
厚生労働省は、2025年3月21日に「2025年(令和7年)4月1日から施行される主な制度変更」に関して同省サイトにて公示した。本記事では、その中から従業員と企業双方にとって大きく関わる「雇用・労働関係分野」の内容をまとめて紹介する。
「育児・介護休業法」関連の主な制度変更【6つ】
「育児・介護休業法」の改正が2025年(令和7年)4月1日から段階的に施行される。本改正は、男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための法改正となっている。6つの制度変更は以下のとおりとなる。【1】休業取得状況公表義務の拡大
〇常時雇用する労働者が300人超の事業主に対して、男性労働者の育児休業取得状況を年1回公表する義務が課される。この改正は、育児休業取得促進を目的としている。
【主な対象者】:常時雇用する労働者数が300人超の事業主
参考:●厚生労働省:育児・介護休業法について
【2】出生後休業支援給付の創設(新たな給付制度の創設)
〇子の出生後の一定期間内に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合に、既存の育児休業給付と合わせて休業開始前の手取り10割相当を支給する「出生後休業支援給付金」を受給できるようになる。
【主な対象者】:雇用保険被保険者
参考:●厚生労働省:2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します(PDF)
【3】育児時短就業給付の創設(新たな給付制度の創設)
〇子が2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合に、時短勤務時の賃金の10%を支給する「育児時短就業給付金」を受給できるようになる。
【主な対象者】:雇用保険被保険者
参考:●厚生労働省:2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します(PDF)
【4】子どもの年齢に応じた柔軟な働き方の拡充
○子の看護休暇対象年齢が小学校3年生まで拡大され、感染症による学級閉鎖なども取得理由として認められる。また、所定外労働(残業免除)の対象となる子どもの年齢も小学校就学前まで拡大される。
【主な対象者】:すべての事業主と労働者
【5】介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
○介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主が介護休業や介護両立支援制度等に関する事項の周知と利用の意向確認を個別に行うことを義務付ける。
○介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、労働者等への介護休業や介護両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付ける。
【主な対象者】:すべての事業主と労働者
【6】次世代法に基づく一般事業主行動計画に関する見直し
○次世代法に基づく一般事業主行動計画の策定時に、育児休業等の取得や労働時間に係る状況把握・数値目標の設定を事業主に義務付ける。
【主な対象者】:一般事業主行動計画を策定する事業主
参考:●厚生労働省:育児・介護休業法について
「雇用保険」関連の主な制度変更【3つ】
【1】雇用保険料率の改定
○雇用保険の失業等給付に係る保険料率が0.1%引き下げられ、全体で14.5/1,000(労働者負担:5.5/1,000、事業主負担:9/1,000)となる。この改定により、企業と従業員双方の負担が軽減される見込みである。
【主な対象者】:事業主及び雇用保険被保険者
参考:●厚生労働省:事業主・被保険者の皆さまへ 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内(PDF)
【2】高年齢雇用継続給付の給付率引き下げ
○高年齢雇用継続給付の最大給付率が各月の賃金額の15%から10%に引き下げられる。この変更は、60歳以上65歳未満の被保険者が対象となる。
【主な対象者】:雇用保険の基本手当の受給資格者
参考:●厚生労働省:令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します(PDF)
【3】自己都合離職者の給付制限期間短縮
○自己都合離職者の基本手当(失業給付)の給付制限期間が2か月から1か月に短縮される。また、自己都合離職者が職業訓練を受けた場合には、給付制限なく基本手当を受給できるようになる。
【主な対象者】:雇用保険被保険者
参考:●厚生労働省:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます(PDF)
制度変更による企業への影響と対応
ここまでで紹介した制度変更は、企業にも多くの影響を及ぼすと考えられる。特に、雇用保険料率改定や育児・介護休業法改正によって、人事戦略や給与計算システムへの対応が必要となるケースもあるだろう。想定される具体的な対応ポイントは、以下の通り。
制度変更に伴う企業の対応ポイント
●計算システム更新:雇用保険料率改定に伴うシステム変更など
●育児・介護関連規程見直し:育児・介護休業法改正内容を反映した就業規則や規程整備
●従業員への周知:新しい制度内容に関する、従業員への適切な周知・利用促進
●計算システム更新:雇用保険料率改定に伴うシステム変更など
●育児・介護関連規程見直し:育児・介護休業法改正内容を反映した就業規則や規程整備
●従業員への周知:新しい制度内容に関する、従業員への適切な周知・利用促進
厚生労働省による令和7年4月施行の制度変更は、従業員と企業双方にとって重要な影響を及ぼすものになりそうだ。人事担当者には、改正点を正確に把握し、自社内で必要な準備を進めることが求められる。詳細情報や関連資料は、上述の参考リンクや厚生労働省公式サイトで確認できる。随時チェックして、従業員からの問い合わせや社内での制度設計に活用できるよう、備えておく必要があるだろう。
出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51380.html
出典: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51380.html