Indeed Japan株式会社は2023年9月21日、「男性育休」に言及する求人動向の調査結果を発表した。調査期間は2019年7月~2023年7月で、同社の求人サイトにおいて「育休」または「男性育休」について言及する求人割合を年月ごとに算出している。本調査により、「育休」および「男性育休」に言及する求人割合の4年間の動向とあわせて、雇用形態別・職種カテゴリ別に見た求人割合が明らかとなった。
求人の割合は「育児・介護休業法」の段階的施行にあわせて増加傾向に
政府では、「男性の育児休業取得率を2025年度までに50%、2030年度までに85%に引き上げること」を目標に掲げ、育児・介護休業法の改正や男性の育休取得促進を図ってきた。政府のこうした男性育休の取得促進に関する動きは、求人にも影響しているのだろうか。そこでIndeedは、「『育休』『男性育休』に言及する求人割合」の動向を調査した。なお、2023年7月時点の「男性育休」に言及している求人割合(3ヵ月移動平均)について、以下の3つの時期を基準として調査を行っている。
(1)2021年6月:「改正育児・介護休業法」成立
(2)2022年10月:「産後パパ育休」創設
(3)2023年4月:男性の育児休業等取得状況の公表義務化(常時雇用する従業員が1,000人を超える企業が対象)
また、求人で言及されている「男性育休」について、本調査では「男性」および「パパ」と、「育休」、「育児休業」、「育児休暇」を組み合わせたキーワード、および「パパ休暇」などのうち、いずれかの文言を含む求人を指している(例:「男性育休」、「男性の育児休業」、「パパ育休」など)。
はじめに同社は、自社の運営する求人サイトに掲載された求人のうち、「育休」に言及する求人割合の推移をまとめた。すると、「改正育児・介護休業法」が可決・成立した2021年6月の4.62%と比較して、2023年7月は25.06%と、およそ5.4倍に増加していることがわかった。
「男性育休」への言及は、2021年6月の「改正育児・介護休業法」の成立以降、段階的な施行に伴い増加傾向にある。詳細を見ると、2021年6月の0.17%と比較して、2023年7月は0.4%と、2.4倍の増加となった。また、2022年6月(0.19%)から急激に増加し、「産後パパ育休」が創設された2022年10月(0.35%)を経て、2022年12月にピーク(0.43%)となった。その後は減少が見られたものの、男性育休の公表義務化があった2023年4月を境に、直近では再び増加傾向に転じている。
あわせて、育児休業等の取得状況公表義務化(大企業が対象)が開始した2023年4月(0.32%)と比較すると、2023年7月(0.4%)には3ヵ月間で1.2倍に増加していた。
「正社員」での求人は改正法成立の2021年6月から2.3倍に上昇
2023年4月以降、正社員以外の育児休業取得要件が緩和され、正社員と同様の育休取得条件となった。そこで同社は、「『男性育休』に言及する求人割合」を雇用形態別に調査した。その結果、2023年7月の求人割合は、「正社員」では0.69%、「正社員以外」では0.16%と、正社員以外の求人では言及割合が低いことがわかった。正社員の求人割合を見ると、2021年6月(0.3%)と比較して、2023年7月(0.69%)は2.3倍に増加していた。2022年10月の「産後パパ育休」創設を前に、2022年6月(0.34%)から急激に増加し、2022年12月にピーク(0.85%)を迎えた。その後、減少が見られたものの、男性育休の公表義務化があった2023年4月を境に直近では再び増加傾向にある。
また、正社員以外の求人割合は、2021年6月(0.15%)から減少し、その後は横ばいだったものの、2022年10月(0.1%)から徐々に増加、2023年2月(0.19%)にピークとなった。2022年10月(0.1%)と比較して、2023年7月(0.16%)は1.7倍の増加となっている。
これらを受け同社は、「法改正により、特に正社員において『男性育休』の取得促進の動きが広がり、求人内で言及する割合も増加していることがうかがえる。正社員以外の求人における『男性育休』の言及割合はまだ小さく、ここ数年間での推移を見ると増加率は大きくないものの、2022年10月以降は正社員以外でも少しずつ見られている」との見解を示した。
2023年に求人が多いのは「介護」、「ドライバー」など。人手不足が課題の職種が上位に
最後に同社は、「『男性育休』に言及する求人割合」を、2023年7月時点と2021年6月時点で職種カテゴリ別に比較した。すると、2023年7月時点で最も多かったのは「介護」で、1.41%だった。以下、「ドライバー」が1.15%、「看護」が1.11%と続いた。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和5年5月)の概況」において、人手不足にある業種に該当する介護・看護職やドライバー職は、「男性育休の取得しやすさ」を求人でも訴求することで、採用企業が求職者にワークライフバランスをとりやすい職場環境をアピールするなど、求人の魅力づけをしていると考えられる。また、上位には介護や看護など女性も働く職種においての言及も多かった。特に男性が多い職種に限るという傾向はないことがわかる。
2023年7月時点の上位10種の中で、「改正育児・介護休業法」が成立した2021年6月時点の割合との割合が多かったのは「経営」(0.86%)、「介護」(0.3%)、「コンサルティング」(0.24%)だった。これらは他の職種と比べて早い時期から求人内で「男性育休」について言及していることが明らかとなった。
本調査結果から、「育休」や「男性育休」に言及する求人割合は、政府による「改正育児・介護休業法」の段階的施行を境に増加していることがわかった。さらに、「産後パパ育休」創設によってピークを迎え、一度は落ち込んだものの、「育児休業等取得状況公表義務化」によって再び増加傾向に転じたことも明らかとなった。男性育休への関心の高まりは、求人の面からもうかがえる。人材確保を目指す企業では、求人に「男性育休」に関するPRを盛り込むことも検討してみてはいかがだろうか。