊重されていると感じるだろう。
部下がステップアップのために自己研鑽しているのであれば、それを応援しているかどうか。部下の家族に介護が必要な方がでてきた時、さらには、当人の健康に問題があった時には、仕事が続けられるよう相談にのっているか。Q5に対して、多くの部下が「完全に当てはまる(5点)」を付けるかどうかは、上司のこのような姿勢にかかっている。
著者
李怜香(り・れいか)
メンタルサポートろうむ 代表 社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー