株式会社パーソル総合研究所は2023年4月28日、「企業の不正・不祥事に関する定量調査」の結果を発表した。調査期間は2023年1月30日~2月3日で、全国の20~69歳の男女46,465名に対し行ったスクリーニング調査を基にしている。本記事では、「5年以内に不正関与もしくは目撃した人」3,000名と「特に不正は起きていない人(非発生群)」1,000名の回答結果を紹介する。調査結果から、企業内の不正に関与・目撃した内容のほか、会社の対応有無別の従業員の意識などが明らかとなった。
不正に「関与・目撃」または「見聞きした経験がある」は1割強
企業内の不正・不祥事は、業績ならびにモチベーションの低下など、コーポレートガバナンス上の大きな問題となり得ることから、組織的な対策が求められている。では実態として、企業内ではどの程度不正が起きているのだろうか。パーソル総合研究所(以下、パーソル総研)はまず、不正・不祥事の実態を探るため「不正の関与・目撃率」を調べた。すると、「関与あり・目撃あり」が5.3%、「関与なし・目撃あり」が7.5%と、何らかの「関与・目撃経験がある」とする回答は計13.5%だった。
「労務管理」における不正が多い傾向に
また同社は、「不正への関与もしくは目撃率」を尋ね、「労務管理上の問題」、「不正な利益追求」、「手続き違反」、「不適切表現・流出」の4つのカテゴリ別に分類した。すると、トップは「労務管理上の問題」のカテゴリの「サービス残業が日常的に発生している」で、63.8%が回答した。次点以降も、同カテゴリに属する「規準を超えた長時間労働が長い間継続している」(54.4%)、「特定の従業員に対する組織的ないやがらせやハラスメントが生じる」(48.1%)が続いた。関与・目撃率の多い不正および不祥事の内容は、主に労務管理上の問題に集中していた。不正発生リスクを高める要因に「属人思考」や「長時間労働」
続いて、不正発生の要因を調べるべく、同社が「個人の不正許容度」と「組織の不正黙認度」に影響を与える要因を、「組織特性」、「働き方」、「個人状況」別に分析した。すると、「組織特性」では、「属人思考」と「不明確な目標設定」、「成果主義・競争的風土」が共通で影響していることがわかった。また、「働き方」では、「長時間労働/働き過ぎ」と「脅迫的な働き方」が共通していた。会社の対応の有無で「不正・不祥事改善状況」に大差がつく結果に
次に同社は、企業の不正・不祥事発生後の改善状況を調べるため、不正発生後の会社の対応有無別に「その後の改善状況」を尋ねた。すると、不正・不祥事に「関与・目撃経験がある」とした人のうち、自社で「対応あり」とした1,117名の回答結果では、不正が「おおよそ無くなったか、改善」(51.4%)と「完全に無くなったか、改善」(23.4%)との回答が計74.8%だった。「対応あり」の企業では、7割以上が不正の改善を実感していることがわかった。一方、「対応なし」(1,594名)とした企業では、同回答が計22.7%にとどまった。不正発生後に会社の対応があった場合は、なかった場合と比べて、その後の不正が「おおよそ無くなった」、「完全に無くなった」とする割合が3倍以上となった。
不正・不祥事への会社の対応有無が、パフォーマンスやエンゲージメント向上に寄与か
また、不正・不祥事に対し、会社の「対応あり・なしによる成果指標の差」を同社が分析すると、「会社の対応あり」との回答平均値が、「パフォーマンス」(3.84ポイント)、「ワーク・エンゲージメント」(3.29ポイント)、「幸福度」(3.08ポイント)のいずれの項目においても「会社の対応なし」の平均値を上回った。「会社の対応有無」が従業員の意識にも影響か
最後に同社は、「会社対応後の従業員の意識」について調べている。その結果、「会社や組織の現状が悪いところも含めて理解できた」(44%)が最多となった。以下、「責任を取るべき人が取ったと感じた」(35.6%)、「会社の処分や対処は十分に納得できるものだった」(35.5%)が続いた。不正や不祥事に対し会社が対応を行うことで、従業員は「膿出し感」(会社の悪い部分が明るみになって心が晴れた)や「腹落ち感」(会社の対応について納得できた)を得られているようだ。
本調査結果から、何らかの「不正・不祥事」に関与または目撃経験がある人は全回答者の1割強に及ぶことがわかった。また、内容は規準を超える長時間労働など「労務管理関係」に多いようだ。また、こうした不正・不祥事に対する会社の対応は、従業員のエンゲージメントにも影響することが示される結果となっていた。企業においては、不正や不祥事に厳正に対処し社会的信頼の維持のみならず、組織内の透明性の確保につなげていきたい。