株式会社リクルートは2023年9月27日、「企業人事の採用に関する調査」から、第2弾として「採用プロセス」に焦点を当てた分析結果を発表した。調査期間は2023年3月30日~31日で、2022年度に中途採用を実施した企業の人事担当者840名より回答を得ている。本調査により、採用プロセスにおいて、人材を求めている部門責任者等が関わっている企業と関わっていない企業での、採用成功度の違いなどが明らかとなった。
<採用戦略の立案>配属部門の当事者が関わることで採用が成功する企業は約6割に
中途採用は一般的に、「採用戦略の立案」、「採用予算の管理・運用」、「募集要項の考案・作成」、「採用手法の選定」、「応募者の選考(書類選考・面接・合否確定)」、「内定出し」、「内定者のフォロー」のプロセスで実施される。こうした採用プロセスの中、企業の配属部門の当事者はどのように関わっているのだろうか。はじめにリクルートは、中途採用における「採用戦略の立案」について誰が関わっているかを聞き、「人材を求めている部門(責任者または担当者)が採用に関わっているか否か」と“採用成功”の関係性を分析した。すると、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業で57.3%、関わっていない企業で42.9%だった。人材の配属部門の当事者が採用に関わっている企業のほうが、採用成功率が14.4ポイント高かった。
これを受け同社では、「実際の配属部門の当事者が、採用プロセスの最上流である戦略立案から採用に関わることで、現在の事業から見て足りていないことは何か、それを解決していく人材に必要なスキル面や人物面の詳細な検討といった人材要件定義が早い段階で可能となる」とした上で、「その結果、書類選考基準や面接内容に反映されることで、採用成功につながっていると考えられる」との見解を示している。
<応募者の選考>配属部門の当事者が関わることで成功率が6.5ポイント上昇
次に同社は、「応募者の選考(書類選考・面接・合否確定)」について誰が関わっているかを聞き、「人材を求めている部門(責任者または担当者)が採用に関わっているか否か」と“採用成功”の関係性を調べた。その結果、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業では51.1%、関わっていない企業では44.6%と、当事者が採用に関わっている企業のほうが6.5ポイント高かった。この結果から同社は、「実際の配属部門の当事者が応募者の選考に関わることで、現場が求める人材と中途採用者のミスマッチを減らすことができる。一方、求職者は実際に一緒に働く人との対話を通じて、仕事内容や期待される役割、その現場の雰囲気、人柄などがわかることで、実際に働くリアルなイメージが湧くといったメリットがあると考えられる」との見解を述べている。
<内定者フォロー>配属部門の当事者の関わりは他プロセスと比べて有意差見られず
続いて同社は、「内定者のフォロー」について誰が関わっているかを聞き、「人材を求めている部門(責任者または担当者)が採用に関わっているか否か」と“採用成功”の関係性を分析した。すると、「採用が上手くいっている」との回答は、配属部門の責任者または担当者が採用に関わっている企業では48.4%、関わっていない企業では46%と、当事者が採用に関わっている企業のほうが2.4ポイント高かったものの、他の採用プロセスと比べて顕著な差は見られなかった。<内定者フォロー>役員・人事部の責任者が関わることで採用成功率が上昇か
そこで同社が、「内定者のフォロー」について、「役員または人事部の責任者が採用に関わっているか否か」と“採用成功”の関係性を調べた。すると、「採用が上手くいっている」との回答は、役員または人事部の責任者が採用に関わっている企業では55.7%、関わっていない企業では41.4%と、14.3ポイントの差が見られた。これを受け同社では、「内定者フォローのプロセスでは、求職者にとって本当にその企業で働いていくかについて、検討のリアリティが一段と増す。このプロセスにおいて、転職後の具体的な仕事内容、中長期観点でその企業が大きくどのような方向性・戦略を目指しているか、その中で自分はどのようなキャリアパスが望めるかなどについて、期待や不安を感じる人が多いだろう」とした上で、「このような場面では、企業の戦略を司る経営陣や多くの社員のキャリアを知る人事責任者が、しっかりとその人の質問や不安を解消することが重要であり、そのような働きかけの有無が採用成否の結果に表れているのではないか」と推測している。
中途採用のプロセスにおいて“人事部以外の関わり”は少ないことが明らかに
最後に同社は、「中途採用に関わっている人の割合」をプロセス別に集計した。それぞれの関係者がどのプロセスに最も関わっているのかを見ると、役員・経営者は「応募者の選考」で28.9%、人事部の責任者は「応募者の選考」で47.7%、人事部の担当者は「内定者のフォロー」で48.5%、部門の責任者は「応募者の選考」で28.3%、部門の担当者は「内定者のフォロー」で20.8%という結果だった。いずれの採用プロセスにおいても、人事部以外が3割以下と、関わりが少ない実態が明らかとなった。また、「採用が上手くいっている」と回答した企業に対して、「新しく取り組んだ施策や工夫点」を自由回答で尋ねた。すると、「応募者からの細やかな要望の聞き取り」、「キャリアパスの明確な提示」、「応募者のニーズにフレキシブルに対応」といった、求職者に寄り添う姿勢が見られたという。
本調査結果から、「中途採用が上手くいっている」企業では、採用プロセスである戦略立案、応募者の選考、内定者フォローにおいて、人事担当者以外にも事業部門の責任者や役員が関わっていることがわかった。「求職者に寄り添う採用」を行っていくためにも、経営陣、人事担当者、現場が三位一体となって採用体制やプロセスを整えることで、中途採用の成功へつながるだろう。