パーソルホールディングス株式会社は2023年1月27日、「人的資本経営における育成・リスキリングに関する企業の取り組み実態調査」の結果を発表した。調査期間は2022年9月15日~16日で、経営層または採用人事に携わり決定権を持つ会社員1,000名から回答を得た。調査結果から、企業が進める人材育成の現状とリスキリングの推進における課題が明らかとなった。
約3割が現状の「OJTの見直し・強化」に取り組む
人材不足や働き方の多様化を受け、従業員の「人材開発」に力を入れる企業が増えているが、具体的にどのような育成施策が企業では実施されているのだろうか。まず、「調査時点に実施している育成施策」について同社が尋ねたところ、トップは「OJTの見直し・強化」で、28.1%と約3割が回答した。以降、「自己啓発型・公募形式での多用な学習支援」が24.7%、「1on1等による個の成長支援」が22.2%と続いた。「AI・DX人材」を始めとする、高度専門人材の育成が遅れている傾向か
次に同社は、「将来の事業展開を踏まえた人材育成」について、4つの人材分野の育設計成の進捗状況を尋ねた。すると、「設計ができている」(「十分できている」と「ある程度できている」の合計)と答えた人の割合は、多かった順に「マネジメント人材の育成」(41.7%)、「後継者育成・次世代経営層育成」(40.9%)、「高度スキル・専門人材の育成」(35.5%)、「AI・DX人材の育成」(33.7%)となった。全体の傾向を踏まえると、専門スキルを必要とする分野の育成設計のほうが遅れているようだ。“リスキリング推進”に向けては様々な課題が山積か
最後に、「リスキリングを進める上での課題」を同社が尋ねた結果では、「配置・処遇との連動が難しい」が31.7%で最多だった。そのほか、約3割が選択し上位となったのは「なかなかスキルが向上しない・身につかない」(29.5%)、「適切なプログラム構築が難しい」(28.9%)、「キャリアパスの提示が難しい」(27.7%)だった。グラフからは、リスキリングに関して、様々な課題が横並びの状況にあることが見て取れる。
本調査では、現状6割以上の企業で「専門的で高度なスキル(AI・DXを含む)」を持つ人材の育成が思うように進んでいない実態が明らかとなった。また、「従業員が身に付けたスキルを配置・処遇と連動が難しい」との声もあった。「人材開発」を将来の企業価値向上に繋げるには、経営戦略や事業戦略を実現するための「育成方針」になっているかがカギとなるだろう。