株式会社東京商工リサーチは2024年11月8日、2024年「後継者不在率」調査の結果を発表した。本調査では、同社の企業データベース(約400万社)のうち、2022年以降の後継者に関する情報が蓄積されているデータから17万135社を抽出、分析している。なお、「後継者不在率」は事業実態が確認できた企業を対象に、後継者が決まっていない企業の割合を示しているという。
2024年の「後継者不在率」は62.15%。代表者が「60代」でも半数近くに
企業の長期的な存続において避けて通れないのが、“後継者問題”だ。後継者の選定や、その後の事業承継など、経営を後継者に引き継いでいくには多くの困難が待ち受けているが、そもそも後継者候補となる人材自体がいなければ、事業承継のための準備を進めることすらできない。それでは現在、実際に“後継者不在”状態に陥っている企業はどの程度あるのだろうか。東京商工リサーチの調査では、2024年の「後継者不在率」は62.15%で、前年(61.09%)から1.06ポイント上昇していた。同社によると、不在率の上昇は廃業を念頭に置いた「積極的不在」だけでなく、事業承継を考慮しない若年起業家の増加や承継による代表者の若返りなど、さまざま要素が絡み合っているという。
また、代表者の年齢別に後継者不在率を集計した結果によると、代表者が50代の企業で71.8%、60代でも47.8%と、半数近い企業で後継者不在が明らかになっている。同社はこれに対し、「業歴を重ねた企業の代表者が高齢の場合、後継者不在を背景に倒産や突発的な廃業、債務不履行に繋がる恐れもある」としたうえで、「円滑な事業承継を1、2年で成し遂げることは難しく、高齢代表者へのフォローの重要性が増している」と述べている。
なお、後継者不在率は、調査を開始した2019年が55.61%、2020年が57.53%、2021年が58.62%、2022年が59.90%、2023年が61.09%と、ここまで右肩上がりで推移しているという。
産業別のワーストは「情報通信業」、業種別では「インターネット附随サービス業」に
また、「後継者不在率」を産業別でみると、10産業すべてで55%を上回っている。ワーストとなったのは「情報通信業」の77.32%(前年77.33%)で、前年を0.01ポイント下回る結果だ。この結果に対して東京商工リサーチは、「代表者が比較的若いソフトウェア開発などが含まれることが不在率を押し上げている」との見解を示している。さらに、業種別の結果を見ていくと、不在率ワーストは「インターネット附随サービス業」の88.67%だった。上位10業種では、「無店舗小売業」や「情報サービス業」、「通信業」などが並ぶ結果となっている。そのほかに不在率が低い業種としては、「協同組織金融業」(29.42%)、「協同組合」(34.47%)、「漁業」(37.68%)などが目立っていた。
都道府県別では地域によって大きな差も
最後に、都道府県別で「後継者不在率」を集計した結果では、ワーストとなったのは「神奈川県」の75.60%(前年74.78%)だった。次いで、「東京都」が72.54%(同71.96%)となり、これら上位2都県のみが70%を超える結果であったことから、企業が多く設立される大都市ほど、後継者の不在率が高い様子が見てとれる。他方、後継者不在率が最も低くなったのは、「長崎県」で32.54%(同31.36%)だった。
本調査から、2024年の「後継者不在率」は62.15%と前年より微増していることがわかった。また、特に後継者不在が深刻は産業としては「情報通信業」、業種としては「インターネット附随サービス業」がワーストとなったほか、都道府県別の結果でも大都市圏で後継者不在の傾向が顕著に表れるなど、地域による差が見られた。日本全体として後継者難の状況が続くなか、事業譲渡やM&Aなども視野に入れつつ、事業承継について早めの準備が必要となりそうだ。