株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、2024年11月27日に「働く人のリーダーシップ調査2024」の結果を発表した。近年、リーダーシップのあり方も多様性する中、本調査は働く人が支持する「良いリーダーの要素」を明らかにすることを目的に同年9月に実施された。回答者は、従業員規模50名以上の企業に勤める25~59歳の正社員合計7,405名となる。
約3割が理想の上司は「調和型リーダー」と回答
本調査の前提として、リクルートマネジメントソリューションズはリーダーシップを3つの軸【集団との関わり方、課題への取り組み姿勢、判断のよりどころ】に分類し、8つのタイプ【調和型、安定型、共創型、民主型、人情型、実行型、情熱型、開拓型】と定義している。それぞれのタイプの特徴・性質は、同社の「管理者適性検査NMAT」のフレームワークを用いて分析されており、本記事では、同社の調査結果を引用して伝える。まず、同社が「理想の上司のリーダーシップタイプ」について質問すると、29.8%が「調和型リーダー(調整×維持×心情)」と答えた。次いで「安定型リーダー(調整×維持×理性)」が26.7%で、この2タイプで全体の半数以上を占めた。多くの従業員が、大きな変革を起こすよりも現状を維持しつつ適宜改善に取り組む上司像を理想としているという傾向が見て取れる。
年代による「理想の上司像」の変化
次に、この結果を回答者の年代別で分析すると、年齢が上がるにつれて「安定型リーダー」や「民主型リーダー(調整×変革×理性)」を理想とする割合が増加する傾向が見られた。これは、キャリアを積むにつれて、上司の判断に「心情よりも理性」を求めるようになることを示唆している。“現実の上司”と理想にギャップあり
続いて、「直属の上司のリーダーシップタイプ」について聞いた結果では、1位は「調和型リーダー」が31.4%、2位が「安定型リーダー」21.6%と理想と同じ順だった。一方で、3番目に多かったのは「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」の12%だった。先述の、理想とするリーダーの第3位は、「民主型リーダー(調整×変革×理性)」(15.1%)だったことから違いが見られた。同社は、このギャップについて『一番多い「調和型リーダー」と正反対の性質を持つ「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」が、実際の直属上司においては3番目に多いというのは、組織というものの面白さを感じさせる結果』だと分析している。組織の多様性や、働く人は現状と異なるリーダーシップスタイルの必要性を感じているのではないかと推察する。信頼感と昇進意欲に影響を与えるリーダーシップタイプ
さらに、同社は「回答者の上司への信頼感」について尋ね、その得点を上司のリーダーシップタイプ別に可視化した。すると、部下からの信頼感が最も高かったのは「民主型リーダー」(4.32)で、「調整」の特性を持つリーダーに信頼を寄せる人が多いという傾向になった。
次に、「回答者の昇進意欲」を尋ね、その得点を上司のリーダーシップタイプ別まとめた結果では、部下の昇進意欲を高めるのは「共創型リーダー(調整×変革×心情)」(3.8)や「情熱型リーダー(統率×変革×心情)」(3.65)となっていた。これら2つのリーダー像は、積極的な変革を推進しつつ、心情を判断の拠り所としている点が共通していると考えられる。
その他、同社が調査結果の傾向を分析したところ、事業環境の安定性によってリーダーシップタイプの分布に違いがあることも明らかになったという。安定した環境では「調和型リーダー」が多く、変動の激しい環境では「民主型リーダー」や「共創型リーダー」が多い傾向だったとのことだ。
今回の調査結果では、理想・現実共に「リーダーシップ」の定義が多様化しており、部下自身の特性によってもフォロワーとして理想とするタイプが異なることがうかがえた。組織の競争力を高めるうえでリーダーの存在が重要なのは間違いないと考えられるが、今後リーダー育成や適材適所の人材配置を考える上で、本調査の知見を参考に、自社の傾向と比較・検証してみても良さそうだ。
今回の調査結果では、理想・現実共に「リーダーシップ」の定義が多様化しており、部下自身の特性によってもフォロワーとして理想とするタイプが異なることがうかがえた。組織の競争力を高めるうえでリーダーの存在が重要なのは間違いないと考えられるが、今後リーダー育成や適材適所の人材配置を考える上で、本調査の知見を参考に、自社の傾向と比較・検証してみても良さそうだ。