
一般財団法人 労務行政研究所は2025年2月5日、「賃上げ等に関するアンケート調査」の結果を発表した。同調査は1974年から毎年実施されており、賃金交渉の動向把握を目的とした参考資料として、労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に行っているという。本稿では、2025年の調査結果の一部を抜粋して紹介する。
“賃上げ予想額”の平均は「1万5057円」、“賃上げ予想率”は「4.6%」
はじめに、東証プライム上場クラスにおける「2025年の賃上げ見通し」について見ていくと、“賃上げ予想額”における全回答者485人の平均は「1万5057円」、“賃上げ予想率”は「4.6%」(定期昇給分を含む)だった。賃上げ予想率は2024年の実績値より下回るものの高水準となっている。また、労使別に見た平均値では、労働側は「1万5384円/4.70%」、経営側は「1万4856円/4.54%」で、労働側の方が528円/0.16ポイント上回っている。
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「定期昇給」の実施予定は92.2%、「ベースアップ」は55.2%に
次に、「自社における2025年定昇(定期昇給)・ベア(ベースアップ)の実施」に関する結果を見ていくと、25年の定期昇給について、労働側では「実施すべき」、経営側では「実施する予定」がともに約9割と大半を占めた。一方、ベースアップについては、労働側では「実施すべき」が94%と大半を占めたのに対し、経営側では「実施する予定」が55.2%となった。「実施しない予定」の14.7%を大きく上回ったものの、ベースアップについては労・使で需給の相違があるようだ。
2025年春季交渉、「賃上げ」以外の争点は「人材採用・確保」か
最後に、「2025年春季交渉で課題・焦点となる人事施策」を調べるべく、25年春季交渉において「賃上げ」以外で課題・焦点になると思われる人事施策7項目を挙げ、それぞれについて「交渉で話し合う予定があるか」を労・使それぞれに尋ねている。まず「話し合う予定」の割合を見ると、労働側では「(2)人材の採用・確保」が47.3%で最多となり、以下は「(1)時間外労働の削減・抑制」が30%、「(6)福利厚生の見直し」が29.3%で続いている。一方、経営側では全項目において「話し合う予定」の割合が労働側より少ないものの、労働側と同様に「(2)人材の採用・確保」が31.5%と最多となった。以下、「(1)時間外労働の削減・抑制」が20.8%、「(7)育児・介護関連施策の導入・拡充」が20%で続いている。
本調査から、2025年の“賃上げ予想額”の平均は「1万5057円」、“賃上げ予想率”は「4.6%」であることが分かった。また、「定期昇給」の実施予定は92.2%であるのに対し、「ベースアップ」は55.2%となり、労働側のニーズとの乖離が見られた。2025年春季交渉では「賃上げ」とともに争点になると考えられているのが「人材採用・確保」だが、安定した採用に向けては、2025年も引き続き定期昇給やベースアップによる賃上げが各社の課題となりそうだ。
出典:https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000088548.pdf
出典:https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000088548.pdf