7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か

株式会社GNUSは2023年2月1日、大企業の管理職500人を対象に実施した「DX調査」の結果を発表した。調査期間は2022年12月5日~7日で、事業領域であるデジタルプロダクト企画・開発によるDX支援に関連して、DXに取り組む大企業の管理職(主任以上)500名から回答を得た。調査から、DXで得られた成果への満足度のほか、DXの企画・推進における課題などが明らかとなった。

DXの成果を「実感できている」との回答は3割を下回る

産業界のDX推進に向け、政府がさまざまな施策を実施する中、企業においてもDXを推進する動きが加速しているが、DXによる成果に対する満足度はどうなのだろうか。GNUSはまず、「DXの取り組みの成果として近いもの」として、「十分に満足」、「やや満足」、「やや不足」、「明らかに不足」の4項目選択式で尋ねた。すると、「十分に満足」とする回答はわずか6%だった。また、「やや満足」(21%)との回答と合わせても、DXの効果を実感できている層は計27%と、3割を下回った。対して、「成果の大きさとして、やや不足」(36%)、「明らかに不足」(37%)との回答は計73%と、DXの効果を実感できていない層は7割にのぼった。
7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か

DXの効果を実感できている層は「プロダクト・サービスや顧客体験の具体化」を重視

次に同社は、「自身がDXに取り組む上で、プロダクト・サービスや顧客体験の具体化はどれほど重要だと考えるか」と尋ねた。すると、先の質問でDXの成果に「十分に満足」と回答した人のうち58%が、プロダクト・サービスや顧客体験の具体化が「重要」と回答した。対して、DXの成果を実感しきれていない層(DXの効果を「やや満足」、「やや不足」、「明らかに不足」とした回答者)に同質問をしたところ、「重要」との回答はいずれも3割を下回り、効果を実感できている層との意識差がうかがえる結果となった。
7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か

DXの効果を実感する層の7割が「ユーザー理解」で予想以上の成果を得ている

続いて同社は、「DXの取り組みとして経験した業務で、『重視すべきだと感じる点』と『その重要度』」を尋ねた。質問項目は、「ユーザー理解のための取り組みで得られたこと」、「アジャイルプロセスの採用状況」、「必要なスキルを持った人材で体制構築することの重要性」の3項目で、先の設問の「DXの成果への満足度」の結果とクロス集計している。

その結果、「ユーザー理解のための取り組みで得られたこと」の項目では、DXの効果に対して「十分に満足」と回答した人のうち73%が「予想もしていなかった示唆が得られた」と回答した。また、同回答者における「アジャイルプロセスの採用状況」は、「採用」が58%、「必要なスキルを持った人材で体制構築することの重要性」は「重要」との回答が63%で、いずれも他の層より突出した。

対して、DXの効果を実感しきれていない層は、各質問項目の同回答割合が3割以下であり、DXの効果を実感できている層との差が顕著だった。
7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か

DX推進の課題は「DXビジネス戦略」や「DXプロジェクトの体制設計」が上位に

次に、同社は「DXを推進する上で、勤務先に不足しているスキル・ケイパビリティ」を尋ねた。すると、「DXビジネス戦略を描くスキル」と「DXプロジェクトに必要な体制を設計するスキル」、「DXプロジェクトの推進を担うスキル」がそれぞれ4割前後となり、上位にあがった。課題として、DXの戦略を企画し、必要な体制で実行するスキルが不足していることがあげられるようだ。
7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か

DXビジネス戦略構築に必要な「プロデューサー」や「プロダクトマネージャー」が不足か

最後に、「DXを推進する上で、勤務先に不足している人材」について同社が尋ねた。すると、「DXプロデューサー/プロダクトマネージャー」が4割以上で最多だった。以下、「ビジネスデザイナー」、「データサイエンティスト/AIエンジニア」、「アーキテクト/テックリード」がいずれも3割以上で続いた。
7割以上の企業が「DX推進の効果」を実感できず。DXビジネス戦略の構築を担う人材不足が課題か
大企業においても、DXの効果に十分な満足度を得られている企業はごくわずかであることがわかった。一方で、効果を実感できている層は、プロダクト・サービスの具体化やユーザー理解への取り組みを重視する傾向にあるようだ。DXを推進したい企業にとっては、DXビジネスの戦略構築に向けた人材育成がカギとなると言えそうだ。