株式会社日経BPは2023年2月8日、「企業におけるメタバース活用の意向」について、企業調査と個人調査の結果を発表した。本調査は2022年9月に実施されたもので、国内の大手企業を含む計440社とビジネスパーソン計3,000名から回答を得ている。調査結果では、「メタバースの事業活用への期待」や「想定する活用イメージ」などが明らかとなった。
7割以上が何らかの形で「メタバースが自社事業に影響を与える」と回答
メタバースとは、インターネット上に構築される「仮想現実」を指すものだ。昨今、メタバースを活用した「バーチャルイベント」や「バーチャルオフィス会議」など、ビジネスでの活用も広がってきている。まず、日経BPが企業を対象に「ビジネスにおけるメタバースの影響度」について尋ねた。すると、「影響を与える」が42.3%、「与えない」が38.9%となり、ほぼ拮抗していた。また、「わからない」は18.6%となった。同社によると、「影響を与えない」の回答の中には「今後影響を与えるだろうが、限定的である」という回答が30.7%含まれるという。この結果を「影響を与える」(42.3%)の回答と合算すると計73%となり、回答企業の7割以上が「何らかの形では影響を与える」と考えていることになる。
4割以上が「メタバースの業務活用」に前向きな姿勢を示す
次に、企業向けに「メタバースの業務活用の現状」を尋ねた。その結果は、「既に取り組んでいる」が11.6%で、「今後取り組む予定」が8.4%、「検討中」が22.5%となった。これらの合計は42.5%となり、4割以上が既にメタバースを活用中、もしくは検討段階にあることがわかった。メタバース活用の想定時期は、「業務効率化」目的と「顧客への価値提供」目的で差も
同社によると、「メタバースはどのような場面で活用するか」と尋ねた結果、「業務効率化」と回答したのは88社で、「顧客への新たな価値提供」と回答したのは152社だったという。これを受け、具体的な取り組む時期を尋ねると、「既に取り組んでいる」という企業数は、「業務効率化」を目的とする企業では17社で、「顧客への新たな価値提供」を目的とする企業では34社だった。なお、多くの企業において、メタバース活用に取り組む時期のピークは「2024年~2026年」となることがグラフからは見て取れる。
業務効率化には「アバター会議」、顧客への価値提供には「バーチャルイベント」を活用か
さらに同社は、「バーチャルショップ」や「バーチャルホスピタル」といった11種類のメタバースの利用シーンを提示し、それぞれ利用目的を「業務の効率化」と「顧客への新しい価値提供」に分け、「取り組む」もしくは「検討中」のものを挙げてもらった。すると、「業務の効率化」では、「アバター会議」と回答した企業が88社中71社と最も多くの回答を集めた。他方で「顧客への新しい価値提供」では、「バーチャルイベント」が152社中124社の回答を集め最多となっていた。また、いずれの利用目的でも上位に8割以上の回答が集中していた。この結果について、同社は「メタバースの多彩な利用シーンは、まだそれほど浸透していないのではないか」との見解を示した。
「アバター会議」の活用に前向きな“企業”に対し、“個人”は消極的か
企業調査では、業務の効率化のために「アバター会議」を活用したいとの意向を示す企業が最多となっていた。その一方で、ビジネスパーソン3,000人を対象にした個人調査では、「業務でメタバースを使いたくないシーン」のトップが「アバター会議」(619名が回答)だったという。アバター会議の活用について、企業と個人では真逆の意向であることがわかった。また、「利用したくない理由」は、「自分の業務にとってメリットがなさそうだから」(227名)、「仮想空間だというだけで、特に違ったことを実現できるわけではないから」(112名)などの回答が上位となった。
調査結果では、7割以上の企業が「メタバース」による自社活動への影響が少なからずあると感じていることが明らかとなった。想定する利用方法では、「アバター会議」や「バーチャルイベント」に回答が集中し、多種多様な活用イメージを抱いている企業はまだ多くないとわかる。まずはどのようなシーンで「メタバース」が有効なのか、最新技術の効果的な活用方法を探ることから始めたい。