日立、「特許情報分析サービス」により知財情報を生かした経営・事業戦略の立案を支援。特許業務の専門スキル不要で分析可能に

株式会社日立製作所は2023年9月6日、「特許情報分析サービス」の提供を同年10月10日より開始すると発表した。本サービスは、日立が提供してきた特許調査支援サービスの中で、独自のテキスト解析技術などAIを用いて高精度な解析データを活用し、技術動向などを分析するものだ。これにより、顧客の知的財産情報(以下、知財情報)を生かした価値創出や、経営・事業戦略の立案を支援していくという。

これまでの知見やノウハウを活かし、知財情報を活用した価値創出・経営戦略等の立案へ

近年、事業のグローバル化や顧客ニーズの多様化が進み、企業にはさらなる国際競争力の強化や持続可能な経営への変革が求められている。そのような中、2021年6月に改定されたコーポレートガバナンス・コードで新たに知的財産への活用に関する記載が追加されるなど、経営・事業戦略の立案に有益な情報を多く含む知財情報の活用を重要視する動きが高まっている。

知財部門や企画部門は、知財情報などを活用し経営・事業戦略の立案を図るIPランドスケープ(※)実施に必要となる知財情報の分析推進が期待されている。しかし、知財情報の分析は複雑で難解であり、必要な専門知識やスキルを持つ人材の不足や、特許文献を読み解く膨大な時間とコストを要することが課題になっていた。

日立はこれまで、45年以上にわたり行ってきた特許関連システムの開発ノウハウを活用し、知財部門や発明者のグローバルな特許文献調査を支援するサービスを提供してきた。あわせて、発明提案から権利維持まで社内の一連の特許業務を一元管理する知的財産管理システムも展開している。また、同社は「日立知財ソリューション」により、グローバルでの公開特許文献の調査や、社内での知財管理の支援も行ってきた。

そして今回、「日立知財ソリューション」を拡大し、特許情報の調査と管理の両面を支援してきた知見・技術を用いて、より多くの人が容易にIPランドスケープに取り組めるよう、顧客の課題解決に向けた「特許情報分析サービス」の新たな開発に至ったという。

※ランドスケープ:知財情報(特許情報など)と、非知財情報(マーケット情報や研究開発情報など)を統合的に分析することで、ビジネスの現状俯瞰・将来展望を示し、経営戦略や事業戦略に役立てる手法のこと。

独自技術と既存サービスの連携で、熟練度を問わず分析が可能に

「特許情報分析サービス」とは、日立の独自技術や既存サービスとの連携により、特許業務の熟練度にかかわらず、高精度かつ効率的な分析を支援するものだ。これにより、技術動向や自社の競争力などをタイムリーに把握できる。さらには、新たな価値創出や迅速な経営・事業戦略の立案のための情報収集に貢献するとしている。主な特長は以下の3つだ。

(1)目的に応じた適切なグラフセットの自動生成で、高精度なデータ分析を実現
特許分析が難しいとされる要因には、目的は定まっていてもどのようにグラフ化するか悩むことがある。本サービスでは、「競合他社分析」や「技術トレンド検索(今後実装予定)」といった分析テーマに応じたグラフセットをあらかじめ用意している。そのため、利用者は目的に合ったテーマを選択すると、適切なグラフで容易に可視化できる。

また、特許文献の内容は、分野や出願人により用いられる言葉が大きく異なることで、高精度なデータ分析が難しいとされている。同社は「AI読解支援機能」などの提供を通じ、これまで整理・加工し蓄積してきた解析データをもとに解析するため、高精度な分析へと導くことができるとのことだ。

(2)専門スキルがなくとも、効率的な分析推進を支援
特許分析の専門知識やスキルを持たない利用者を支援するべく、分析結果を可視化したグラフを読み取るだけのガイドや分析の進め方を提示する機能を提供する。これにより、利用者はさまざまな観点で分析結果が見られ、新たな気づきが得られやすくなるという。また、システムから提案される次のアクションを参考にすることで、効率的な分析が可能になる。
日立、「特許情報分析サービス」により知財情報を生かした経営・事業戦略の立案を支援。特許業務の専門スキル不要で分析可能に
(3)自社の既存サービスと連携し、作業時間の大幅短縮・IPランドスケープ推進に貢献
特許情報の分析を行うには、目的に合った特許文献の収集を行い、社内の知財データを紐付けるといったデータ加工の準備が必要だ。そのため、分析実施までに手間と時間を要することが課題となっていた。本サービスは、分析に必要な集合データを作るためのデータの紐づけやデータ加工などの作業時間を大幅に短縮するため、公開特許文献の調査を支援する自社サービスとシームレスな連携を実現した。

また、公開特許情報と社内の知財情報をかけ合わせた分析により、今後は「将来的な特許取得目標の達成に必要な投資額のシミュレーション」も実装し、IPランドスケープ推進に貢献するという。

同社は、今後も企業の経営・事業戦略の立案に携わるさまざまな立場の人が利用できるサービスを目指すと同時に、顧客からのフィードバックをもとに、本サービスの機能拡張や改良を行っていくとしている。あわせて、特許関連システムをさまざまな業種の顧客に提供する中で培ってきた豊富な実績・ノウハウと、最新デジタル技術などを用いて、「日立知財ソリューション」を継続的に進化させていく考えだ。これにより、グローバル展開を推進する企業の知財活用を支援し、経営・事業目標の達成に貢献していくという。

経産省では、国産業の競争力を強化するべく、知的財産の創造や保護、活用を促進していくことで経済および文化の持続発展を目指すことを、喫緊の課題としている。そのような中、本サービスの活用はグローバル展開を推進する際の支えとなるだろう。持続的な成長や世界市場の進出・牽引を目指す企業では、こうしたサービスを活用しながら、知財情報を生かした経営・事業目標を検討してみてはいかがだろうか。