米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」に関する連載の第3回目は、Q2についての解説だ。
米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」に関する連載の第3回目は、Q2についての解説だ。
Q2.仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている。
I have the materials and equipment I need to do my work right. (Equip Me)
これは比較的分かりやすいだろう。だが、短い文章を文字通り読むだけでは、高得点は望めない。管理職として、この質問に高得点を取るにはどのようにしたらよいのか、内容をくわしく見てみよう。
Q2.仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている。
I have the materials and equipment I need to do my work right. (Equip Me)
これは比較的分かりやすいだろう。だが、短い文章を文字通り読むだけでは、高得点は望めない。管理職として、この質問に高得点を取るにはどのようにしたらよいのか、内容をくわしく見てみよう。
「材料や道具=職場環境」は、重要なメッセージである
「必要な材料や道具」とは何だろうか。これについては、少し広めに考えてみよう。部下が使っている机や椅子、キャビネット、デスク上の採光、静かな環境かどうか、支給されているパソコンのスペックなど、すべての職場環境を今一度点検してみよう。もちろん予算の制約はあるが、その中でもできることはあるはずだ。
まず、今与えられている「材料や道具=職場環境」が使いやすいかどうか、快適であるかどうか、部下に尋ねてみることが第一歩である。
支給品なのだから個人の好みなど関係ない、というのは大きな間違いだ。職場は長い時間を過ごす場である。個人の好みや使い勝手が反映していなくては、使いづらいだけではなく、「自分の場所」だと感じられないだろう。
筆記用具、マウス、キーボードなど、使用頻度の高いものは特に、一律に決めるのではなく、従業員が自分の好きなものを購入して会社がその代価を支払う、という形にしたほうがよい。これは少ない費用で大きな満足感につながる方法でもある。
また、好みの問題だけでなく、古くて貧弱なスペックのパソコン、小さなディスプレイなども、業務効率に直接影響を及ぼす。
これも会社全体、部署全体で最新マシンを入れるというよりは、「どの仕事にはどのようなものが必要か」を改めて精査してみることを勧める。意外とメモリの増設だけで済むこともある。
最も重要なポイントは、「こんな道具しか与えられていないのだから、会社は自分のことを重要視していない」というメッセージを日々伝え続けるのを防ぐことである。会社が職場環境に配慮してくれると感じることは、モチベーションにも大きく関わってくる。
とは言っても、調達する部署は別にあり自分とは関係ない、と思う人もいるかも知れない。
管理職は部下にとっての上司というだけではなく、その部署の代表者である。代表者として自分の部署の意向を把握し、他部署と折衝するのは、まさに管理職の仕事だ。
「材料や道具」の中で、最も重要なものは情報
「材料や道具」といっても、目に見えるものばかりではない。最も重要なものは「情報」だ。部下に情報を与えるとき、「この職位(または非正規社員)だから、こんなことまで知っている必要はない」と考えていないだろうか。
ITの発達で、情報共有のための仕組みは整っている。しかし、情報に対する決定権を握っている上司が、それを部下に与えるかどうかの判断は、ITでは解決できない部分である。
人事上のセンシティブな情報なら別だが、業務に関わる情報はできるだけ共有すべきだ。
知識やノウハウを誰かが自分の引出しにしまい込んでいたら、他の人は一からその問題に取り組まざるを得なくなり、大きなムダが生じる。単純に業務効率という面から考えても、極力避けたい。
また、情報が属人化している時の弊害は、業務効率が落ちるだけではない。情報を持っている人が急な病気や個人的な事情で長期間休んだり、退職してしまった時、職場に与えるダメージは計り知れない。
さらに、情報が共有されないことは、職場の人間関係という側面から見ても大きな問題である。
パワハラの類型のひとつに、「必要な情報を与えない」というものがある。情報は職場のパワーゲームの武器でもあり、情報を与えないことは仕事上不利になるだけでなく、「あなたはこの職場で必要ない人間だ」というメッセージになってしまうのだ。
例えば、単なるミスで、他の人が持っている情報が誰かに届かなかったとしよう。しかし、当人が「わざとやっているのではないか」、「自分がいないところで仕事の話が進んでいるのではないか」と受け取ってしまう可能性は十分考えられる。
このようなことが続くと、職場の他の人間に対しての不信感につながり、信頼関係まで破壊されてしまう。職場の情報の“要”である管理職は、この点をしっかり頭に入れておく必要があるのだ。
以上が、Q2の求める具体的な内容である。管理職としての役割がお分かりいただけただろうか。
李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー