部下への業務改善の求め方

リーダーが部下の仕事ぶりに改善を求める場合、コミュニケーションのとり方次第で、改善の進み具合が大きく異なるという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。

リーダーが部下の仕事ぶりに改善を求める場合、コミュニケーションのとり方次第で、改善の進み具合が大きく異なるという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。

一方的に問題点を指摘しても、改善は進まない

リーダーが部下の問題点を改善しようとする場合、一方的に問題点を指摘する方法は、必ずしも好ましいとはいえない。まずは、「部下自身がその問題点についてどのように思っているか」を確認することがポイントとなる。具体的には、面談などで次の2点を確認するとよい。

(1)リーダーが「問題である」と思っている点について、部下自身も「問題である」と思っているか
(2)部下自身も「問題である」と思っている場合、その原因は何だと思っているか


例えば、リーダーが部下に対して「仕事の進め方に問題があり、間違いが多い」という問題点を見つけたとする。このような場合には、
・間違いが多いことについて、部下自身も問題だと思っているか
・間違いが多い原因は何だと思っているか
について、本人の話をよく聞いてみるのである。

なぜ、このような確認を行うかというと、問題点に関するリーダーと部下の認識は、必ずしも同じとは限らないからである。

「間違いが多い」という点について部下の認識を確認すると、「間違えることはあるが、多いとは思わない」、「そもそも間違えたとは思っていない」といった意見を聞くこともある。

つまり、リーダーが「問題である」と考えている点について、部下自身は「問題である」とは考えていないこともあるのだ。

また、「間違いは多いが、従業員数が少ないのだから仕方がない」、「間違いは多いが、原因は一緒に働いている同僚にある」といったように、部下自身に「間違いが多い」という自覚はあるものの、「原因は自分にはない」と考えていることもある。

部下が「そもそも間違えたとは思っていない」、「間違いは多いが、従業員数が少ないのだから仕方がない」といった認識を持っているにもかかわらず、リーダーが一方的に改善を求めても上手くいくはずがない。

従って、部下から業務改善という“好ましい行動”を引き出すためには、まずは部下自身の話をよく聞いてみることが必要と言える。

改善策は部下自身に決めさせる

例えば、自身に「間違いが多い」という自覚があり、原因は自分の仕事の進め方にあると考えている部下がいるとする。そこで、リーダーが部下に対して「君は間違いが多いから、必ず二重チェックをしなさい」などと、一方的に指示を出したとしよう。

このような場合、リーダーに対して「分かりました」と答えた部下が、命じられた二重チェックを最初のうちは行っていたものの、いつの間にか行わなくなってしまうということがある。

なぜかというと、二重チェックは部下が“自分の意思”で「やろう!」と決めた改善策ではないからである。

人間には「他人に命じられたことは、長続きしない」という特徴がある。この特徴はビジネスの場であっても変わりがない。そのため、リーダーが一方的に部下に命じるやり方では、問題点の改善が進みづらいというケースが少なくない。

一方で、人間は「自分で決めたことは、長く続けられる」という特性も持ち合わせている。問題点に対する改善策をリーダーが一方的に与えるのではなく、部下自身に改善策を決めさせるほうが、改善効果は高くなる傾向にある。

例えば、部下に対して「間違いを減らすには、どうすればよいと思う?」と問いかけ、部下自身に改善策を考えさせるのが効果的である。

もしも、部下に改善策を考える知識や経験が不足しているのであれば、「部下に改善策のヒントを与えながら考えさせる」、「いくつかの改善策を示し、そのうちのどれを行うかを部下自身に決めさせる」などの方法もある。

いずれにしても、部下が“自分の意思”で「やろう!」と決めた改善策が、業務改善に対する “好ましい行動”、“前向きな対応”が継続しやすくなるポイントと言える。

皆さんは、部下に改善を促すとき、どのようなコミュニケーションをとっているだろうか。今一度、振り返ってみていただきたい。


大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)