株式会社リクシスは2023年7月4日、「ビジネスケアラー最新実態レポート(2023年6月版)」を発表した。調査期間は2019年5月~2023年6月末日で、同社が運営する仕事と介護の両立支援サービスを利用する、従業員規模500人以上の企業に勤める社員38,908名のうち、管理職に就いている男女10,721名から回答を得た。本調査から、仕事と介護の両立の実態や課題感などが明らかとなった。
介護問題に直面している管理職の割合は、女性・男性ともに約2割と同水準に
生産年齢人口の減少が続く中で、仕事をしながら家族等の介護をする「ビジネスケアラー」の数は増加傾向にあり、介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失が懸念されている。少子高齢化が進む現代では、介護と仕事の両立は不可欠であるが、管理職におけるビジネスケアラーの実態はどうなのだろうか。まずリクシスは、男女管理職10,721名(女性管理職1,170名・男性管理職9,551名)に、「想定する介護対象者の現在の状態」を尋ねた。すると、女性管理職で「すでに介護問題に直面している(※)」とした割合は22%だった。
※親や高齢の家族など想定する介護対象の家族が「すでに要介護認定を受けている」、もしくは「まだ要介護認定まではしていないが、すでに頻繁にケアが必要な状況にある」状態
一方、「すでに介護問題に直面している」とした男性管理職は20%で、女性管理職とほぼ同水準であることがわかった。
管理職のビジネスケアラー発生確率は、全年代を通じ男性より女性が高い値を示す
続いて同社は、男女別に「管理職のビジネスケアラー発生確率」(「日々要介護家族をサポートしながら仕事をしている」と回答した割合)を調べた。すると、全年代で、女性管理職の方が男性管理職よりも高い数値を示した。管理職層のボリュームゾーンである40~54歳の年代では、女性管理職のビジネスケアラー発生確率が、男性管理職の約2倍であることがわかった。主たる介護者を「自分」と答えた女性管理職は4割超。男女で介護モデルの差が顕著に
次に同社は、「管理職ビジネスケアラーとして仕事と介護を両立している」とした管理職876名(男性管理職742名・女性管理職134名)に、「主たる介護者」について聞いた。すると、男性管理職ケアラーでは、主たる介護者が「自分」であると回答したのは28.2%で最多となり、以下、「自分の配偶者」(25.3%)、「親」(19.7%)だった。一方、女性管理職ケアラーは、「自分」と答えた割合が41.8%と高い数値で、以下、「親」(27.6%)、「兄弟姉妹」(14.2%)と続いた。このように男女では、両立中の介護モデル自体に大きな違いがあることがわかった。
また、日々の介護には直面していないものの、数年以内に要介護家族の世話が必要になるとみている「ビジネスケアラー予備軍管理職」にも同様の質問をしたところ、「いざというときに想定する主たる介護者が自分であると答えた割合」は3割強で、女性管理職が圧倒的に多かったとのことだ。
女性管理職ケアラーの悩みは男性より深い。「物理的・心理的負担が辛い」が6割強に
最後に同社は、「男女管理職ケアラーが感じる悩み・不安」について調査した。すると、女性では「介護にかかる物理的負担や心理的負担が辛い」(66.4%)が6割強となったほか、「介護を抱えた自分の将来キャリアに悩んでいる」(49.3%)も約半数に及んだ。全ての悩みにおいて、男性管理職より女性管理職の方が高い値となった。この結果から女性管理職ケアラーの負担感は、男性管理職ケアラーよりも大幅に高いレベルにあるとわかった。同社は、「『女性を意思決定層に』と育成・登用を加速しても、高齢化が進む中で企業側のビジネスケアラー支援が現状のままでは、企業経営が立ち行かなくなるリスクがある」と推察している。
本調査の結果から、女性管理職のビジネスケアラー発生率が男性管理職の約2倍であることや、女性は男性に比べて、悩みや不安を強く抱えていることがわかった。女性活躍が推進されている昨今、企業は従業員のライフステージの変化に関わらず、活躍できる環境を整備する必要がある。ビジネスケアラーへの理解を深め、職場内のフォロー体制を構築することが、女性管理職の働きやすさにつながるのではないだろうか。