働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に

株式会社識学は2023年6月8日、「働く女性のこどもに関する調査」の結果を発表した。調査は2023年4月26日に行われ、全国の従業員数10名以上の企業に勤める20歳~49歳の女性のうち、こどもがいない人150名とこどもがいる人150名の計300名から回答を得ている。本調査から、こどもを産む場合の心配事や、会社に求める出産・育児に関する施策などが明らかとなった。

「こどもを産みたいと思わない」、「産む予定はない」とする女性は6割にのぼる

日本の長期課題である「少子化問題」に対して、2023年3月に岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げた。出生率を上げるべく国内ではさまざまな議論がなされているが、働く女性がこどもを産む場合、どのような心配があるのだろうか。

識学はまず、「現在こどもがいない人」を対象に、「こどもを産みたい、もしくはこどもを産む予定があるか」を聞いた。その結果、「こどもを産みたいとは思わない、産む予定はない」が44%で最も多く、以下、「こどもを産みたいと思っているが、産む予定はない」が20%で、「こどもを産む予定はない」人の合計は64%となった。一方で、「こどもを産む予定がある」人は5.3%にとどまった。
働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に

「こどもを産みたいと思わない理由」のトップは「こどもが欲しいとは思わない」

次に同社は、「こどもを産みたいと思わない・産む予定がない人」を対象に、「その理由」を尋ねたところ、「こどもが欲しいとは思わないため」が34.4%で最多だった。以下、「自由がなくなるため」が32.3%、「こどもを産む・育てる自信がないため」と「自分自身のために時間を使いたいため」が同率で30.2%、「経済的な余裕がないため」が28.1%、「パートナーがいないため」が27.1%と続いた。こどもを産みたいと思わない理由は、経済状況ではなく、ライフスタイルの変化への恐れにあるとうかがえる。
働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に

出産・妊娠した場合の心配事は「教育費等を含めた経済面」が最多に

次に、「現在こどもがいない人」に対し、「こどもの出産・妊娠について心配だと思うこと」を聞いた。すると、「教育費等を含めた経済面」が47.3%でトップだった。続いて、「育児と仕事の両立」が43.3%、「自分自身の精神・体力がもつか」が41.3%、「育児の責任の重さ」が38%で上位に挙がった。前設問の「こどもを産みたいと思わない・産む予定がない理由」においては経済的な理由が上位に挙がらなかったが、出産・妊娠を想像してみた場合は、経済面を心配する人が多いようだ。
働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に

出産・育児で必要な勤務先の体制は「時短勤務」、「育児・出産手当」が上位に

続いて同社は、全体に対し「こどもの出産・育児において、必要だと思う勤務先の制度・体制」を尋ねた。すると、最多回答は「時短勤務」(59%)で、以下、「育児手当」(56.3%)、「出産手当」(54.3%)、「こどもの都合によって勤務ができる会社の雰囲気」(51.7%)、「リモートワーク」(47%)と続いた。制度や社内の雰囲気はもちろんのこと、多くの人が手当も求めているようだ。
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勤務先での出産・子育て環境が「整備されている」との回答は4割未満にとどまる

次に、「勤務先では、こどもを出産しやすい・育てやすい環境が整っていると思うか」を聞いたところ、「そう思う(“ややそう思う”を含む)」と回答した人は全体で36%だった。

こどもがいる人・いない人別でみると、こどもがいる人は「そう思う」が43.3%なのに対し、こどもがいない人は28.6%と、結果に大きな差があった。同社はこれを受け、「こどもがいない人にも目に見えてわかる『会社の子育て環境の整備』が必要なのではないか」と推察している。

また、「勤務先が出産・子育てしやすい環境だと思う理由」の自由回答には、「時短制度や育児休業がきちんととれる」、「時短勤務や早めの産休取得など、福利厚生が充実している」といった声があがったという。

一方で、「勤務先が出産・子育てしやすい環境だと思わない理由」としては、「特に何の補助や施策も取られていないから」や「出産を経て、職場復帰した女性がいないから」との声が寄せられたとのことだ。
働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に

6割以上の女性が「育休取得しやすい環境」と答えたものの、制度や環境に不満の声も

最後に、「勤務先は、育児休業が取得しやすい環境か」と質問したところ、「取得しやすい」が63.7%、「取得しにくい」が36.3%だった。

「育休取得しやすい理由」を自由回答で募ったところ、「申請すれば通るが、正社員でないと難しい」や「取得は可能だが、元の部署に戻れる保証は一切なし」などの声が寄せられたという。「育休取得しやすい」と回答した人の中にも、不満があることが見て取れる。

対して、「育休取得しにくい理由」には、「しっかり育休を取得できるルールがなく、知らされていない」や「理解者が少ない。既婚でも既にこどもが成人済み、もしくは育児にかかわってこなかった上司の圧力がある」などの意見が寄せられたとのことだ。
働く女性の6割超が「こどもを産む予定がない」と回答。職場に求めるのは「時短勤務制度」や「出産・育児手当」が上位に
本調査から、現在こどもがいない女性のうち6割以上が「こどもを産む予定がない」ことが明らかになった。また、こどもの出産・育児に対する勤務先の制度や体制については、「時短勤務」や「出産・育児手当」などを求めている人が多いこともわかった。働く女性の出産・育児への不安を解消するためには、企業が手当や制度などを拡充して働きやすい環境を整備するとともに、社員全員に周知徹底することが重要だろう。