株式会社日本総合研究所は2023年8月10日、「2022 若者意識調査 ―サステナビリティ、金融経済教育、キャリア等に関する意識―」の結果を発表した。調査期間は2022年11月30日~12月2日で、国内の中学生300名、高校生300名、大学生400名の計1,000名より回答を得ている。本調査により、若者の環境問題・社会課題や金融・経済教育、キャリアなどへの関心度や意識が明らかとなった。
現代の若者が関心を寄せるのは「サブカルチャー」や「SNS」の声が多数
昨今、社会では「サステナビリティ」や「金融経済教育」などがトレンドのキーワードとなっている。その中で、将来の社会を担う若者は、どのようなことに関心を寄せているのだろうか。なお、本調査の中学生の回答については、保護者を通じてアンケートと調査の依頼を行っている。はじめに日本総研が「関心を持っていること」を尋ねると、「サブカルチャー(漫画、アニメ、ゲーム等)」が最も多かった。以下、「SNS・ソーシャルメディア」、「人間関係(友人・先輩・後輩)」と続いた。
「社会課題の解決に役立ちたい」若者は半数以上。一方、行動を起こす若者は2割に
次に同社は、「サステナビリティ」の観点から、「環境問題・社会課題の解決に役立ちたいか」を尋ねた。その結果、「とてもそう思う」(13.3%)と、「ややそう思う」(38.7%)の合計は52%と半数におよんだ。そこで、「関心のある環境問題や社会問題」を尋ねたところ、「人権(ハラスメント・いじめ・虐待・不登校・人種差別等)」が最も多いことがわかったという。また、大学生の回答を見ると、男女ともに「労働問題(長時間労働、雇用不全、失業等)」への関心が高まっていたとのことだ。
さらに、「日頃社会貢献活動を行っているか」を尋ねると、「している」との回答は21.3%だった。約半数が環境問題や社会課題への解決意欲を持つものの、実際に日頃から社会貢献活動などの行動を起こしている人は2割程度にとどまることがわかった。
6割がSDGsは「世界で達成するべき重要な目標」とするも、「達成は難しい」との考えか
続いて同社は、「SDGsについて知っているか」を尋ねた。すると、「よく知っている」と「多少は知っている」の合計は7割を超え、2020年に行われた前回調査の4割超から大きく上昇したとのことだ。特に、高校生と大学生の認知度は8割を超えていたという。そこで、「SDGsに関する考え」を尋ねたところ、「世界で達成するべき重要な目標」との回答は60.3%と最も多かった。対して、「目標としている2030年に達成できそう」と考える若者は全体の15.9%にとどまった。
あわせて、「SDGsは誰が達成すべきか」と質問したところ、「国際機関や政府」(57.3%)、「企業や団体」(53.2%)、「私たち個人」(53.3%)といずれも5割程度で大差は見られなかった。一方で、「達成のために必要な行動を理解している」とした若者は41.1%と、4割程度にとどまった。
「金融・経済」に関心を寄せる若者は4割超
次に同社は、「金融や経済に関心があるか」を尋ねたところ、「とても関心がある」(11.7%)と「やや関心がある」(31.7%)との回答の合計は4割を超えた。前回調査(40.7%)よりもやや増加しているものの、大きな変化は見られなかった。性別で見ると、総じて男子の方が女子よりも金融や経済に高い関心を持っていることがわかる。「金融経済教育の理解度」についても、同様に女子よりも男子の割合が高かったとのことだ。
また、経済状態別に見ると、「豊かである」とした回答者は6割を超え、「そうではない」とした人は4割に満たなかったという。このことから、経済状態が豊かである人の方が、そうでない人よりも金融や経済への関心度は高いことがうかがえる。
4割超が「投資」に意欲的。うち6割が「環境問題に取り組む企業への投資」に興味か
そこで同社が、「将来、投資をしてみたいか」を尋ねると、「やってみたい」(14.8%)と「どちらかというとやってみたい」(28.7%)の合計は43.5%と、4割を超えた。さらに、「投資をやってみたい」とした回答者に、「環境問題や社会課題に取り組む企業への投資に関心があるか」を尋ねた。すると、「やってみたい」(18.6%)と「どちらかというとやってみたい」(46.4%)の合計は65%におよんだ。
キャリア意識では、女子の「共働き」志向が強い傾向に
続いて同社が、「現在のキャリア意識」を尋ねると、「自分の能力やスキルを活かすために働くことが重要だ」や「興味・好奇心を追求して働くことが重要だ」、「喜びや充足感を得るために働くことが重要だ」など、上位には肯定的回答が見られたという。あわせて、「結婚後、子どもがいない場合に希望する働き方」を尋ねた結果、「共働き(自分・結婚相手ともに働く)」が48.7%と、最も多かった。性別で見ても、「共働き」とした回答者は男子が42.4%なのに対し、女子は55%と、女子の共働きへの意欲が高いことがうかがえる。
また、「子どもがいない場合に希望する働き方」においても、男子よりも女子の方が「共働き」を選ぶ人が多かったとのことだ。これを受け、女子の共働きへの意欲は、子どもの有無を問わず高いことが明らかとなった。
次世代からは「SDGs」、「働きやすさ」のワードが頻出
最後に同社は、「次世代からのメッセージ」として企業に向けたものを自由記述で求め、回答結果をAIテキストマイニングにより抽出した。頻出したのは「SDGs」や「働きやすい」、「環境問題」などのワードだった。これらの具体的な内容として、「みんなが働けるように雇用してほしい」や「物の値段を上げるなら給料も上げてほしい」、「日本のための行動をしてほしい」、「次の世代のことを考えてほしい」などのメッセージが寄せられたという。
本調査結果から、「環境問題や社会課題への解決意欲がある」とした若者は半数を超え、「サステナビリティ」や「金融・経済教育」、「キャリア」に関心を寄せる人もいることが明らかとなった。こうした社会のトレンドは、企業の経営戦略や人材育成を検討する際の一助となるだろう。今後も事業発展や人材獲得を目指す企業では、若者が意識する「SDGs」や「働きやすさ」といった観点をもとに、“次世代が関心を持つ企業とは何か”を考えていくこともキーポイントになりそうだ。