シリーズで解説している、米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ」」。第4回目はQ3について解説するが、これは管理職としてもっとも必要とされる内容だ。
シリーズで解説している、米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ」」。第4回目はQ3について解説するが、これは管理職としてもっとも必要とされる内容だ。
Q3.職場でもっとも得意なことをする機会を毎日与えられている。
At work, I have the opportunity to do what I do best every day. (Know Me)
これは「適材適所」と言い換えれば分かりやすいのだが、実際は任せる仕事も部下も、それほど選択肢が多いわけではない。この問いで高得点を取るには、仕事と人のマッチングだけでなく、部下の能力を引き出す工夫が必要になってくる。
Q3.職場でもっとも得意なことをする機会を毎日与えられている。
At work, I have the opportunity to do what I do best every day. (Know Me)
これは「適材適所」と言い換えれば分かりやすいのだが、実際は任せる仕事も部下も、それほど選択肢が多いわけではない。この問いで高得点を取るには、仕事と人のマッチングだけでなく、部下の能力を引き出す工夫が必要になってくる。
面談を通して部下の強みを知り、フィードバックする
あなたは、部下について、次のようなことを知っているだろうか?・今の仕事で楽しいことは何か
・以前の仕事で楽しいと思っていたことは何か
・この会社に入社した理由は何か。この会社で仕事を続けている理由は何か
・どのようなスキル・知識を持っているか
・個人的な目標や方針は何か
・これまでに言われた賛辞で一番うれしかったものは何か
おそらく、部下全員についてこれをスラスラ答えられる上司はほとんどいないだろう。部下どころか、自分についても、このようなことを聞かれてすぐに答えられるだろうか。
まず、自分でこの質問に答えてみよう。部下の強みを知る前に、上司自身が自分の強みを自覚しておく必要がある。その上で、面談の際に部下にも尋ねてみよう。
日頃の仕事の中でさりげなく尋ねたりするのもいいのだが、やはり面談という改まった場できちんと尋ねるほうが、熟考した、より本質的な答えが聞ける可能性が高い。
さきほど挙げたいくつかの質問を参考に、部下全員に訊く項目をまとめておき、時間を作って一人ひとりと面談をするといいだろう。「忙しいからできる時にやろう」では、なかなか進まない。まずスケジュールを決め、それから質問項目を考えるくらいのスピード感がよい。
また、面談の目的は、部下のことを知ることだけではない。それを基礎として、部下にフィードバックすることが重要なのだ。
部下自身が得意だと思っていることと、上司から見てよくできていると思う部分は、案外一致しないこともある。自身がまだ知らない強みに気づかせてあげ、得意だと自覚していることについては、適切な質問でより掘り下げ、上司の見方を示す。
そのような機会を定期的に持つことによって、部下は「自分の得意なことや、強みにフォーカスして仕事をしている」という実感を持つことができるのだ。
それぞれの強みを職場全体で共有してみる
しかし、部下が「私はこういうことが得意です」と言ったとしても、現状そういった部分を活かせる仕事がない、という場合も多いだろう。それに対し、「とりあえず今はこれしか仕事がないから、これをやっておいて」と言うのでは、工夫がなさすぎる。ここは、情報を職場全体で共有することを考えてみてはいかがだろうか。つまり、部下の持っているスキル・強みを「見える化」するのだ。これは今回取り上げたQ3だけでなく、この後に続く職場内での交流に関わる質問にもよい効果をもたらすだろう。
具体的なやり方としては、アナログであれば、壁新聞方式がよいだろう。各人の写真とともに、今やっている仕事、得意な仕事、どんなスキルを持っているか、プライベートではどんな活動(スポーツ、習い事、ボランティアなど)をしているかを、簡単に書いて掲示する。今まで表彰されたことがあれば、賞状の写真も入れたりするとよい。
また、社内LANやクラウドのワークスペースで情報を共有するのもよい方法である。この場合はスペースの限界を考えなくてもよいので、情報をたくさん入れることもできるし、アップデートも簡単だ。
さらにミーティングの際、例えば「今の仕事で楽しいことは何か」といった質問にそれぞれ答えてもらい、その場で共有する、という方法もある。ただ、この場合は、「お客様に喜んでもらった」などのありがちな答えに集中してしまうこともあるので、上司のファシリテーション技術が必要になってくる。
このように、上司だけではなく、職場の全員が互いのことを知るようになると、「こういうときは○○さんに相談しよう」という職場内の交流にもつながる。互いへの信頼感というのは、頼り、頼られることで生まれるものだ。
相互理解を深め、信頼関係を構築する。これこそ、一人ひとりが「自分の得意なことを生かしている」という実感にもつながってくる方法である
李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー