株式会社帝国データバンクは2022年11月16日、「後継者不在率動向調査(2022)」の結果を発表した。本調査結果は、同社のデータベースの27万社について、2020年10月~2022年3月の事業承継に関するデータを分析したものとなる。これにより、全国の全業種における「後継者不在率の推移」や「事業承継の最新動向」が明らかとなった。
後継者不在率は、調査開始以来初の6割以下に。調査開始後から5年連続で低下
経営者の高齢化による事業承継を円滑に進めることは全ての企業にとって重要な課題となる。今回、帝国データバンクは各社の実態について同社データベースを元に調査している。まず、同社が全国・全業種の「後継者不在率推移」を集計したところ、2022年時点での後継者不在率は57.2%だった。この結果は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年の65.2%からは-8ポイントで、2021年の61.5%からは-4.3ポイントとなる。なお、後継者不在率は、2017年以降低下を続けし、今回の2022年は初めて6割を下回った。年代別後継者不在率は「30代未満」を除く全年代で過去最低に
次に同社は、経営者の年代ごとに後継者不在率の推移を分析した。まず、全体の結果では「30代未満」を除く全年代で、後継者不在率は過去最低となった。調査依頼、後継者不在率がピークだった2017年と比較して、最も後継者不在率が低下していたのは「60代」で2022年は42.6%とピーク時より、10.5ポイント減少した。次に続いたのは「50代」で2022年は42.6%とピーク時から9.1ポイント値を下げた。ここからは、現役世代前後での事業承継がスムーズに進んでいることが見て取れる。全業種で後継者不在率が低下。「製造業」では初めて5割を下回る
続いて、同社が業種別の後継者不在率の推移を確認すると、全業種で前年を下回り、全ての業種で7割以下と過去最低を更新した。2022年に最も不在率が高かったのは「建設業」で63.4%だったが、ピーク時より7.8ポイント低下した。また、「製造業」は49.2%と、2011年の調査開始以降初めて5割を下回ったという。後継者候補は「同族承継」が前年より低下。「内部昇格」「M&Aほか」が増加傾向に
さらに、同社は後継者候補の就任経緯別の推移を調べた。その結果、2022年は「同族承継」の割合が34%と就任経緯別では最も多かったものの、前年より4.7ポイント低くなっていた。その一方で、役員などを登用した「内部昇格」は33.9%で、前年より2.5ポイント増加した。さらに、買収や出向などの「M&Aほか」は20.3%となり、調査開始以降初めて2割を超えた。この結果を受け同社は、「事業承継は脱ファミリーの動きが鮮明となっているものの、第三者承継は自社社員かM&Aなど他社との吸収・合併によるものに二極化している」との見解を示した。後継者候補属性は「非同族」が初の首位に
最後に同社は、現社長の就任経緯別に「後継者候補属性」をまとめた。その結果、「創業者」における後継者候補は「子供」51.1%(前年比-7.9ポイント)となり、調査開始以降で最大の低下幅となっていた。また、「同族承継」の後継者候補における「子供」の割合は4.5ポイント減45.4%(前年比-4.5ポイント)だった。「全ての後継者候補」の内訳を見ていくとは、最多が「属性:非同族」で36.1%(前年比+2.9ポイント)だった。また、「属性:子供」は35.6%で、前年比で4.8ポイント低下した。同社によると、これまで後継者候補は「属性:子供」の割合が最も高い状態が続いていたが、今回初めて「属性:非同族」が首位となったという。
後継者不在問題に関し、2022年の調査では初めて「後継者不在率」が6割を下回り、全国的に改善の兆候がみられた。また、後継者候補は、「非同族」への事業承継に舵を切る動きが強まっている傾向が明らかとなった。自社での事業承継を検討する上で、今回の調査結果は大いに参考となりそうだ。