【世界に通用するリーダーをつくる】第三回は、グローバルリーダーと日本のリーダーの違いについて、1「自分が」を捨て「周りを」活かす、2「何をやるか」でなく「なぜやるか」、3「信頼を築く」ことでリードする、という3つのポイントに分けて考えます。
1.「自分が」を捨て「周りを」活かしてリードする
「答えを持っているのはリーダーではない、顧客が答えを持っているのだ」現在のポジションで結果を出した者が次のステップとしてリーダーに任命されることが多い。その経験と実績が「リーダーが答えを示す」ことへのメンバーの期待とともにリーダー自身の強迫観念を作ることとなる。前回紹介したH氏が本社での実績を以て日本で成功させようと考えていたならば、いかに競合に勝ち顧客の受注を取るかについて自らチームに説いてみせアクションを打ち出してリードしようとしたかもしれない。しかし顧客を最もよく知っているのは日々顧客と向き合っている営業マンである。顧客の課題に対応するためには、彼らの話をよく聴き、方策を考えさせて個々にその責任を課していくことが大切であった。
リーダーが答えを持っているのではない。顧客が答えを持っており、リーダーはそれに応えるためにメンバー全員を結集するのだ。
「リーダーはフォロワーをつくるのではない、リーダーはリーダーをつくるのだ」
部下に任せ切れず度々報告を求めて指示を出す、最後は自分でやってしまうという経験のあるリーダーは多いだろう。リーダーは「方向を決め、判断し、指示する」あるいは「率先垂範で実行する」存在という思いが強いのだ。
真のリーダーは、メンバーの多様性を認め、自分の求めるスタイルにこだわりを持たない。「この仕事は彼にはまだ無理だ」と簡単に決めつけない。「何ができるか」という長所と「何ができそうか」というポテンシャルに着目し、少し先を見据え成長を見越して役割を与える。チームにとって最適な責任の分担が決まれば、今度はメンバー自身がリーダーになる番だ。課題にオーナーシップを持ち、周りのメンバーを巻き込んで実行する。リーダーの役割はメンバーが責任を果たせるように支援することと誰もが理解している。率先垂範は部下の責任を取り上げることではない。リーダーとしてとるべき行動を自らが範となって示すということである。
リーダーはメンバーの持てる力を最大限に引き出して事を成し遂げる。リーダーはフォロワーをつくるのでない。リーダーはリーダーをつくるのだ。
2.「何をやるか」でなく「なぜやるか」でリードする
「リーダーが指示し部下が従うのではない、リーダーが質問し部下が考え実行するのだ」リーダーが部下に目標を伝えて仕事を指示し、報告を受けてさらに対応を指示する、という場面は日常多く見られるかもしれない。リーダーの意識が「XXをやらなければならない」にあると、メンバーとの対話は自ずと一方通行で「指示」になりやすい。メンバーの意識は指示された仕事を完遂することに注がれる。本来の目的・意味から徐々に離れていくことがあっても気づかない。「チェックリストにチェックをつける」というやつだ。そこには効率を求める工夫はあっても、顧客に価値をもたらすイノベーションは生まれない。メンバーのわくわくするような気持ちや使命感も育たない。
真のリーダーは「なぜこれをやるのか」を問い、全員を巻き込み議論を促す。メンバーは自分の言葉でこの仕事の意味を考え語り始める。「何を目指しているのか」に対する理解と共感が生まれ、その意味を踏まえた上でアクションが提起され実行に移されていく。そこに使命感、わくわく感とイノベーションの生まれる土壌が作られる。
リーダーは指示をしない、その代わりに質問を投げかける。メンバーはそれを自分の頭で考えてアクションを立て実行するのだ。
3.「パワー」でなく「信頼を築く」ことでリードする
「地位のパワーで人を動かすのではない、信頼を培いそれを礎に協働を進めるのだ。」リーダーの影響力はチーム内にとどまらない。上司や他部門のリーダーとの協働を効果的に進めることが、自分のチームひいては組織全体の成功に欠かせない。例えば本社の部長が支店長と新施策の展開について話し合う時、組織のヒエラルキーや当該部門長の力関係で話が進められてはいないだろうか。あるいはお互いが建前で話すことに終始し、ウラで「実は。。。」と言う状況を作ってはいないだろうか。そんな中では決して協働は生まれない。
協働の原動力は信頼である。相手の信頼を得るためには自らが相手への信頼を示すことが必要だ。相手の立場や専門性に敬意を払い、自分の考えやスタイルへのこだわりを捨て、組織のゴールに向かってお互いがどのように貢献できるかをオープンに話し合うことによって信頼関係を築いていく。
リーダーはヒエラルキーの力で人を動かそうとはしない。リーダーは信頼関係を築くことでチームを動かすのだ。