約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

自社を退職した人材(アルムナイ)を再雇用する動きは、どの程度広がっているのだろうか。今回は、株式会社プロフェッショナルバンクが2023年3月24日に発表した「再雇用(アルムナイ採用)」に関する調査結果を紹介する。本調査は2023年2月9日~17日に、企業の経営者および人事・採用担当者の299名から回答を得たものとなる。

7割弱が「再雇用をしたことがある」と回答。未実施の企業も7割が高い関心を寄せる

「アルムナイ採用」とは、退職した人を再雇用する採用手法を指す。他社で得た知見や経験を評価して即戦力人材を確保できるメリットがあるが、実際に企業ではこうした再雇用が行われているのだろうか。同社はまず、「再雇用を実施したことがあるか」を経営者および人事に尋ねた。すると、「したことがある」は67%となり、約7割の企業で再雇用を実施していることが明らかとなった。

また同社によると、「再雇用をしたことがない」(33%)とする企業でも、7割以上が「再雇用する可能性がある」と回答していたという。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

“再雇用の経緯”の7割は「退職者からの自己応募」

次に同社は、「再雇用するに至った経緯で最も多いものは何か」と尋ねた。すると「過去在籍社員からの自己応募」が70%だった。一度退職・転職をしたものの、古巣に戻ることを希望する人材が数多く存在しているようだ。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

再雇用の選考方法は「簡易選考」が最多。「選考しない」との回答も1割に

続いて、「再雇用する際の選考方法」について同社が尋ねると、「簡易選考」が最も多く58%が回答した。以下、「通常選考」が30%、「選考しない」が10%と続いた。

また、「再雇用における採用率」について尋ねると、「採用率50%以上」とする回答が約5割、「採用率100%」との回答は3割以上にのぼったという。同社はこれを受け、「互いを知っていることもあり、選考前から合否が決まっているケースもあると考えられる」との見解を示している。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

半数の企業で「技術職」のアルムナイ雇用を実施

また同社は「再雇用した社員の職種」について尋ねた。すると、「同職種」との回答は計9割以上であったという。

さらに、具体的な「再雇用後の職種」を尋ねたところ、「技術職」が50%で最多だった。以下、「営業職」(31%)、「専門職」(27%)が続いた。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

再雇用の最大のメリットは「即戦力」につながることか

次に同社が、「再雇用をしてよかった点」を尋ねると、「即戦力として活躍してくれた」が35%で最も多かった。以下、「採用コスト・教育コストを抑えられた」および「人材不足を迅速に解消できた」がともに16%で続いた。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」

再雇用の最大の課題は「既存社員との処遇差・不満の発生」

一方で同社は、「再雇用に問題や課題があるか」についても尋ねた。すると、「課題や問題がある」との回答が約半数であったという。

それを受け同社が、「問題点や課題の内容」を尋ねると、「既存社員との処遇差、不満の発生」が23%で最多だった。以下、「再退職のリスク」と「再雇用制度の未整備」(ともに19%)、「既存社員への悪影響」(11%)が続いた。自由回答には、「自社で継続して勤務してくれている従業員との賃金・役職等のバランスへの配慮が必要」や、「より積極的に運用していきたいが、現状明確な制度やフローがなく、社内認知含め整備していく必要がある」などといった声が寄せられたという。
約7割が導入する「アルムナイ採用」、半数以上が技術職を“即戦力人材”として採用。課題は「既存人材との処遇差」
調査結果から、再雇用を実施したことのある企業は7割近くと、多くの企業で取り入れられていることがわかった。また、調査時点で実施していない企業でも、そのうち多数が導入したい意向を持っていることから、関心の高さがうかがえる。一方で、課題には「既存社員との処遇差への対応」が挙げられた。再雇用の制度化にあたっては、既存人材の納得感にも配慮したものであることが求められそうだ。