3月の「価格交渉促進月間」で“適正な価格交渉・価格転嫁”の促進を経産省が呼びかけ。中小企業の賃上げ実現へ

経済産業省は2023年2月28日より、同年3月が「価格交渉促進月間」であることを呼びかけている。本月間において同省は、昨今の原材料やエネルギー価格、労務費等の高騰などを鑑み、発注側企業と受注側企業双方に向け、適正な価格交渉および価格転嫁の促進を図っている。これにより同省は、月間中に対応要請やフォローアップ調査、助言等を行っていくとしている。

発注側企業への「価格交渉・価格転嫁」要請、受注先企業へのフォローアップ調査を実施

政府は、毎年9月と3月に企業間の価格交渉が頻繁に行われていることから、これらの月を「価格交渉月間」と定め、発注側企業と受注側企業の双方に向け適正な価格交渉および価格転嫁を呼びかけている。これに伴い経産省では、2023年3月も本月間内に実施する活動等について改めて呼びかけている。同省は、昨今の原材料やエネルギー価格、労務費等の上昇分を企業が適切に取引先に価格転嫁できるよう、対応要請やフォローアップ調査等を実施するという。なお、具体的な取り組み内容は下記の通りだ。

【価格交渉促進月間の取り組み】
(1)発注側企業への価格交渉および価格転嫁への積極的な対応要請
経済産業大臣名で発注先企業に対し、下請中小企業振興法「振興基準」を踏まえ、受注側中小企業からの価格交渉の申し出に遅滞なく応じることや、価格転嫁への積極的対応を要請する。

(2)フォローアップ調査(受注側中小企業への状況調査)を実施
2023年3月以降、受注側中小企業に対し、発注側企業との価格交渉および価格転嫁の状況について、下記の通りフォローアップ調査を実施する。

●アンケート調査(受注側中小企業30万社程度に対して配布し、発注側企業ごとに価格協議や価格転嫁についての具体的な状況を把握)

●下請Gメンによる重点的なヒアリング(受注側中小企業2,000社程度へのヒアリング、交渉・転嫁状況の実態を聴取)

(3)フォローアップ調査結果の公表や「指導・助言」を実施
上記(2)のフォローアップ調査の結果を踏まえて、今後の更なる価格交渉・転嫁の促進に向け、下記の取り組みを実施する。

●業種ごとに親事業者の対応や価格転嫁率を算出し順位付け。良い事例や問題のある事例と併せて公表。

●受注側中小企業からの評価において、価格転嫁や価格協議の実施状況が芳しくない個別の発注側企業の代表者に対し、事業所管省庁から下請中小企業振興法に基づく「指導・助言」により注意喚起。

●多くの受注先中小企業から回答のあった親事業者について、企業ごとの「回答企業数」、「価格交渉の回答状況」、「価格転嫁の回答状況」のリストを公表。

●独占禁止法や下請代金法への違反が疑われる事案については、公正取引委員会と中小企業庁とが連携し対処。

3月の「価格交渉促進月間」で“適正な価格交渉・価格転嫁”の促進を経産省が呼びかけ。中小企業の賃上げ実現へ

価格講習や下請代金法に関する講習会・セミナーも実施

また同省は、価格交渉促進月間の期間内に価格交渉や下請代金法に関する講習会、セミナー等も実施するという。さらに、価格交渉および価格転嫁の状況が芳しくない業種に特化した講習会も追加実施するとのことだ。

2022年9月の同月間に実施したフォローアップ調査の結果では、原材料費は比較的価格転嫁が進んでいる一方で、労務費・エネルギー価格の転嫁が難しい状況が明らかとなっており、依然、価格転嫁が厳しい状況が続いているようだ。今後も、中小企業が円滑に事業を維持し賃上げを実現していくために、こうした政府の取り組みの効果を期待したい。