合同会社triは2024年6月18日、中小企業経営者を対象とした「従業員の育成・定着」に関する実態調査の結果を発表した。調査期間は2024年5月20日~21日で、従業員数100名以下の会社経営者330人より回答を得ている。調査結果から、中小企業経営者における、自社の従業員の育成・定着に関する意識や実態が明らかになった。
7割以上の中小企業経営者が「会社を成長・拡大させたい」と考えている
近年の企業経営においては、“資本”としての人材の価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」の重要性が叫ばれている。これは中小企業にとっても重要視されているが、資本や人的リソースの潤沢な大企業と、そうでない中小企業では状況が異なるのが実情だという。そうした事情があるなか、中小企業の経営者は自社の従業員の育成・定着についてどのような意識を持っているのだろうか。はじめにtriが、「会社を成長・拡大させていきたいと考えているか」を尋ねると、「はい」との回答が73.9%で過半数を上回る結果となった。多くの中小企業経営者が、「会社を成長・拡大させていきたい」と考えていることが明らかになった。
「人」に関する課題を感じる経営者も多数に
次に同社は、「会社経営をする上で、現在課題に感じていること」を尋ねている。すると、最多となったのは「売上・利益の伸長」で53.6%、以下は「人材育成・定着」が33.6%、「人材採用」が26.6%となった。会社経営において不可欠な「売上・利益」に続くのは、「人」に関する課題であることがわかる結果となっている。従業員の育成・定着のための施策、7割が「未実施」
続いて、同社が「従業員の育成・定着のための施策を行っているか」と尋ねたところ、「はい」が31.8%、「いいえ」が68.2%となった。7割弱の経営者が、従業員の育成・定着のための施策を実施していないことがわかった。従業員の育成・定着に向け、「社内レクリエーション」や「1on1ミーティング」を実施か
また、「従業員の育成・定着のための施策を行っている」とした人に対し、「具体的にどのような施策を行っているか」を尋ねると、トップは「社内レクリエーション」で40.9%だった。以下は、「1on1ミーティング」(37.1%)、「OJT」(35.2%)、「社内の従業員を講師にした研修・勉強会等」(33.3%)、「社外の講師を招いた研修・勉強会等」(30.4%)と続いている。施策にあたっての障壁は「費用」のほか、「必要性を感じない」との声も
次に、「従業員の育成・定着のための施策を行っていない」とした人に、「施策を行っていないのは何が障壁となっているか」と尋ねている。すると、「費用を捻出てきない」が24.8%で1位となった。以下は、「育成や定着のための施策は不要だと考えている」(23.1%)、「何をしたら良いかがわからない」(20.4%)と続いている。この結果に対し同社は、「費用面の捻出が難しいと考えている方は多いものの、そもそも特別な施策を講じる必要性を感じていない方や何をしたら良いかがわからず、施策を講じることができていない方も一定数いる」との見解を示している。会社の成長・拡大に向け、「人」の重要性を感じる人が多数に
最後に同社は、「会社の成長・拡大のために重要だと考えるファクター」を尋ねた。すると、「従業員の成長・定着」が1位で45.4%、以下は「自分自身の成長」が36.0%、「人材採用」が27.8%となった。「会社経営をする上での課題」に関する質問と同様に、会社の成長・拡大にも「人」に関するファクターを重要視している様子がうかがえた。
本調査から、中小企業経営者の実態や本音が見えた。7割以上の中小企業経営者が会社の成長・拡大に意欲的な姿勢を見せつつも、それに必要な「従業員の育成・定着」に向けた施策を実施できている企業は少ないようだ。中小企業においても人的資本経営が叫ばれるなか、中小企業経営者においてもより自社の従業員の成長・定着に目を向けた施策の検討が必要となりそうだ。