株式会社野村総合研究所は2024年9月18日に、「有配偶パート女性の就労実態」に関する調査結果を発表した。調査は、パートもしくはアルバイトとして働く、配偶者のいる全国の20~69歳の女性を対象に、2024年8月23日~25日に実施したもので、計2060人から回答を得ている。2023年秋から始まった政府による「年収の壁・支援強化パッケージ」を受けて、働き方はどのように変わっているのだろうか?
配偶者のいるパート・アルバイト女性の6割超が「就業調整中」
パートもしくはアルバイトの形態で働く人のうち、家族の社会保険の扶養内で働くために就業時間や日数を減らす「就業調整」を行う人は少なくない。野村総合研究所(以下、NRI)は、人手不足および経済成長と「就業調整」および「年収の壁」の実態を明らかにすべく、2022年より調査を行ってきたという。本記事では調査結果をもとにした現状について、発表された見解と併せて紹介する。
まず、NRIが「自身の年収額を一定の金額に抑えるために、就業調整をしているか?」と尋ねたところ、2024年8月調査では全体の61.5%が「調整している」と答えた。この割合は2022年9月に実施されたアンケート結果とほぼ変わらず、引き続き6割以上が「就業調整」を行った上で勤務している実態が明らかになった。
“就業調整する人”の6割が「1年前より時給上昇」
次に、「就業調整」をしている人に「昨年と比べて時給が上がったか」を聞いたところ、「(時給が)上がった」と答えた人の割合は60.6%となった。賃上げ等による時給上昇で「就業調整」はさらに増加
NRIは続けて、前問で「昨年と比べて時給が上がった」とした人に「時給上昇を理由にさらに就業調整をしたか」を尋ねた。その結果、51.3%が「(さらに就業調整を)した」とし、23.3%が「まだしていないが、今後する予定」と回答した。前問の結果を踏まえると、時給上昇があった人の7割以上(74.6%)が、さらなる就業調整をした、もしくは今後する意向であることがわかる。
今回の調査結果では、処遇改善の時給上昇に伴って「さらなる就業調整」をする意向のある人(実施ありと今後実施予定の合計)も一定数存在することがうかがえた。調査から明らかになった実態について、NRIでは、「今後さらに就業調整をする可能性がある人は約210万人と推計しており、これにより人材不足が進むことも示唆される」との見解を示した。「年収の壁」の基となる社会保険制度が作られた時代と現在では、経済状況が大きく変化している。このことを踏まえると、働く意欲を下げることにもつながりうる現状の制度や仕組みが適切なのか、働き手の声も確認していく必要がありそうだ。
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