株式会社月刊総務は2023年9月1日、「障がい者雇用についての調査」の結果を発表した。調査期間は2023年7月13日~24日で、全国の総務担当者82名より回答を得た。本調査より、企業における障がい者雇用の課題や実施率、受け入れ部門と受け入れ後の適性、本業への貢献度などが明らかとなった。
障がい者雇用に「課題を感じている」企業は8割に。「業務の切り出し」に難航か
2021年に「障害者差別解消法」が改正され、2024年4月より、事業所による障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化される。これにより、今後ますます“障がい者雇用”や“障がい者就労”への社内理解を深めていく必要があるが、企業では障がい者雇用について、現時点でどのような考えを持つのだろうか。はじめに月刊総務は、「障がい者雇用に課題を感じているか」を尋ねた。すると、「とても感じている」が61%、「やや感じている」が19.5%で合計80.5%と、8割の企業が課題を感じていることが明らかとなった。
あわせて、「障がい者雇用に関してどのような課題を感じているか」を尋ねたところ、最も多かったのは「業務の切り出し」だったという。以下、「適性・能力が発揮できる仕事への配置」、「従業員の障害への理解」、「コミュニケーション・人間関係」が続いたとのことだ。
約8割が「障がい者雇用」を実施。一方で法定雇用率は半数の企業が満たせず
次に同社は、「現在所属している会社では、障がい者雇用を実施しているか」を尋ねた。その結果、「はい」は79.3%、「いいえ」が20.7%と、約8割の企業で障がい者雇用を行っていることがわかった。また、「所属する会社では、障がい者法定雇用率を満たしているか」を尋ねると、「はい」が40.2%、「いいえ」が51.2%と、約半数の企業が障がい者法定雇用率を満たせていなことが明らかになったという。
「法定雇用率を満たせていない理由」には、「障がい者に適した業務を用意できないから」や「受け入れ態勢が整っておらず、積極的な障がい者雇用が難しいため」などの声が寄せられたとのことだ。
障がい者の受け入れ先は「管理部門」が突出して最多に
続いて同社は、「障がい者雇用を実施している」とした企業を対象に、「雇用した障がい者をどの部門で受け入れているか」を尋ねた。すると、「管理部門(総務・人事・経理)」(72.3%)が突出して多かった。以下、「製造部門」(26.2%)、「営業部門」(16.9%)と続いた。7割以上の企業で「障がい者の適性や能力に合った仕事を割り振れている」と実感
次に同社は、「障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じるか」を尋ねると、「難しさを感じる」との回答は8割に迫ったという。一方で、「障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると思うか」を尋ねた。その結果、「非常にそう思う」(18.5%)と「ややそう思う」(56.9%)の合計は75.4%と、7割以上の企業が適性・能力に合った仕事を割り振れていると感じていることがわかった。
雇用した障がい者が「本業に貢献できている」とした企業は8割に
最後に同社は、「障がい者の方は本業に貢献できていると思うか」を尋ねた。すると、「とても思う」(38.5%)と「やや思う」(41.5%)の合計は80%と、8割の企業が本業に貢献できていると実感していることがわかった。あわせて、「障がい者従業員に、より活躍してもらうために必要だと思うこと」を自由回答で尋ねた。その結果、「一人ひとりの特性把握と周囲の理解」や「定着しやすい環境づくり」、「障がい者の方がスキルアップできる研修制度を整えること」などの声が聞かれたという。
本調査結果から、8割以上の企業が障がい者雇用に課題を感じていることがわかった。また、障がい者雇用を実施する企業は8割に迫り、最も多い受け入れ先部門は総務・人事・経営などの「管理部門」であることも明らかとなった。障がい者雇用率を高めたい企業はある一方で、受け入れや業務の切り出し体制が整わず、採用に消極的になる企業もある状況が見受けられる。障がい者雇用の促進を考える企業では、業務の属人化を防ぎ、業務内容の可視化やフロー化を図ることから始めてみてはいかがだろうか。